その後、私は荷物をまとめ、とうとう帰ることになった。なんだかほんとに、色々なことがあって信じられいけど、今日私は彼と両思いになれたんだ。それだけで十分だと思った。

　彼はまだちょっと唇を尖らせている。お兄さんにジャマされたことがよほど頭にきているらしい。

　立体駐車場に着くと、彼はウソだろ？！と、彼らしからぬ慌てた声をあげた。

　「どうしたの？」

　「……車、兄ちゃんが乗ってった……」

　「あ、そうなんだ。バイクで十分だよ」

　彼はまた何度めかの溜息をついている。どうやらいつも要領のいい彼も、あのお兄さんには敵わないらしい。そんな彼を見るのは珍しくて、なんだか可愛いなと思ってしまう。


　家に着くと、私はやっぱり緊張していた。3日間も家に帰らなかったのだ。一体何て言われるんだろう……

　多分私はもう顔面蒼白だろう。灰谷君はそんな私を見ると、やっぱり優しげな声で尋ねた。

　「オレが謝ってやろうか？」

　「え……なんで灰谷君が謝るの？」

　「彼氏のオレが引き留めたんだから、謝るのはオレだろ」

　私はもうほんとに心の底から嬉しくて、どんどん元気がわいてきた。彼はほんとに、最高だ。最高に優しい！それに頼りになって、スマートで、カッコ良くて、喧嘩も強くて、料理も出来て、運転も上手くて、センスも良くて……とにかく何もかもクールだ。そう。そんな彼氏を、たしか…

　そう、たしか中学のときに習った。えっと……そう、アレだ。あのフレーズ。

　「灰谷君、'Mr.Perfect'っていう単語の意味、知ってる？」

　彼は一瞬間があって、ちょっと目を丸くしながら答えた。

　「完璧な彼氏？」

　そう！　灰谷君はまさにそれだね！！


　　　　　　　　　　‥ おしまい ‥


Mr.Perfect
執筆期間2023.1.16-2023.1.19
管理人　りぃ