第13話 同居生活② -決意-
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翌日もヤノくんは朝から仕事に出かけたので、私はやることがない。掃除や片付けに専念する。
10時を過ぎたとき、スマホがなった。知らない番号だ。出ると、ミーアキャットのお巡りさんだった。
「苗字さん、あのあと、変わったことはない?」
「はい。大丈夫です」
「今は自宅にいるの?」
「いえ、友達の所にいます」
少し間が空いて、お巡りさんは低い声で言った。
「そう。例の彼の所だね」
「はい」
「実はね、君のと思われるバッグ一式が見つかったから、交番まで取りに来てほしいんだ」
「本当ですか?すぐに伺います」
良かった、見つかったんだ!すぐにヤノくんに連絡する。
「それは良かったが、今日は出頭出来ねぇ。俺が迎えに行けない」
「交番はすぐそこですし、私1人で行けますよ」
「ダメだ」
「でも……」
「とにかく今日はダメだ。家を出るな。じゃあな」
そこで通話は切れた。ヤノくんはちょっと過保護すぎる。警察へ行けば何か新しい情報がわかるかもしれないのに。それにすぐに行くと言ってしまった。合鍵も持っているし、もう足もほぼ治っている。きっと大丈夫だ。私は1人で交番へ向かった。
交番に着くと、本当にバッグ一式が戻ってきていた。盗られたのは財布に入っていた一万円札が2枚だけのようだ。
「典型的な金目当てのひったくりみたいだね。スマホも財布もカードも身分証も無傷だし」
「はい!良かったです」
「申し訳ないけど、犯人が見つからなかったらお金は帰ってこない」
「これくらい安いものです。だって、命は取られませんでしたから」
私はニコッと笑ったが、お巡りさんは無表情のままだ。
「捜査は進めるから、また何かわかったら連絡するよ」
「どうも有難うございます」
「ところで」
お巡りさんは鋭い眼光で私を見た。
「彼の所にいて大丈夫なのかい?監禁されてるんじゃない?」
「そ、そんなことは絶対無いです」
「でも仕事も休んでるんでしょ。何か裏でまずいことでもあるんじゃないの?そういうのは警察に言わないと、君も罪になるんだよ」
お巡りさんは本当に威圧的な物言いだ。罪と聞いて、何も悪いことはしていないのにたじろいでしまう。
「君にとっては大事な友達みたいだけど、彼とは別れた方がいいよ。彼の仕事は知ってるはずだ。いつか君にも良くないことが起こる」
私は何も言えない。
「それとも、もう何か彼と悪いことをしてるのかい?」
「そんなことはありません……」
「前にも言ったけど、これから君は利用されるよ。金銭を要求されたり、悪事に協力させられることになる。それが彼のやり方だからね」
あまりに酷い言い方に、私は涙も出てこなかった。
マンションに戻ると、ヤノくんがいた。めちゃくちゃ怒った顔で仁王立ちしている。やっぱり彼の仕事は時間が読めないようだ。
「お前、どこ行ってたんだよ!」
「交番に行ってました。バッグ一式は無事で、それをもらって帰ってきたところです」
「なんで1人で出て行くんだよ!絶対出るなってあれほど……」
どうして彼は、私のことを信じてくれないんだろう?交番まではちゃんと警戒して行った。それに先ほどお巡りさんに言われたことで、私の頭の中は完全に混乱していた。それでぐちゃぐちゃの気持ちのまま、言ってしまったのだ。
「……ヤノくんは、いつか私のことを利用したりするんですか?」
「あ?いきなり何言ってんだ」
ヤノくんは眉間に皺を寄せてすごい形相だ。おととい喧嘩したときより遥かに怒っている。
「……例えばヤノくんは、いつか私に薬を飲ませて悪いことをさせたり、お金を要求したりするんですか?」
あぁ、とんでもないことを言ってしまった。でもここ数日、あのお巡りさんに言われたことが強烈すぎて頭に残っていた。そんなことあるわけないと信じているのに、言ってしまった。多分もう、ヤノくんは一生許してくれないだろう。もう友達でいてもらえない。きっと絶交されてしまう………
ヤノくんの顔が見れなくて、私は部屋を飛び出そうとした。でもそのとき、彼が突然大笑いをしだしたので、びっくりして固まってしまったのだった。
「薬を飲ませて悪いことさせる?金を要求?お前、なんでいきなりそんなこと言い出すんだよ!」
ヤノくんは肩を震わせて爆笑している。えっ?なんで??今私は、彼にめちゃくちゃ酷いことを言ったはずなのに。
「ほんとに笑わせんなー!あー、苦しい!!」
ヤノくんは床をバンバン叩いて大笑いだ。こんなに笑い転げる彼ははじめてだった。
「えっと、あの……違うんですか?」
「そんなことするわけねぇだろ!」
「でも……」
「お前、本かなんかで読んだのか?」
私は一瞬迷ったけど、お巡りさんに言われたことを打ち明けた。ヤノくんは相変わらず苦しそうなほど笑っている。
「考えてもみろよ、お前にそんなことするなら、もうとっくの昔にやってんだろ」
「そ、そうですね」
「確かに昔はお前に奢らせてたけど、今はそんなことねぇだろーが」
「はい……」
ヤノくんはあっけらかんと笑った。
「友達にそんなことするわけねぇじゃん」
あぁ、私はなんてバカだったんだろう。そうだ、彼は友達だ。大切な大切な友達じゃないか。
「ごめんなさい」
「別にいい。そのお巡りがお前にけしかけただけだ」
「ほんとにごめんなさい……」
「それから、しつこく外出すんなっつったのは、お前が報復されないためだ。また前みたいに危険な目に遭わせらんねぇよ。ほら、あの半グレの時みたいに。まだあのときの借りを返せてねぇのに、また俺のせいで酷い目に遭わせるわけにはいかねぇ」
私は本当に幸せだと思った。彼は私を心の底から大切に思ってくれていると分かったからだ。
けれども最後にヤノくんが笑って言った言葉を、私は聞き逃さなかった。
「お前にだけは、そんな事するわけねぇって」
その言い方で全て分かってしまった。確かに彼は、私にはそんな事しないのだ。そう、私に"だけ"は。
私はそのとき、あることを再度決意した。それはもうずっと前から胸に秘めていたことだ。それを私は、絶対にやり遂げる。そう強く思った。
10時を過ぎたとき、スマホがなった。知らない番号だ。出ると、ミーアキャットのお巡りさんだった。
「苗字さん、あのあと、変わったことはない?」
「はい。大丈夫です」
「今は自宅にいるの?」
「いえ、友達の所にいます」
少し間が空いて、お巡りさんは低い声で言った。
「そう。例の彼の所だね」
「はい」
「実はね、君のと思われるバッグ一式が見つかったから、交番まで取りに来てほしいんだ」
「本当ですか?すぐに伺います」
良かった、見つかったんだ!すぐにヤノくんに連絡する。
「それは良かったが、今日は出頭出来ねぇ。俺が迎えに行けない」
「交番はすぐそこですし、私1人で行けますよ」
「ダメだ」
「でも……」
「とにかく今日はダメだ。家を出るな。じゃあな」
そこで通話は切れた。ヤノくんはちょっと過保護すぎる。警察へ行けば何か新しい情報がわかるかもしれないのに。それにすぐに行くと言ってしまった。合鍵も持っているし、もう足もほぼ治っている。きっと大丈夫だ。私は1人で交番へ向かった。
交番に着くと、本当にバッグ一式が戻ってきていた。盗られたのは財布に入っていた一万円札が2枚だけのようだ。
「典型的な金目当てのひったくりみたいだね。スマホも財布もカードも身分証も無傷だし」
「はい!良かったです」
「申し訳ないけど、犯人が見つからなかったらお金は帰ってこない」
「これくらい安いものです。だって、命は取られませんでしたから」
私はニコッと笑ったが、お巡りさんは無表情のままだ。
「捜査は進めるから、また何かわかったら連絡するよ」
「どうも有難うございます」
「ところで」
お巡りさんは鋭い眼光で私を見た。
「彼の所にいて大丈夫なのかい?監禁されてるんじゃない?」
「そ、そんなことは絶対無いです」
「でも仕事も休んでるんでしょ。何か裏でまずいことでもあるんじゃないの?そういうのは警察に言わないと、君も罪になるんだよ」
お巡りさんは本当に威圧的な物言いだ。罪と聞いて、何も悪いことはしていないのにたじろいでしまう。
「君にとっては大事な友達みたいだけど、彼とは別れた方がいいよ。彼の仕事は知ってるはずだ。いつか君にも良くないことが起こる」
私は何も言えない。
「それとも、もう何か彼と悪いことをしてるのかい?」
「そんなことはありません……」
「前にも言ったけど、これから君は利用されるよ。金銭を要求されたり、悪事に協力させられることになる。それが彼のやり方だからね」
あまりに酷い言い方に、私は涙も出てこなかった。
マンションに戻ると、ヤノくんがいた。めちゃくちゃ怒った顔で仁王立ちしている。やっぱり彼の仕事は時間が読めないようだ。
「お前、どこ行ってたんだよ!」
「交番に行ってました。バッグ一式は無事で、それをもらって帰ってきたところです」
「なんで1人で出て行くんだよ!絶対出るなってあれほど……」
どうして彼は、私のことを信じてくれないんだろう?交番まではちゃんと警戒して行った。それに先ほどお巡りさんに言われたことで、私の頭の中は完全に混乱していた。それでぐちゃぐちゃの気持ちのまま、言ってしまったのだ。
「……ヤノくんは、いつか私のことを利用したりするんですか?」
「あ?いきなり何言ってんだ」
ヤノくんは眉間に皺を寄せてすごい形相だ。おととい喧嘩したときより遥かに怒っている。
「……例えばヤノくんは、いつか私に薬を飲ませて悪いことをさせたり、お金を要求したりするんですか?」
あぁ、とんでもないことを言ってしまった。でもここ数日、あのお巡りさんに言われたことが強烈すぎて頭に残っていた。そんなことあるわけないと信じているのに、言ってしまった。多分もう、ヤノくんは一生許してくれないだろう。もう友達でいてもらえない。きっと絶交されてしまう………
ヤノくんの顔が見れなくて、私は部屋を飛び出そうとした。でもそのとき、彼が突然大笑いをしだしたので、びっくりして固まってしまったのだった。
「薬を飲ませて悪いことさせる?金を要求?お前、なんでいきなりそんなこと言い出すんだよ!」
ヤノくんは肩を震わせて爆笑している。えっ?なんで??今私は、彼にめちゃくちゃ酷いことを言ったはずなのに。
「ほんとに笑わせんなー!あー、苦しい!!」
ヤノくんは床をバンバン叩いて大笑いだ。こんなに笑い転げる彼ははじめてだった。
「えっと、あの……違うんですか?」
「そんなことするわけねぇだろ!」
「でも……」
「お前、本かなんかで読んだのか?」
私は一瞬迷ったけど、お巡りさんに言われたことを打ち明けた。ヤノくんは相変わらず苦しそうなほど笑っている。
「考えてもみろよ、お前にそんなことするなら、もうとっくの昔にやってんだろ」
「そ、そうですね」
「確かに昔はお前に奢らせてたけど、今はそんなことねぇだろーが」
「はい……」
ヤノくんはあっけらかんと笑った。
「友達にそんなことするわけねぇじゃん」
あぁ、私はなんてバカだったんだろう。そうだ、彼は友達だ。大切な大切な友達じゃないか。
「ごめんなさい」
「別にいい。そのお巡りがお前にけしかけただけだ」
「ほんとにごめんなさい……」
「それから、しつこく外出すんなっつったのは、お前が報復されないためだ。また前みたいに危険な目に遭わせらんねぇよ。ほら、あの半グレの時みたいに。まだあのときの借りを返せてねぇのに、また俺のせいで酷い目に遭わせるわけにはいかねぇ」
私は本当に幸せだと思った。彼は私を心の底から大切に思ってくれていると分かったからだ。
けれども最後にヤノくんが笑って言った言葉を、私は聞き逃さなかった。
「お前にだけは、そんな事するわけねぇって」
その言い方で全て分かってしまった。確かに彼は、私にはそんな事しないのだ。そう、私に"だけ"は。
私はそのとき、あることを再度決意した。それはもうずっと前から胸に秘めていたことだ。それを私は、絶対にやり遂げる。そう強く思った。