Mr. Perfect(灰谷竜胆/長編夢)
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あぁ、お願い!誰か私に話しかけて!
ただいまの時刻、23:59。場所はミッドタウン。あと1分で閉店してしまうカフェの中、私は1人、席でひたすら祈っていた。だっていま私はお金がない。ここの代金を支払ったら、完全に無一文だ。家には帰れないし、携帯も置いてきちゃったし、友達とも連絡がとれない。だから知り合いに会うしかなかった。誰でもいいからこの状況を救ってほしい!補導だけはされたくない!
あ、でも出来れば女子がいいな。うん。ていうか、絶対女子がいい。だって男子の知り合いだったらすごく面倒なことになりそうなんだもん……とかなんとか思っていたら、いきなり声をかけられた。
「オイ、オマエ。こんなとこで一体何やってんだぁ?」
見上げると、よく知ってる顔だった。
「は、灰谷先輩……」
「不正解」
あれ? そんなはずはない。だってこの人は有名人だ。私が中学のときの先輩で、この六本木で彼の顔を知らない人はいない。たしか13歳のときからこの界隈を仕切っていたはずだ。
いまは横浜を拠点とする"天竺"に所属していて、確かにいまも彼はその特攻服を着ている。他の隊員とは色違いだけど。
そんな彼を間違えるワケがない。それなのに、なんで不正解??
「灰谷先輩……じゃないんですか?」
その人は不本意そうに眉根を寄せた。
「はぁ。まだ分からないのか?」
彼は胸ポケットから眼鏡を取り出してかけた。あ、灰谷君だった。彼は灰谷先輩の弟で、私の同級生だ。
「ごめん。お兄さんと間違えちゃった。久しぶり。相変わらずオシャレだね」
彼はいま髪色が金色と水色の2色ですごくカッコいい。
「こんな時間に1人で何やってんだよ?」
私が親と喧嘩して家出したことを伝えると、彼は静かに笑った。
「へぇ。オマエでもそんなことあるのか。意外だな」
「勿論あるよ! 私の親、ほんとに最悪なの。めちゃくちゃムカつくから、もう一生帰らない!」
「けど金も携帯も持たずに飛び出すとか無謀だろ。こんな深夜に女子が1人でいたら、何されるか分かんないし」
「……うん。その通りだね」
私は頭の中で一瞬、色々なことを考えた。本当は彼に迷惑をかけたくない。でも家には帰れないから……
「……すごく申し訳ないんだけど、今夜一晩だけホテルに泊まるお金、貸してくれない?」
彼はクールな表情のまま言った。
「土曜の夜だから、もうどこも部屋あいてないと思うぞ」
「えっ、そうなの?!」
あちゃー。そんなこと考えてもなかった。私って世間知らずだなぁ。
「もう帰れよ。オレが送ってってやるから」
「それだけはイヤ! じゃあ私、野宿する!」
「そんなことしたら普通に強姦されるかも」
うっ……そんなにハッキリ言われるとたじろいじゃう。
「……確かにまだ彼氏もできたことないのに、それはイヤだなぁ」
「友達んちには行けないのか?」
「うん。この辺の友達は皆んな親同士も繋がってるから、すぐに連絡されちゃうの。皆んなマジメで、親にハンコーとかしないから」
「けどその方が生きやすいんじゃないの? オマエも。こんなとこで危険な目にあうくらいなら、面倒な親のとこにいた方がマシだろ」
彼は淡々と言ったけど、私はまたさっきの親とのやり取りを思い出した。すごくムカムカする!
「絶対イヤ!もう家には帰らない!!こうなったら私のこと買ってくれる人探して、泊めてもらう!」
自分でも自暴自棄になっているのが分かる。でもほんとにムリなのだ。あんな人達の家には帰らない!
「彼氏もいたことない子がそんなこと出来るのか?」
「やってみせる! 私も意地を見せなきゃいけないときがあるのよ!」
灰谷君はちょっと楽しそうに微笑んだ。
「ふーん。じゃあつまり、オマエも不良になるってこと?」
「うん!!」
「そっか」
彼は私の席の勘定書を取ると、すたすたとレジへ行った。店員さんは緊張しているようで、汗をかきながらレジを打っている。灰谷君は少しだけ頭を下げて、何かを謝ったみたいだ。あ、そっか! もう閉店時間を過ぎてたんだ! 悪いことしちゃったなぁ。
カフェを出ると、6月の夜の爽やかな風が頬を通り抜けた。気候のいいときで良かったなぁと思いながら、彼の方を振り返る。
「カフェ代払ってもらっちゃってごめんね。今すぐ返すから」
彼はなんでもないことのように言った。
「別に返さなくていい。じゃあ、行くぞ」
私は思わずキョトンとしてしまう。
「行くって、どこに?」
彼は今度はちょっと無邪気な感じで微笑んだ。
「オレん家」
あ、クールな彼でもこんな風に笑うんだ……って、いまはそっちじゃない。えっ?オレんち?
ただいまの時刻、23:59。場所はミッドタウン。あと1分で閉店してしまうカフェの中、私は1人、席でひたすら祈っていた。だっていま私はお金がない。ここの代金を支払ったら、完全に無一文だ。家には帰れないし、携帯も置いてきちゃったし、友達とも連絡がとれない。だから知り合いに会うしかなかった。誰でもいいからこの状況を救ってほしい!補導だけはされたくない!
あ、でも出来れば女子がいいな。うん。ていうか、絶対女子がいい。だって男子の知り合いだったらすごく面倒なことになりそうなんだもん……とかなんとか思っていたら、いきなり声をかけられた。
「オイ、オマエ。こんなとこで一体何やってんだぁ?」
見上げると、よく知ってる顔だった。
「は、灰谷先輩……」
「不正解」
あれ? そんなはずはない。だってこの人は有名人だ。私が中学のときの先輩で、この六本木で彼の顔を知らない人はいない。たしか13歳のときからこの界隈を仕切っていたはずだ。
いまは横浜を拠点とする"天竺"に所属していて、確かにいまも彼はその特攻服を着ている。他の隊員とは色違いだけど。
そんな彼を間違えるワケがない。それなのに、なんで不正解??
「灰谷先輩……じゃないんですか?」
その人は不本意そうに眉根を寄せた。
「はぁ。まだ分からないのか?」
彼は胸ポケットから眼鏡を取り出してかけた。あ、灰谷君だった。彼は灰谷先輩の弟で、私の同級生だ。
「ごめん。お兄さんと間違えちゃった。久しぶり。相変わらずオシャレだね」
彼はいま髪色が金色と水色の2色ですごくカッコいい。
「こんな時間に1人で何やってんだよ?」
私が親と喧嘩して家出したことを伝えると、彼は静かに笑った。
「へぇ。オマエでもそんなことあるのか。意外だな」
「勿論あるよ! 私の親、ほんとに最悪なの。めちゃくちゃムカつくから、もう一生帰らない!」
「けど金も携帯も持たずに飛び出すとか無謀だろ。こんな深夜に女子が1人でいたら、何されるか分かんないし」
「……うん。その通りだね」
私は頭の中で一瞬、色々なことを考えた。本当は彼に迷惑をかけたくない。でも家には帰れないから……
「……すごく申し訳ないんだけど、今夜一晩だけホテルに泊まるお金、貸してくれない?」
彼はクールな表情のまま言った。
「土曜の夜だから、もうどこも部屋あいてないと思うぞ」
「えっ、そうなの?!」
あちゃー。そんなこと考えてもなかった。私って世間知らずだなぁ。
「もう帰れよ。オレが送ってってやるから」
「それだけはイヤ! じゃあ私、野宿する!」
「そんなことしたら普通に強姦されるかも」
うっ……そんなにハッキリ言われるとたじろいじゃう。
「……確かにまだ彼氏もできたことないのに、それはイヤだなぁ」
「友達んちには行けないのか?」
「うん。この辺の友達は皆んな親同士も繋がってるから、すぐに連絡されちゃうの。皆んなマジメで、親にハンコーとかしないから」
「けどその方が生きやすいんじゃないの? オマエも。こんなとこで危険な目にあうくらいなら、面倒な親のとこにいた方がマシだろ」
彼は淡々と言ったけど、私はまたさっきの親とのやり取りを思い出した。すごくムカムカする!
「絶対イヤ!もう家には帰らない!!こうなったら私のこと買ってくれる人探して、泊めてもらう!」
自分でも自暴自棄になっているのが分かる。でもほんとにムリなのだ。あんな人達の家には帰らない!
「彼氏もいたことない子がそんなこと出来るのか?」
「やってみせる! 私も意地を見せなきゃいけないときがあるのよ!」
灰谷君はちょっと楽しそうに微笑んだ。
「ふーん。じゃあつまり、オマエも不良になるってこと?」
「うん!!」
「そっか」
彼は私の席の勘定書を取ると、すたすたとレジへ行った。店員さんは緊張しているようで、汗をかきながらレジを打っている。灰谷君は少しだけ頭を下げて、何かを謝ったみたいだ。あ、そっか! もう閉店時間を過ぎてたんだ! 悪いことしちゃったなぁ。
カフェを出ると、6月の夜の爽やかな風が頬を通り抜けた。気候のいいときで良かったなぁと思いながら、彼の方を振り返る。
「カフェ代払ってもらっちゃってごめんね。今すぐ返すから」
彼はなんでもないことのように言った。
「別に返さなくていい。じゃあ、行くぞ」
私は思わずキョトンとしてしまう。
「行くって、どこに?」
彼は今度はちょっと無邪気な感じで微笑んだ。
「オレん家」
あ、クールな彼でもこんな風に笑うんだ……って、いまはそっちじゃない。えっ?オレんち?
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