けれどもそんなある日、半間の人生は変わった。ある日半間は、稀咲鉄太という男に出会った。彼は"東京卍會"という暴走族チームの創設メンバーで、仲間と共に"全国制覇"を目指しているのだという。

　だりぃ。最初はそう思った。でも彼は非常に興味深かった。稀咲は決して法に抵触する事はしないけれど、敵には容赦がない。汚い手は使わないけれど、人の心を掴むのが上手く、最後には全て自分の思い通り。それが面白おかしくて、半間は彼の仲間になった。そうしてその数年後、半間は"東卍"の"参謀補佐"として、仲間達と共に"不良の時代を創り上げた"のだ。このチームは自分には合わない。最初はそう思っていたけれど、確かに満たされた自分がいた。


　"東卍"が解散すると、仲間達はそれぞれの夢を叶える為、みなまっとうな道を歩み始めた。半間は最初、アングラなルートを行こうかと思ったけれど、ふと考えが変わった。また裏の世界に戻りたいと思えば、いつでも戻る事が出来る。それならばまずは、「表の道」を行こうと決めたのだ。そう考え直した理由は、半間の中にこれまでなかったある感情が、少しだけ芽生えていたからなのかもしれない。それは自分自身へのプライド、'自尊心’だ。仲間と共に過ごした時間が、彼を少しだけ変えたのだろう。そうして半間が選んだ職業が、フリーのカメラマンだった。


　半間は世界中の紛争地帯へと足を踏み入れるようになった。それは何よりも刺激的で、半間にとってこの仕事は、まさに天職になった。さらに彼は異国でエキゾチックな美女達と多くの浮名を流し、官能的な日々を送った。海外での体験は、全てに"色"がついている。それも鮮やかでビビッドで、派手で刺激的な色ばかりだ。

　けれども暫くすると慣れてくる。半間は戦闘力や直感力に優れているから、激しい銃撃戦が繰り広げられる危険地帯を訪れても、難なく生還する事が出来る。外国の女達との逢瀬も、悪い面が見え始めた。どの女も自己主張が強過ぎて、必ず自分とぶつかるからだ。それにある程度付き合ったら、必ず関係が重くなる。半間は段々、毎日がつまらなくなり始めた。やはりこの自分が'普通'の道を歩むだなんて、無理なのかもしれない。ならばやはり「裏の道」を行くか？