けれどもそんな女子達とは蘭は、驚く程接点がない。これまで一度も付き合った事はないし、仲良くなった事すらない。でも半ば諦めかけていた20代の終わりのその日、蘭はとうとうそんな女子に巡り会う事が出来た。蘭が望むように清楚で純朴で控えめで、自分が守って支えてやりたいと思えるような女子だ。

　その日クラブに撮影にきたモデル達の中に、自分にぴったりの子が居たのだった。彼女はモデル達の中でも最も美しくてゴージャスなのに、何故か1番自信無さそうにしている。きっと彼女は内向的な性格で、こんな仕事には向かないのだろう。いや、彼女の美しさからすれば天職だけど、きっと性質的に合わないのだ。

　それは蘭にとって初めての一目惚れだった。でも蘭はその子の美貌や、内気そうな部分に惹かれたのではない。直感的に分かったからだ。彼女はきっと、とても'真面目で誠実な'人だと。彼女には内面から湧き上がる、'心の美しさ'が感じられるからだ。蘭は昔から人を見る目に長けているから、きっと間違いないと思った。

　それに彼女の事を蘭は、実は既に知っていたのだ。何度も繰り返し見る「不思議な夢」の中で、蘭は彼女に出逢っていたからだった。不可思議な事にその夢は、蘭の仲間達も皆んな同じ内容のものを見ている。あまりに不可解な現象なので、中にはその夢の内容は、『別の世界線』での出来事なのではないかと、言い出す者までいる始末だった。蘭は勿論、そんな事は信じていない。その夢の中では蘭は「反社になった"東卍"の幹部」だったり、同じく反社の「"梵天"とかいう組織の幹部」だったりと、確かに自分らしい人生ではあった。でもそれはただの夢でしかないし、別の世界線だなんてあり得ない。けれども蘭は彼女にさらなる『特別な縁』のようなものを感じたのだった。


　あの子はきっと、オレの運命の子だ。5分後に振り向かせてみせる！

　蘭は輝くような笑顔でその女子の元へ向かった。


　　　　　　　　　‥ おしまい ‥
Innovative（灰谷蘭/長編夢）へ続く

⋆蘭が「反社になった"東卍"の幹部」だった世界線のお話は→
Innovative【反社軸】番外編（灰谷蘭/長編夢）

⋆蘭が「"梵天"の幹部」だった世界線のお話は→
Innovative3（灰谷蘭/続編夢）の5.have a strange dream about him

Innovative 序章
執筆期間2023.11.13-2023.11.13
管理人　りぃ