第12話 同居生活① -大失態-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日からヤノくんとの同居生活が始まった。私は職場に事情を説明し、しばらく有給を使わせてもらえることになった。
足を診察してもらうために病院に行くときと、代用のスマホを借りにショップへ行くときと、着替えを取りに行くために自宅へ戻るときは、ヤノくんが車を手配してくれた。部下の関口さんが運転するハイエースだ。
私はタクシーを使うから大丈夫です、と何度も断ったが、ヤノくんは頑として譲らなかった。もし犯人が敵対するグループだったら、私は報復される可能性があるらしい。
幸い足は軽い捻挫で、スマホを借りて何泊分かの荷物を持ち、私はヤノくんのマンションに戻った。
車を降りるとき関口さんに深々と頭を下げた。彼はシロクマみたいに身体の大きな人で、物静かな人だった。ドブさんとは違うタイプの人みたいだ。でもヤノくんが彼と話している様子から、彼を信頼していることは感じ取っていた。
「お仕事中なのに本当に申し訳ありませんでした。有難うございました」
「いえ、これも仕事ですから」
関口さんは会釈をして静かにそう言った。最後に目が合ったとき、私のことをじっと見ていた気がしたが、多分気のせいだろう。
マンションに戻るとヤノくんに連絡する。すぐに電話があった。彼は今日は早朝から仕事で出かけている。
「お前は今日、ずっと俺んちで待機してろ。警察から呼び出しがあっても、俺が行くまで出頭するなよ」
ちょっと警戒しすぎな気もするが、私は了解する。
「今日は夜中まで帰れねぇから、先に寝てろ」
「わかりました」
今日は外出できない。暇なので、家中を掃除することにした。
夕方まで頑張ったので、家の中はピカピカになった。元から綺麗だから、ちょっとやるだけでこの通りだ。汗をかいたのでシャワーを借りることにする。
お風呂場から上がると、着替えを持ってきていないことに気づいた。人の家に泊まらせてもらっているのに、我ながら適当すぎだ。普段一人暮らしなのでやってしまった。まぁ、この家にはいま私1人だし、ヤノくんはまだまだ帰ってこないからいいだろう。
バスタオルでしっかり身体を拭いて、髪もタオルドライした。タオルは洗濯機に入れて、私は裸のまま廊下に出た。そのときだった。
「……おい、お前、何て格好してんだよ……」
ヤノくんの引き攣る声がした。えっ?う、うそ………!
恐る恐る声がした方を振り向くと、玄関にヤノくんが立っている。顔面蒼白で、呆然として。
私は悲鳴をあげて一目散に洗面室へ戻った。
「……お前は痴女だったのか………」
その後私は大急ぎで服を着て、ヤノくんとリビングのソファに座っていた。本当に恥ずかしすぎて、彼の顔を見られない。彼もずっと顔を上げない。2人して汗だくで下を向いていた。もう一生顔を上げられない気がする……
「……よ、夜中まで帰って来られない、ということでしたので………」
「だからって全裸で出てくるとか有り得ねぇだろ……」
「すみません………」
あぁぁ〜、どうしよう!時を巻き戻したい!!どうしてこんなことになってしまったんだろう!!!
もう全部見られてしまった。本当に全部だ。胸の傷が恥ずかしいとかそんなレベルじゃない。
しばらくまた気まずい沈黙が続く。私は穴があったら入りたいとひたすら頭を抱えていた。
「……お前、意外に大胆なことするよな」
「お詫びのしようもありません……」
「マジでビビりすぎて俺はもう何を見ても驚かねぇぞ……」
「長年の一人暮らしが染み付いておりました……今後は気をつけます……」
ヤノくんは咳払いをして話題を変えた。
「ところでお前、掃除してくれたんか?」
「そうなんです。気づきましたか?」
私が顔を上げるとヤノくんと初めて目が合った。が、2人ともギョっとしてすぐにまた俯いてしまう。き、気まずい……
「……サンキュー」
「……い、いえ、泊まらせてもらっている身分ですから」
「あと、なんか関口が変なこと言ってたぞ。お前の顔と名前に見覚えがあるとかないとか」
「そうなんですか?」
そういえば、さっき関口さんが私のことをじっと見ている気がした。そのとき私たちはまた目が合ったけど、やっぱりお互いすぐにバッと逸らしてしまった。一体これを、私たちはあと何回やるんだろう……
「俺はそろそろ行く。今度こそ夜中まで帰らねぇから寝とけよ」
ヤノくんが玄関へ行くので、私も見送ろうとついていく。
「いってらっしゃいませ」
最後に私がそう言ったとき、またばっちりと目が合った。ヤノくんはやっぱり顔を赤くして、逃げるように出ていった。
あぁ、もうこれ、一生続きそう………
夜の9時ごろになって本を読んでいると、ヤノくんが帰ってきた。あ、やっぱり全然違う時間に帰ってきた。ヤノくんの仕事ってほんとに時間が読めないんだな。
「おかえりなさい。もうお仕事は終わったんですか?」
「あぁ。今日は色々スムーズだった」
「良かったですね」
ヤノくんはすぐにお風呂場へ行って戻ってきた。もう眠いから寝る、というので、ちょっと早いけど私も寝ることにする。
寝室に行くと、ヤノくんはいそいそとベッドにもぐったが、なんだかすごくよそよそしい。昨日は私の手を引いて一緒に入ったのに、今日は1人でもぐりこんでしまった。
「ヤノくん、今日は1人で眠りたい気分ですか?それなら私、向こうのソファで眠ります」
「ダメ」
ヤノくんはそう言ったが、向こうをむいて目を閉じている。
「でも、なんだか1人で眠りたそうな感じですが」
「違う」
「ほんとにそうですか?」
「うん」
なんだか今日のヤノくんは良く分からないなぁ、と首をかしげながら、私ももそもそとベッドの反対側に入った。
しばらくして気持ち良さそうなヤノくんの寝息が聞こえてきた頃、私は気づいた。
そ、そうか、きっとヤノくんは、さっきのことを思い出して気まずかったんだ……。また恥ずかしくなってきて、顔が熱いまま無理矢理目を閉じた。
足を診察してもらうために病院に行くときと、代用のスマホを借りにショップへ行くときと、着替えを取りに行くために自宅へ戻るときは、ヤノくんが車を手配してくれた。部下の関口さんが運転するハイエースだ。
私はタクシーを使うから大丈夫です、と何度も断ったが、ヤノくんは頑として譲らなかった。もし犯人が敵対するグループだったら、私は報復される可能性があるらしい。
幸い足は軽い捻挫で、スマホを借りて何泊分かの荷物を持ち、私はヤノくんのマンションに戻った。
車を降りるとき関口さんに深々と頭を下げた。彼はシロクマみたいに身体の大きな人で、物静かな人だった。ドブさんとは違うタイプの人みたいだ。でもヤノくんが彼と話している様子から、彼を信頼していることは感じ取っていた。
「お仕事中なのに本当に申し訳ありませんでした。有難うございました」
「いえ、これも仕事ですから」
関口さんは会釈をして静かにそう言った。最後に目が合ったとき、私のことをじっと見ていた気がしたが、多分気のせいだろう。
マンションに戻るとヤノくんに連絡する。すぐに電話があった。彼は今日は早朝から仕事で出かけている。
「お前は今日、ずっと俺んちで待機してろ。警察から呼び出しがあっても、俺が行くまで出頭するなよ」
ちょっと警戒しすぎな気もするが、私は了解する。
「今日は夜中まで帰れねぇから、先に寝てろ」
「わかりました」
今日は外出できない。暇なので、家中を掃除することにした。
夕方まで頑張ったので、家の中はピカピカになった。元から綺麗だから、ちょっとやるだけでこの通りだ。汗をかいたのでシャワーを借りることにする。
お風呂場から上がると、着替えを持ってきていないことに気づいた。人の家に泊まらせてもらっているのに、我ながら適当すぎだ。普段一人暮らしなのでやってしまった。まぁ、この家にはいま私1人だし、ヤノくんはまだまだ帰ってこないからいいだろう。
バスタオルでしっかり身体を拭いて、髪もタオルドライした。タオルは洗濯機に入れて、私は裸のまま廊下に出た。そのときだった。
「……おい、お前、何て格好してんだよ……」
ヤノくんの引き攣る声がした。えっ?う、うそ………!
恐る恐る声がした方を振り向くと、玄関にヤノくんが立っている。顔面蒼白で、呆然として。
私は悲鳴をあげて一目散に洗面室へ戻った。
「……お前は痴女だったのか………」
その後私は大急ぎで服を着て、ヤノくんとリビングのソファに座っていた。本当に恥ずかしすぎて、彼の顔を見られない。彼もずっと顔を上げない。2人して汗だくで下を向いていた。もう一生顔を上げられない気がする……
「……よ、夜中まで帰って来られない、ということでしたので………」
「だからって全裸で出てくるとか有り得ねぇだろ……」
「すみません………」
あぁぁ〜、どうしよう!時を巻き戻したい!!どうしてこんなことになってしまったんだろう!!!
もう全部見られてしまった。本当に全部だ。胸の傷が恥ずかしいとかそんなレベルじゃない。
しばらくまた気まずい沈黙が続く。私は穴があったら入りたいとひたすら頭を抱えていた。
「……お前、意外に大胆なことするよな」
「お詫びのしようもありません……」
「マジでビビりすぎて俺はもう何を見ても驚かねぇぞ……」
「長年の一人暮らしが染み付いておりました……今後は気をつけます……」
ヤノくんは咳払いをして話題を変えた。
「ところでお前、掃除してくれたんか?」
「そうなんです。気づきましたか?」
私が顔を上げるとヤノくんと初めて目が合った。が、2人ともギョっとしてすぐにまた俯いてしまう。き、気まずい……
「……サンキュー」
「……い、いえ、泊まらせてもらっている身分ですから」
「あと、なんか関口が変なこと言ってたぞ。お前の顔と名前に見覚えがあるとかないとか」
「そうなんですか?」
そういえば、さっき関口さんが私のことをじっと見ている気がした。そのとき私たちはまた目が合ったけど、やっぱりお互いすぐにバッと逸らしてしまった。一体これを、私たちはあと何回やるんだろう……
「俺はそろそろ行く。今度こそ夜中まで帰らねぇから寝とけよ」
ヤノくんが玄関へ行くので、私も見送ろうとついていく。
「いってらっしゃいませ」
最後に私がそう言ったとき、またばっちりと目が合った。ヤノくんはやっぱり顔を赤くして、逃げるように出ていった。
あぁ、もうこれ、一生続きそう………
夜の9時ごろになって本を読んでいると、ヤノくんが帰ってきた。あ、やっぱり全然違う時間に帰ってきた。ヤノくんの仕事ってほんとに時間が読めないんだな。
「おかえりなさい。もうお仕事は終わったんですか?」
「あぁ。今日は色々スムーズだった」
「良かったですね」
ヤノくんはすぐにお風呂場へ行って戻ってきた。もう眠いから寝る、というので、ちょっと早いけど私も寝ることにする。
寝室に行くと、ヤノくんはいそいそとベッドにもぐったが、なんだかすごくよそよそしい。昨日は私の手を引いて一緒に入ったのに、今日は1人でもぐりこんでしまった。
「ヤノくん、今日は1人で眠りたい気分ですか?それなら私、向こうのソファで眠ります」
「ダメ」
ヤノくんはそう言ったが、向こうをむいて目を閉じている。
「でも、なんだか1人で眠りたそうな感じですが」
「違う」
「ほんとにそうですか?」
「うん」
なんだか今日のヤノくんは良く分からないなぁ、と首をかしげながら、私ももそもそとベッドの反対側に入った。
しばらくして気持ち良さそうなヤノくんの寝息が聞こえてきた頃、私は気づいた。
そ、そうか、きっとヤノくんは、さっきのことを思い出して気まずかったんだ……。また恥ずかしくなってきて、顔が熱いまま無理矢理目を閉じた。