第18話 別離
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翌朝。荷物をまとめ、いよいよヤノくんの部屋を後にすることになった。今日はちょうど休みだから、家に戻ったら家事をするつもりだ。
私は名残惜しい気持ちもあるけれど、早く次にヤノくんと会う約束がしたかった。
この5日間、本当に信じられないほど色んな事があったけれど、私は今、彼との友情がとても深まったと感じていた。今ならきっと、彼に私の思いを伝えられられると思う。ずっとずっと胸に秘めていた、私の気持ちを。
「実は私、ゆっくりヤノくんとお話したい事があるんです。今度お時間あるときを教えて貰えませんか?」
ヤノくんはドロップの缶から飴を取り出しながら答えた。
「それなら元々、今日空いてたのにな。さっき久々にドブさんから誘われちまったから、再来週くらいになるけどいいか?」
「はい!私はいつでもいいです。お待ちしています」
私たちはマンションのエントランスで別れた。その時は、まさか私たちの関係がこの後ガラリと変わってしまうことになるだなんて、想像もしていなかった。
その日の夜、ヤノくんから電話があった。彼はちょっと様子がおかしかった。何故だかどこか態度がよそよそしい。しばらく忙しいから、悪いけど会うのはまた今度、と言われた。
次は3ヶ月後くらいに電話があり、その時には決定的になった。しばらく会えない、とはっきり言われたからだ。なんだか様子がおかしいので、私は尋ねた。
「ヤノくん、何かあったんですか?」
ヤノくんは少し間があってから、静かに言った。
「実はドブさんと袂をわかつことにした。これからは敵対する。修羅の道になるから、しばらくお前とは会えない」
私はその言葉が信じられなかった。
「ドブさんと何かあったんですか?あんなに信頼していたのに……」
あの日、池袋で出会って蟹を食べに行ったときのことを思い出す。あのときは本当に楽しくて、沢山笑った。ヤノくんにあんな面倒見のいい先輩がついてくれて心から良かったと思った。その後もドブさんのことは彼からよく聞いていたから、2人の関係は良好なものとばかり思っていた。
「まぁ、元々帰属意識とかねぇからな、俺」
ヤノくんははっきりと理由を言わない。私は不安な気持ちがこみ上げてくる。
「ヤノくん、それはきっと良くないと思います。あんなにお世話になった先輩だから、というのもありますが、それはヤノくんにとって良い結果にならないのではないでしょうか」
「あ?なんでそう思うんだよ」
「だって大切な先輩と敵対していいことなんてありません。道理だと思います」
自分でもはっきりと言っていてビックリした。でも絶対に譲れないと思った。きっとここが正念場だと感じたのだ。
「一般人とは違う世界に生きてんだよ、俺たちは」
ヤノくんは頑として譲らないが、私も引けなかった。
「そうかもしれません。でも、そうだからこそです。多分ヤノくんのその気持ちって、お父さんに対する反抗心みたいなものではないでしょうか?ほんとに安心出来る人だから、彼を乗り越えたいと思って立ち向かうんだと思います。でもヤノくんのいる世界でそれをしてしまったら……」
ヤノくんは何も言わない。私は静かに続けた。
「取り返しのつかないことになるんじゃないかって。私、すごく心配です……」
「……お前は俺が負けると思うのか?」
ヤノくんが静かに怒っているのが分かる。私もどんどん辛くなってくる。でもはっきりと言わなければ。本当の友達なら。
「勝ち負けじゃなくて、もっと大事なものを失ってしまうんじゃないでしょうか……」
ヤノくんはしばらく沈黙したあと、落ち着いた口調で言った。
「いつかあの人に勝ったらお前に会いに行く。じゃあな」
そこで通話は切られてしまった。私は喪失感にさいなまれながら、それでもまだ希望はあると思っていた。まだ私は私の気持ちを伝えていない。きっといつか、それを伝えるチャンスはある。だから信じて待ち続けようと思った。
私は名残惜しい気持ちもあるけれど、早く次にヤノくんと会う約束がしたかった。
この5日間、本当に信じられないほど色んな事があったけれど、私は今、彼との友情がとても深まったと感じていた。今ならきっと、彼に私の思いを伝えられられると思う。ずっとずっと胸に秘めていた、私の気持ちを。
「実は私、ゆっくりヤノくんとお話したい事があるんです。今度お時間あるときを教えて貰えませんか?」
ヤノくんはドロップの缶から飴を取り出しながら答えた。
「それなら元々、今日空いてたのにな。さっき久々にドブさんから誘われちまったから、再来週くらいになるけどいいか?」
「はい!私はいつでもいいです。お待ちしています」
私たちはマンションのエントランスで別れた。その時は、まさか私たちの関係がこの後ガラリと変わってしまうことになるだなんて、想像もしていなかった。
その日の夜、ヤノくんから電話があった。彼はちょっと様子がおかしかった。何故だかどこか態度がよそよそしい。しばらく忙しいから、悪いけど会うのはまた今度、と言われた。
次は3ヶ月後くらいに電話があり、その時には決定的になった。しばらく会えない、とはっきり言われたからだ。なんだか様子がおかしいので、私は尋ねた。
「ヤノくん、何かあったんですか?」
ヤノくんは少し間があってから、静かに言った。
「実はドブさんと袂をわかつことにした。これからは敵対する。修羅の道になるから、しばらくお前とは会えない」
私はその言葉が信じられなかった。
「ドブさんと何かあったんですか?あんなに信頼していたのに……」
あの日、池袋で出会って蟹を食べに行ったときのことを思い出す。あのときは本当に楽しくて、沢山笑った。ヤノくんにあんな面倒見のいい先輩がついてくれて心から良かったと思った。その後もドブさんのことは彼からよく聞いていたから、2人の関係は良好なものとばかり思っていた。
「まぁ、元々帰属意識とかねぇからな、俺」
ヤノくんははっきりと理由を言わない。私は不安な気持ちがこみ上げてくる。
「ヤノくん、それはきっと良くないと思います。あんなにお世話になった先輩だから、というのもありますが、それはヤノくんにとって良い結果にならないのではないでしょうか」
「あ?なんでそう思うんだよ」
「だって大切な先輩と敵対していいことなんてありません。道理だと思います」
自分でもはっきりと言っていてビックリした。でも絶対に譲れないと思った。きっとここが正念場だと感じたのだ。
「一般人とは違う世界に生きてんだよ、俺たちは」
ヤノくんは頑として譲らないが、私も引けなかった。
「そうかもしれません。でも、そうだからこそです。多分ヤノくんのその気持ちって、お父さんに対する反抗心みたいなものではないでしょうか?ほんとに安心出来る人だから、彼を乗り越えたいと思って立ち向かうんだと思います。でもヤノくんのいる世界でそれをしてしまったら……」
ヤノくんは何も言わない。私は静かに続けた。
「取り返しのつかないことになるんじゃないかって。私、すごく心配です……」
「……お前は俺が負けると思うのか?」
ヤノくんが静かに怒っているのが分かる。私もどんどん辛くなってくる。でもはっきりと言わなければ。本当の友達なら。
「勝ち負けじゃなくて、もっと大事なものを失ってしまうんじゃないでしょうか……」
ヤノくんはしばらく沈黙したあと、落ち着いた口調で言った。
「いつかあの人に勝ったらお前に会いに行く。じゃあな」
そこで通話は切られてしまった。私は喪失感にさいなまれながら、それでもまだ希望はあると思っていた。まだ私は私の気持ちを伝えていない。きっといつか、それを伝えるチャンスはある。だから信じて待ち続けようと思った。