第19話 束の間の再会
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2年が経ち、27歳になった10月の中旬。仕事を終え最寄駅に戻ってくると、見覚えのあるバンを見かけた。黒のハイエースだ。私は息を飲んだ。もしかして……
彼とはあの電話以来、1度も会えていない。連絡も取っていない。何度も連絡しようとしたけれど、出来なかった。
立ち尽くしていると、助手席から彼が降りてきた。グレーのスリーピーススーツを着て、細身ですらりとしたスタイル。髪は長めで、白い肌。一瞬変わっていないように見えたが、全然違った。
目付きは前よりも鋭いし、翳りがある。近寄り難い雰囲気で、一般の人とは明らかに違う。例えるなら夜のイメージだ。真っ暗で怖いイメージ。
そしてもう完全に大人の男の人だった。前みたいにあどけない部分は一切無い。堂々として自信に満ち溢れているけれど、怖い。
あぁ、もう彼は完全に別世界の人になってしまったんだな、と分かる。
彼は私に気づいたようだった。その切れ長の目を少しだけ大きくする。
「苗字」
私は静かに近づいて微笑んだ。
「ヤノくん。お久しぶりです。お元気そうで良かったです」
ヤノくんは良く見ると目の下にくまがあった。髪も少しぱさついている気がする。ちょっとやつれたかもしれない。もしかしたらまた寝れていない?
「お前は全然変わんねぇな」
「ヤノくんは変わりましたね。もうすっかり大人の男の人です。自信に満ち溢れてて堂々としてますね」
ヤノくんは無表情で私を見下ろしている。ドブさんのこと、仕事のこと、体調のこと。色々と聞きたいことはあるけれど、私は1番聞きたくて、でも1番聞きたくないことを尋ねた。
「……ヤノくんは、今はもうお付き合いしてる女の人とか、いたりするんでしょうか?」
ヤノくんはちょっとビックリしたような顔になる。しばらくしてから笑った。
「おいおい。開口一番に聞くのがそんなことかよ?」
「……なんだかもう、ヤノくんはすっかり変わってしまったように見えます」
私は眉を下げて笑顔を作ったが、胸は張り裂けそうだった。
「ヤノくんに彼女がいたら、もう私はヤノくんとは友達でいられませんから……」
ヤノくんはまた笑った。
「そんなんいるわけねーだろ」
「……ほんとですか?」
ヤノくんは変わってしまったように見えたけれど、笑うとちょっとだけ幼く見えた。今でもやっぱり童顔だ。彼は小声で目を逸らして呟くように言った。
「そんなんいたら、お前を遠ざけた意味ねぇし」
しばらく沈黙が流れて、私は少しだけ胸が軽くなり彼を見上げた。
「あの、じゃあ今もまだ私たちは友達でいいんでしょうか?」
「あぁ」
私はとても嬉しくなって、心からの笑顔になった。それにやっぱり彼は怖くない。とても怖く見えたけれど、今はもう大丈夫だった。
「有難うございます。私、すごく嬉しいです!」
ヤノくんはちょっと苦笑いしている。
「お前、ほんと変わってるな。オレと友達になりたい奴なんて他にいねぇぞ」
「そんなことないです。ヤノくんはめちゃくちゃカッコいいです!私はいつも、ヤノくんの1番のファンですよ」
私はにっこり笑ってそう言った。その後また暫く沈黙があって、もう私たちの今夜の時間はおしまいなんだなと気づく。最後に私はこう言って彼と別れた。
「ヤノくん、熟睡したくなったらまた私がお手伝いします。いつでも言ってくださいね」
彼とはあの電話以来、1度も会えていない。連絡も取っていない。何度も連絡しようとしたけれど、出来なかった。
立ち尽くしていると、助手席から彼が降りてきた。グレーのスリーピーススーツを着て、細身ですらりとしたスタイル。髪は長めで、白い肌。一瞬変わっていないように見えたが、全然違った。
目付きは前よりも鋭いし、翳りがある。近寄り難い雰囲気で、一般の人とは明らかに違う。例えるなら夜のイメージだ。真っ暗で怖いイメージ。
そしてもう完全に大人の男の人だった。前みたいにあどけない部分は一切無い。堂々として自信に満ち溢れているけれど、怖い。
あぁ、もう彼は完全に別世界の人になってしまったんだな、と分かる。
彼は私に気づいたようだった。その切れ長の目を少しだけ大きくする。
「苗字」
私は静かに近づいて微笑んだ。
「ヤノくん。お久しぶりです。お元気そうで良かったです」
ヤノくんは良く見ると目の下にくまがあった。髪も少しぱさついている気がする。ちょっとやつれたかもしれない。もしかしたらまた寝れていない?
「お前は全然変わんねぇな」
「ヤノくんは変わりましたね。もうすっかり大人の男の人です。自信に満ち溢れてて堂々としてますね」
ヤノくんは無表情で私を見下ろしている。ドブさんのこと、仕事のこと、体調のこと。色々と聞きたいことはあるけれど、私は1番聞きたくて、でも1番聞きたくないことを尋ねた。
「……ヤノくんは、今はもうお付き合いしてる女の人とか、いたりするんでしょうか?」
ヤノくんはちょっとビックリしたような顔になる。しばらくしてから笑った。
「おいおい。開口一番に聞くのがそんなことかよ?」
「……なんだかもう、ヤノくんはすっかり変わってしまったように見えます」
私は眉を下げて笑顔を作ったが、胸は張り裂けそうだった。
「ヤノくんに彼女がいたら、もう私はヤノくんとは友達でいられませんから……」
ヤノくんはまた笑った。
「そんなんいるわけねーだろ」
「……ほんとですか?」
ヤノくんは変わってしまったように見えたけれど、笑うとちょっとだけ幼く見えた。今でもやっぱり童顔だ。彼は小声で目を逸らして呟くように言った。
「そんなんいたら、お前を遠ざけた意味ねぇし」
しばらく沈黙が流れて、私は少しだけ胸が軽くなり彼を見上げた。
「あの、じゃあ今もまだ私たちは友達でいいんでしょうか?」
「あぁ」
私はとても嬉しくなって、心からの笑顔になった。それにやっぱり彼は怖くない。とても怖く見えたけれど、今はもう大丈夫だった。
「有難うございます。私、すごく嬉しいです!」
ヤノくんはちょっと苦笑いしている。
「お前、ほんと変わってるな。オレと友達になりたい奴なんて他にいねぇぞ」
「そんなことないです。ヤノくんはめちゃくちゃカッコいいです!私はいつも、ヤノくんの1番のファンですよ」
私はにっこり笑ってそう言った。その後また暫く沈黙があって、もう私たちの今夜の時間はおしまいなんだなと気づく。最後に私はこう言って彼と別れた。
「ヤノくん、熟睡したくなったらまた私がお手伝いします。いつでも言ってくださいね」