Story.2 the fashion show
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それから三ツ谷さんは私をマンションまで送ってくれ、とうとうお別れのときがきた。本当にこれで、もう最後なんだ。ものすごく寂しい。ところがそのとき、彼のスマホが鳴った。
「えっ?! 一体それは、どういうことなんですか?!」
どうやら何か問題が起きたようだ。しばらくすると彼は通話を終え、汗をかきながら私を見た。
「……苗字さん、大変なことになった」
「どうしたんですか?」
彼はこれまでで1番深刻そうな表情をしている。
「……来週ショーに出るモデルの子が1人、どうしても来られないらしい」
「それは大変ですね……でも代わりの方に来てもらえるんじゃないでしょうか? まだ1週間ありますし」
「それが、例のあの、小さいドレスを着る子が来れなくなってさ。あのサイズにピッタリなモデルは、なかなかいねぇから」
「あ、あのドレスの方だったんですね……」
確かにあのドレスは、身長の高いモデルさんではダメだ。私の会社で作るショー用の衣装でも、あそこまで小さいものは見たことがない。三ツ谷さんは考えこむような仕草をしたあと、私の顔を真っ直ぐに見た。
「……なぁ、苗字さんって身長いくつ?」
「154cmです」
「そっか……あのさ、もし出来たら、アレは君が着て出てくれないか? ちょっとサイズ直さないといけねぇけど、多分君なら着こなせると思う」
「えっ……」
まさかの申し出に、私は固まってしまった。だって私はこれまで、人前に立ったことなんてない。そんな私がモデルだなんて、出来るはずがない……でも確かに、丈を伸ばして手直しすれば、サイズ的にはいけそうだ。
「……わ、私でいいんでしょうか?」
「うん。君はなんでも器用だから、モデルもきっと出来ると思う。それより今から、サイズ調整に来てもらわないといけねぇんだけど……」
三ツ谷さんはすごく申し訳なさそうに笑っている。私は出来るか不安だけど、こうなったらやるしかない! 彼のためなら全力を尽くそうと決めた。
その後事務所に戻り、いざサイズを測るときになって、私ははじめて気がついた。これは本当に恥ずかしい。何故なら彼に、腕や脚の長さだけでなく、スリーサイズまで測ってもらわないといけないのだ。わ、わぁ……ほんとにこれは、大変だ……!
私が呆然としていると、彼も気がついたのか、やっぱりちょっと顔を引きつらせている。
「ごめんな、苗字さん……こんなことまでやらせちまって……」
「い、いえ……」
やっぱりドキドキがとまらない。試着スペースで採寸衣装に着替えたら、さらに恥ずかしくなった。身体のラインが完全にあらわになっている。いや、そうしないと測れないのだけど、これはもう、私からしたら裸と同じだ……
でも私はやると決めたんだ! 内心パニックになりながらも、彼の前に立った。彼は特に戸惑うこともなく、淡々と測っていく。まぁ、それはそうだろう。いつもモデルさんにやっていることだから。でも最後の最後に胸の部分を測ってもらうとき、私はとうとうボロを出した。
絶対にいま私の顔は、ものすごく赤いに違いない。それなのに私は、彼と目を合わせてしまった。彼はいま私と思い切り密着して、私の背中から伸ばしたメジャーを、胸元にもってこようとしているところだ。
彼とバッチリ目が合うと、彼もちょっと驚いていた。それは多分私が、こんなに緊張した面持ちで彼を見上げているからに違いない。やっぱり彼は、間近で見るとすごくカッコいい。顔立ちも整っているし、肌も白くて綺麗だし、とにかくクールだ。でも彼の最大の長所はルックスじゃない。優しいところ、人間性だ。だからきっと彼は、こんな私を見たら戸惑うだろうと思った。
何秒もそのまま固まっていると、実は彼の方も、瞳の奥が少しだけ揺れているのがわかった。見た目は普段通り落ち着いているけど、雰囲気で分かるのだ。彼もやっぱり、この状況をとても気まずく思っている。彼は一瞬目をそらすと、ごめん、苗字さん! と言って、あっという間にメジャーをクロスさせ、私から離れた。
あまりの早業にビックリしつつ、彼の気配りが素晴らしくて感動してしまう。やっぱり彼は、なんでもスマートで、ものすごく優しい………
採寸が終わると、もうあたりは真っ暗になっていた。手直しは三ツ谷さんが明日してくれるとのことで、私は次は、月曜の夜にここへ来ることになった。
「えっ?! 一体それは、どういうことなんですか?!」
どうやら何か問題が起きたようだ。しばらくすると彼は通話を終え、汗をかきながら私を見た。
「……苗字さん、大変なことになった」
「どうしたんですか?」
彼はこれまでで1番深刻そうな表情をしている。
「……来週ショーに出るモデルの子が1人、どうしても来られないらしい」
「それは大変ですね……でも代わりの方に来てもらえるんじゃないでしょうか? まだ1週間ありますし」
「それが、例のあの、小さいドレスを着る子が来れなくなってさ。あのサイズにピッタリなモデルは、なかなかいねぇから」
「あ、あのドレスの方だったんですね……」
確かにあのドレスは、身長の高いモデルさんではダメだ。私の会社で作るショー用の衣装でも、あそこまで小さいものは見たことがない。三ツ谷さんは考えこむような仕草をしたあと、私の顔を真っ直ぐに見た。
「……なぁ、苗字さんって身長いくつ?」
「154cmです」
「そっか……あのさ、もし出来たら、アレは君が着て出てくれないか? ちょっとサイズ直さないといけねぇけど、多分君なら着こなせると思う」
「えっ……」
まさかの申し出に、私は固まってしまった。だって私はこれまで、人前に立ったことなんてない。そんな私がモデルだなんて、出来るはずがない……でも確かに、丈を伸ばして手直しすれば、サイズ的にはいけそうだ。
「……わ、私でいいんでしょうか?」
「うん。君はなんでも器用だから、モデルもきっと出来ると思う。それより今から、サイズ調整に来てもらわないといけねぇんだけど……」
三ツ谷さんはすごく申し訳なさそうに笑っている。私は出来るか不安だけど、こうなったらやるしかない! 彼のためなら全力を尽くそうと決めた。
その後事務所に戻り、いざサイズを測るときになって、私ははじめて気がついた。これは本当に恥ずかしい。何故なら彼に、腕や脚の長さだけでなく、スリーサイズまで測ってもらわないといけないのだ。わ、わぁ……ほんとにこれは、大変だ……!
私が呆然としていると、彼も気がついたのか、やっぱりちょっと顔を引きつらせている。
「ごめんな、苗字さん……こんなことまでやらせちまって……」
「い、いえ……」
やっぱりドキドキがとまらない。試着スペースで採寸衣装に着替えたら、さらに恥ずかしくなった。身体のラインが完全にあらわになっている。いや、そうしないと測れないのだけど、これはもう、私からしたら裸と同じだ……
でも私はやると決めたんだ! 内心パニックになりながらも、彼の前に立った。彼は特に戸惑うこともなく、淡々と測っていく。まぁ、それはそうだろう。いつもモデルさんにやっていることだから。でも最後の最後に胸の部分を測ってもらうとき、私はとうとうボロを出した。
絶対にいま私の顔は、ものすごく赤いに違いない。それなのに私は、彼と目を合わせてしまった。彼はいま私と思い切り密着して、私の背中から伸ばしたメジャーを、胸元にもってこようとしているところだ。
彼とバッチリ目が合うと、彼もちょっと驚いていた。それは多分私が、こんなに緊張した面持ちで彼を見上げているからに違いない。やっぱり彼は、間近で見るとすごくカッコいい。顔立ちも整っているし、肌も白くて綺麗だし、とにかくクールだ。でも彼の最大の長所はルックスじゃない。優しいところ、人間性だ。だからきっと彼は、こんな私を見たら戸惑うだろうと思った。
何秒もそのまま固まっていると、実は彼の方も、瞳の奥が少しだけ揺れているのがわかった。見た目は普段通り落ち着いているけど、雰囲気で分かるのだ。彼もやっぱり、この状況をとても気まずく思っている。彼は一瞬目をそらすと、ごめん、苗字さん! と言って、あっという間にメジャーをクロスさせ、私から離れた。
あまりの早業にビックリしつつ、彼の気配りが素晴らしくて感動してしまう。やっぱり彼は、なんでもスマートで、ものすごく優しい………
採寸が終わると、もうあたりは真っ暗になっていた。手直しは三ツ谷さんが明日してくれるとのことで、私は次は、月曜の夜にここへ来ることになった。