第14話 同居生活③ -チョコレート-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝起きると、私は目を輝かせた。だってヤノくんが新しいスーツを着ていたからだ。いつものグレーのスリーピースではなく、黒のストライプのツーピースだ。ネクタイは青で、ワイシャツは薄い水色。うん、めちゃくちゃいい!!
「ヤノくん!新しいスーツですか?いいですね!似合ってます」
「そうか?洗い替えに買ったやつだけど、しっくりこねぇ」
「そんなことないです!めちゃくちゃかっこいいですよ!!」
「いや、やっぱダメっすわ、ドンキは」
ヤノくんはあまり気に入らないようで、鏡にうつった自分を細目で睨んでいる。すぐにあぁ、そうだとテーブルに置かれた茶色い箱を取り、私に差し出した。
「これはなんですか?」
とてもお洒落で重厚な感じの箱だ。結構大きい。
「ボスからもらった。何かわかんねぇ。それどうやっても開かねぇから、きっと不良品だ」
私が手前の側面の真ん中の部分を押すと、箱はすぐに開いた。
「はあぁ?!」
ヤノくんは驚愕している。わぁ、なんだかヤノくんらしいなぁ。可愛い。
「これ、チョコレートみたいですよ」
中には色とりどりの包み紙に包まれたチョコレートが入っていた。赤、ピンク、オレンジ、黄色、黄緑色、青、水色……一粒一粒が大きくて食べ応えがありそうだ。
「お前にやる」
「いいんですか?!」
あぁ、と言ってヤノくんは仕事に出かけた。
例によって掃除をしていると、ヤノくんからメッセージが届いた。今から関口さんが食糧を届けに来てくれるらしい。
ここへ来てからはずっとデリだったので、料理をしたいと思い買い出しのメモをヤノくんに渡していたのだ。
ちょうど今夜はハンバーグが食べたい、とヤノくんが言ったので、私が作ることになった。
まさか関口さんが届けに来てくれるとは思わなかったから、とてもびっくりだ。
「すみません、お忙しいのに、買い出しになんて行っていただいて……」
関口さんはすぐに来てくれて、玄関で食糧を渡してくれる。
「いえ、これも仕事ですから」
そう言うと関口さんは私の顔をじっと見た。
「……? あの、何か気になることでもありますか?」
関口さんは静かに笑った。
「苗字名前さん。随分昔に、あなたに空手の勝負を挑んだ近所の悪ガキを覚えてないですか?そいつ、一瞬であなたにやられて卒倒したんですが」
私は目を丸くした。
「それは……覚えてますが、どうして関口さんがそれをご存知なんですか?」
「そのときやられたのは、俺の後輩だったんですよ。俺もそのとき、試合を見てました。あなたの名前を聞いてぴんときて、顔も面影があったからすぐわかりました」
「そうだったんですね……!」
「相変わらずお強いそうで。前にヤノさんのことも助けてくれたそうですね」
「い、いえ、そんなことは……」
なんだか恥ずかしくて顔が熱くなってくる。まさか関口さんがあのときの男の子の先輩だったなんて。世間は本当に狭いなぁと思った。
「それじゃあ、俺は行きますので」
出て行こうとする関口さんを私は慌てて引き止めた。
「関口さん、今夜良かったら、こちらで一緒に夕飯を召し上がりませんか?ヤノくんがハンバーグを食べたいっていうから、私が作るんですけど。関口さんも誘うってヤノくん言ってたんですが、もう聞いておられますか?」
それは昨夜ヤノくんと決めたことだった。関口さんには今回の件で本当にお世話になっているから、お礼もかねてご招待しよう、と。
関口さんはまた静かに笑った。
「せっかくですが、今夜は予定があるので」
「そうですか。それなら、また違う日に来ていただけませんか?」
「いえ……ヤノさんは自分でも気づいてないですが、俺がいくと2人の邪魔になりますから」
関口さんはそう言うと去っていった。邪魔になる?それって、どういう意味だろう??
夕方になった。掃除や片付けを終え、さっきもらったチョコレートを食べようかな、と箱を開ける。
このチョコレートは外国の有名なブランドのものだ。きっとめちゃくちゃ高いだろう。ゴクリと喉をならしてから、迷った末、黄緑色の包み紙のチョコをいただくことにする。本当に本当に美味しくて、ほっぺたが落ちそうになった。
「信じられないくらい甘くて美味しい……」
次は赤い包み紙のを頂こうかな、と思ったとき、玄関のドアが開いてヤノくんが帰ってきた。
「ヤノくん、もう帰って来られたのですか?」
「あぁ。今日はびっくりするぐらい捗った」
「良かったですね!早いですが、もう夕飯の準備を始めましょうか?」
「頼む」
ハンバーグとポテトサラダとコンソメスープを作って、テーブルの上に並べる。いただきます、をして食べ始める。
「そういや、さっき関口から聞いたぞ。お前がガキの頃に空手で卒倒させた相手って、関口の後輩だったんだろ?」
「あ、もう聞きましたか……なんか、恥ずかしいですね……」
「そいつ今も地下の格闘家らしいぞ」
「ほ、ほんとですか?!」
「今やってもお前、勝てたりしてな……」
ヤノくんは呆れたような目で私を見ている。私はなんだか居心地が悪い。
「それは絶対無理です。だって私は、ほんとは強くないんです」
「あ?強ぇだろ。あの時半グレも倒したし」
「いえ、ちょっと違うんです。皆んな、私を見て油断するんですよ。小柄な女だし、腕力も無さそうだし。私はその隙をつくだけなんです」
ヤノくんはちょっと目を丸くした。
「へぇ。それは分かる気がする。俺もそんな感じだ。喧嘩じゃねぇけど」
夕飯を美味しく食べ終えると、私はヤノくんにチョコレートの箱を差し出した。
「これ、とっても美味しかったです!まだまだあるから、ヤノくんも召し上がってください」
ヤノくんはどの色にするか迷って、オレンジ色を選んだ。
「美味い」
「ですよね」
その後はヤノくんと映画を観た。彼はシドニー・ポワチェが好きらしい。往年の映画スターの名作を字幕でたしなむなんて、なかなか渋くて素敵だなと思った。
「ヤノくん!新しいスーツですか?いいですね!似合ってます」
「そうか?洗い替えに買ったやつだけど、しっくりこねぇ」
「そんなことないです!めちゃくちゃかっこいいですよ!!」
「いや、やっぱダメっすわ、ドンキは」
ヤノくんはあまり気に入らないようで、鏡にうつった自分を細目で睨んでいる。すぐにあぁ、そうだとテーブルに置かれた茶色い箱を取り、私に差し出した。
「これはなんですか?」
とてもお洒落で重厚な感じの箱だ。結構大きい。
「ボスからもらった。何かわかんねぇ。それどうやっても開かねぇから、きっと不良品だ」
私が手前の側面の真ん中の部分を押すと、箱はすぐに開いた。
「はあぁ?!」
ヤノくんは驚愕している。わぁ、なんだかヤノくんらしいなぁ。可愛い。
「これ、チョコレートみたいですよ」
中には色とりどりの包み紙に包まれたチョコレートが入っていた。赤、ピンク、オレンジ、黄色、黄緑色、青、水色……一粒一粒が大きくて食べ応えがありそうだ。
「お前にやる」
「いいんですか?!」
あぁ、と言ってヤノくんは仕事に出かけた。
例によって掃除をしていると、ヤノくんからメッセージが届いた。今から関口さんが食糧を届けに来てくれるらしい。
ここへ来てからはずっとデリだったので、料理をしたいと思い買い出しのメモをヤノくんに渡していたのだ。
ちょうど今夜はハンバーグが食べたい、とヤノくんが言ったので、私が作ることになった。
まさか関口さんが届けに来てくれるとは思わなかったから、とてもびっくりだ。
「すみません、お忙しいのに、買い出しになんて行っていただいて……」
関口さんはすぐに来てくれて、玄関で食糧を渡してくれる。
「いえ、これも仕事ですから」
そう言うと関口さんは私の顔をじっと見た。
「……? あの、何か気になることでもありますか?」
関口さんは静かに笑った。
「苗字名前さん。随分昔に、あなたに空手の勝負を挑んだ近所の悪ガキを覚えてないですか?そいつ、一瞬であなたにやられて卒倒したんですが」
私は目を丸くした。
「それは……覚えてますが、どうして関口さんがそれをご存知なんですか?」
「そのときやられたのは、俺の後輩だったんですよ。俺もそのとき、試合を見てました。あなたの名前を聞いてぴんときて、顔も面影があったからすぐわかりました」
「そうだったんですね……!」
「相変わらずお強いそうで。前にヤノさんのことも助けてくれたそうですね」
「い、いえ、そんなことは……」
なんだか恥ずかしくて顔が熱くなってくる。まさか関口さんがあのときの男の子の先輩だったなんて。世間は本当に狭いなぁと思った。
「それじゃあ、俺は行きますので」
出て行こうとする関口さんを私は慌てて引き止めた。
「関口さん、今夜良かったら、こちらで一緒に夕飯を召し上がりませんか?ヤノくんがハンバーグを食べたいっていうから、私が作るんですけど。関口さんも誘うってヤノくん言ってたんですが、もう聞いておられますか?」
それは昨夜ヤノくんと決めたことだった。関口さんには今回の件で本当にお世話になっているから、お礼もかねてご招待しよう、と。
関口さんはまた静かに笑った。
「せっかくですが、今夜は予定があるので」
「そうですか。それなら、また違う日に来ていただけませんか?」
「いえ……ヤノさんは自分でも気づいてないですが、俺がいくと2人の邪魔になりますから」
関口さんはそう言うと去っていった。邪魔になる?それって、どういう意味だろう??
夕方になった。掃除や片付けを終え、さっきもらったチョコレートを食べようかな、と箱を開ける。
このチョコレートは外国の有名なブランドのものだ。きっとめちゃくちゃ高いだろう。ゴクリと喉をならしてから、迷った末、黄緑色の包み紙のチョコをいただくことにする。本当に本当に美味しくて、ほっぺたが落ちそうになった。
「信じられないくらい甘くて美味しい……」
次は赤い包み紙のを頂こうかな、と思ったとき、玄関のドアが開いてヤノくんが帰ってきた。
「ヤノくん、もう帰って来られたのですか?」
「あぁ。今日はびっくりするぐらい捗った」
「良かったですね!早いですが、もう夕飯の準備を始めましょうか?」
「頼む」
ハンバーグとポテトサラダとコンソメスープを作って、テーブルの上に並べる。いただきます、をして食べ始める。
「そういや、さっき関口から聞いたぞ。お前がガキの頃に空手で卒倒させた相手って、関口の後輩だったんだろ?」
「あ、もう聞きましたか……なんか、恥ずかしいですね……」
「そいつ今も地下の格闘家らしいぞ」
「ほ、ほんとですか?!」
「今やってもお前、勝てたりしてな……」
ヤノくんは呆れたような目で私を見ている。私はなんだか居心地が悪い。
「それは絶対無理です。だって私は、ほんとは強くないんです」
「あ?強ぇだろ。あの時半グレも倒したし」
「いえ、ちょっと違うんです。皆んな、私を見て油断するんですよ。小柄な女だし、腕力も無さそうだし。私はその隙をつくだけなんです」
ヤノくんはちょっと目を丸くした。
「へぇ。それは分かる気がする。俺もそんな感じだ。喧嘩じゃねぇけど」
夕飯を美味しく食べ終えると、私はヤノくんにチョコレートの箱を差し出した。
「これ、とっても美味しかったです!まだまだあるから、ヤノくんも召し上がってください」
ヤノくんはどの色にするか迷って、オレンジ色を選んだ。
「美味い」
「ですよね」
その後はヤノくんと映画を観た。彼はシドニー・ポワチェが好きらしい。往年の映画スターの名作を字幕でたしなむなんて、なかなか渋くて素敵だなと思った。