オマエ、緊張してる？オレは全然。はは。まぁ大丈夫だろ。なんとかなるって。

　けどなんか、これまでのことを色々思い出すよな。うん。色々あったよな、ほんとに。

　オレさ、ほんと思うんだ。オレってずっと、過ちばかりだったって。何度やり直してもさ。大事なモン失って、皆んなのこと傷つけて、全然うまくいかなかった。えっ？違う違う。まぁ確かに、ガキのころは給食のときによく暴れてたけど。揚げパンが出ないときとか。だから違うって。は？他校に殴り込みに行ってた？そんなこと言ってんじゃねぇよ。

　オレ、ほんとに間違ってばかりだったんだ。けど奇跡が起こってさ。いまはほんとに、全部夢叶えた。うん、勿論東卍の皆んなと全国制覇したことも、レーサーになったこともだけど。それはほんとに、小さい夢なんだよ。それより遥かにでけぇ夢叶えたんだ、アイツらと。

　うん。真一郎が親族代表。まぁ元々10個上の兄貴だから、オレの親代わりみたいなもん。兄貴がいなかったら今のオレはなかった。ほんとにさ、こうしていま、兄貴と笑ってられること自体、奇跡みたいなことなんだ。え？別にブラコンとかじゃねーし。

　これからは兄貴にいっぱい恩返ししたいな。だってこれまでさ、ほんとにオレのこと、息子みたいに育ててくれてさ。それこそ全てを投げ打ってだ。え？はは。まぁ確かに、彼女ショーカイした方がいいかもな。今も告白連敗記録更新中だから。

　　友人代表は、そうそう、ケンチンだ。もうすぐエマが予定日だから、ちょっと心配だけど。式の間に産気づいちまったら大変だよな。

　ケンチンはさ、エマと結婚してくれて、もうすぐ子供も産まれるし、ほんとに最高に嬉しいよ。これもオレの夢。ずっと昔からの。子供が産まれても、オレらしょっちゅう遊びに行くつもり。夜中まで騒いで赤ん坊が起きちゃうから、エマは激怒するだろうけど。でもそれがオレの夢だったんだ。

　それにエマはさ、ずっとずっとオレが守ってやるんだ。何があっても。え？だからシスコンとかじゃねぇよ。

　余興は場地と一虎たちに任せた。うん、場地は1番長い幼馴染だな。ほんとにさ、こんなに立派になったアイツらの姿を見られるなんてさ。信じられないよ。昔はあいつら、ほんとに悪かったからな。

　えっ、車？あぁ、そうそう。アイツら昔、気にいらねぇ大人の車燃やしたりしてたよな。一虎の誕生日に。うん。マジでワケわかんねぇよな。
　　
　けどさ、アイツらさ、オレが中1んとき、オレの誕生日にバイクをプレゼントしようとしてくれてさ。そう、今も乗ってるバブな。それを店から盗んで、オレにくれようとしてたんだ。最悪だろ？だからそれを計画してることが分かった瞬間、バブはもう兄貴からもらうことになってっから、ってハッキリ宣言したんだ。そしたら一虎がキレてさ。オレがプレゼントしようと思ってたのに、最高の誕生日にしてやるつもりだったのに、とか叫んで殴りかかってきて。それで大喧嘩になった。何故か場地も参戦してくるし、ほんとワケわかんねぇ。うん、まぁ勿論オレが2人ともボコボコにして、全部おしまいだったけどね。

　で、誕生日はアイツらにも立ち会ってもらって、オレは晴れて兄貴からバブをもらった。そのあとすぐにアイツらと走りに行ったんだけどさ。アイツらの背中見てたらなんか、すげぇ泣けてきた。なんでって、そんなの決まってんだろ。アイツらとこうして一緒に笑って居られること自体、全部奇跡なんだよ、ほんとに。

　あぁ、イザナ？アイツも昨日、無事に帰国したから参加するよ。オマエはまだ数回しか会ったことねぇよな。そうそう、世界中飛び回ってるから、NPO法人の理事として。恵まれない孤児たちのための活動をしてるんだ。

　エキゾチック？そう。あいつ母親はフィリピン人らしい。オレらとは血の繋がりはねぇし、アイツはずっと施設育ちだったけど、ガキのころから一緒に過ごしてきたんだ。真一郎とエマとよく面会行ってさ。うん。オレのもう1人の兄貴だ。

　同じ施設で育った鶴蝶と仲良くてさ。え？下僕？アイツまだそんなこと言ってんのか。あとムーチョとも年少時代から仲がいい。うん、あいつ1回年少行ってっからな。意外にちょっと、繊細なとこもあるし。けど今は大丈夫。鶴蝶とムーチョもついてるから。そう。アイツらめちゃくちゃ安定してるだろ？面倒見もいいし。だからイザナのこと支えてくれてるんだ。あんなあいつを見られるなんて、前は想像も出来なかった。それにあいつもこの前婚約したんだ。うん、ほんとに嬉しいな。

　そう、そのイザナたちのNPO法人に出資してるのが、稀咲たちの会社だ。そうそう、アイツら大金持ちだから。実は稀咲はさ、小学校のころは全く違うタイプだったんだよ。うん。神童だったらしい。けどヒナちゃんが同じ塾でさ、そっから繋がりが出来て仲良くなった。そう。あいつも東卍の創設メンバーの1人。実は昔はヒナちゃんのことが好きだったらしいけど、いまはアイツ、モテモテだろ？ちゃんと彼女もいるし。アイツはその頭脳を社会のために生かしてる。それが1番嬉しいよ。

　あぁ、タケミっちはさっき会ったばかりだよな。ヒナちゃんとの新婚生活が楽しそうで何よりだ。そうそう、ケンチンたちの下の部屋に住んでて、しょっちゅう皆んなで鍋とかやってるらしい。まぁちょっと、ヒナちゃんに尻に敷かれてるとこはあるけど。でもそれくらいの方がいいんだろ、夫婦ってさ。

　けどほんと、タケミっちには1番世話になったかもな。そう、ほんとアイツはいいヤツだよな。うん。

　実はさ、オレ……いや、なんでもない。とにかくタケミっちはさ、どんなときでもオレを信じてくれて、どんなことをしてもオレを助けようとしてくれたんだ。え？タケミっちがオレの悪さの尻拭いをしてくれてた？だからそんなこと言ってんじゃねぇって。

　母さん？そうだな。勿論今のオレの姿を見せたかった。けどオレさ、まだガキの頃だったけど、ちゃんとお別れが出来たんだ。それに本当にツラいときは皆んなに助けを求めるって、ときには涙も見せるし、弱音も吐くって約束した。そしたら母さん、すごく喜んでくれてさ。めちゃくちゃ安心した顔したんだ。そう。母さんは亡くなったけど、オレは心から満足だった。ちゃんと母さんとの約束も守ったし、これからもずっと守っていくよ。

　うん。そうだな。ほんとに皆んな、幸せになった。全部奇跡みたいだ。

　え？オレにずっと聞きたかったことがあるって？小2のときから突然人が変わった？急に大人びて別人みたいになった？何だよソレ？いや、確かに必死だったけど。まぁ、さっき言ったみたいにさ、オレには皆んなを幸せにしなくちゃいけない使命があったんだ。

　けどオマエはさ、ほんとにオレでいいの？結婚したらもう相手変えられないよ。そう。良かった。あのさ、いつかうんと年取ってさ、2人ともおじいちゃんとおばあちゃんになったら、もしかしたらオレ、オマエにすごいこと言う日がきちゃうかも。うん。そのときまで待ってくれる？良かった。オマエってさ、ほんとに何も聞かないでいてくれるよな。え？ちょっとミステリアスなオレが好き？そっか。そんな風に言ってくれると嬉しいよ。

　…………それにオレのことも、絶対幸せにしてくれるって？　

　ほんとに有難う、名前。オレもオマエのこと絶対に幸せにするよ。


　　　　　　　　　　‥ おしまい ‥


Mysterious you
執筆期間2023.1.16-2023.1.19
管理人　りぃ