7.He is so mysterious and soooo kind!
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けれどもそんな彼との甘くて素敵な日々は、突然終わりを告げた。
もうすっかり寒くなった、ある師走の日の早朝。何の予感も前触れもなかったのに、私はその朝、ふと目を覚ました。
すると彼が、あの日一度だけ見たスーツ姿で立っている。その雰囲気で、すぐに分かった。彼は今から、ここを出て行こうとしてる んだって。
「あの……」
私の声に、彼は目を丸くして振り向いた。数秒経って、静かに微笑む。
「黙って行くつもりだったけど、起こしちゃったみたいだね」
私は静かに上体を起こす。落ち着いて聞いた。
「……もしかして、もう帰らない予定ですか??」
「うん」
彼はここに来た頃のようにミステリアスな雰囲気を纏っていた。私は彼のその穏やかだけど静かな佇まいを見て、全てを悟る。
瞬時に気持ちを切り替え、とびきりの笑顔を作った。
「私、すごく楽しかったです。素敵な時間を有難うございました」
「礼を言うのはオレの方じゃん。オレもほんとに楽しかった……けどお前、どうしてオレに何も尋ねなかったの?ただカフェで会っただけの、素性も知らねぇ男なのに。それなのにお前はあの日オレをここへ連れてきて、その後もオレに、名前も年齢も住所も、何ひとつ聞かなかった。他にも聞きたい事は、山ほどあった筈なのに」
「それは……」
彼は本当に美しい表情で微笑んでいる。私はやっぱり、ありったけの笑顔で言った。
「それを聞いてしまったら、あなたはすぐに、私の前から去ってしまう気がしたからです」
「すごいね。お前、ほんとに賢い。その通りだよ。けど……」
彼は私の目の前にきて、私の頬に手を触れた。
「お前はほんとにいい子だけど、もしまたオレみてぇな男に会ったら、ぜってぇ関わったらいけねぇ。話しかけるのも、助けるのも、家に上げるのも絶対にダメだ」
「……大丈夫です。私、ちゃんと分かりますから……その人が私にとって、いい人なのか、そうでないかを……」
彼はフッと笑う。
「そうだね。お前は賢いもんな。けど、一体何処で見分けるの?」
私はしっかり考えて、自分の見解を話した。
「……それは、多分………私、家族とか友達とか、生まれつき周りの人達に恵まれてるんです。田舎に住んでる両親や兄弟とも、ずっと仲が良くて。だからなんじゃないかと思います……自分に良くしてくれる人達を沢山見てきたから、その人が私にとって、いい人か良くない人なのかを、見極められるのかなぁって……」
彼はひゅう、と小さく口笛を鳴らした。
「お前、ほんとに賢いね。その通りだ。じゃあ、うんと悪りぃ奴が目の前に現れた時はどうするの?」
「……スルーします。距離を取って、関わらないようにします」
「そうだな。"悪意"のある奴には、ぜってぇ近寄っちゃいけねぇ。反応してもダメ、反論したり、正そうとする必要もねぇ。完璧に無視しろ」
そこで私達は暫く沈黙が続いた。私は最後に彼に何を言おうか迷ったけど、ひとつだけ、彼に尋ねてみる事にした。
「……これから何処へ行くんですか??」
「オレは日本を出る。ガキの頃に死んじまったオレの大事な兄貴が、昔訪れた国に行ってみようと思うんだ。お前と過ごしてたら、やっと吹っ切れたよ。オレも"オレに悪意を向けてくる存在"は、完全に断ち切る事にする」
「……そうですか」
「オレはその国で、昔の仲間に会うんだ。ソイツはまるで、"時をこえたように昔のまんま"で、このオレに会いに来る」
彼の瞳は澄んでいた。すごく爽やかで、満足そうに微笑んでいる。彼が言っている事は私には全ては分からなかったけど、私は『彼の門出』を、心から祝いたいと思った。だから元気良くこう言ったのだ。
「きっと素敵な再会になりますよ!!楽しみですね!!」
最後に彼はこう言って、笑顔で去っていった。その時また彼の首筋に刻まれた龍のタトゥーが見えて、やはり儚げだった。
「お前のお陰で癒されたよ、有難う。そのボストンバッグの中身はお前が好きに使って。オレからの礼だから。じゃあ。お前、ずっと元気でね。必ず夢を叶えろよ」
もうすっかり寒くなった、ある師走の日の早朝。何の予感も前触れもなかったのに、私はその朝、ふと目を覚ました。
すると彼が、あの日一度だけ見たスーツ姿で立っている。その雰囲気で、すぐに分かった。彼は今から、ここを
「あの……」
私の声に、彼は目を丸くして振り向いた。数秒経って、静かに微笑む。
「黙って行くつもりだったけど、起こしちゃったみたいだね」
私は静かに上体を起こす。落ち着いて聞いた。
「……もしかして、もう帰らない予定ですか??」
「うん」
彼はここに来た頃のようにミステリアスな雰囲気を纏っていた。私は彼のその穏やかだけど静かな佇まいを見て、全てを悟る。
瞬時に気持ちを切り替え、とびきりの笑顔を作った。
「私、すごく楽しかったです。素敵な時間を有難うございました」
「礼を言うのはオレの方じゃん。オレもほんとに楽しかった……けどお前、どうしてオレに何も尋ねなかったの?ただカフェで会っただけの、素性も知らねぇ男なのに。それなのにお前はあの日オレをここへ連れてきて、その後もオレに、名前も年齢も住所も、何ひとつ聞かなかった。他にも聞きたい事は、山ほどあった筈なのに」
「それは……」
彼は本当に美しい表情で微笑んでいる。私はやっぱり、ありったけの笑顔で言った。
「それを聞いてしまったら、あなたはすぐに、私の前から去ってしまう気がしたからです」
「すごいね。お前、ほんとに賢い。その通りだよ。けど……」
彼は私の目の前にきて、私の頬に手を触れた。
「お前はほんとにいい子だけど、もしまたオレみてぇな男に会ったら、ぜってぇ関わったらいけねぇ。話しかけるのも、助けるのも、家に上げるのも絶対にダメだ」
「……大丈夫です。私、ちゃんと分かりますから……その人が私にとって、いい人なのか、そうでないかを……」
彼はフッと笑う。
「そうだね。お前は賢いもんな。けど、一体何処で見分けるの?」
私はしっかり考えて、自分の見解を話した。
「……それは、多分………私、家族とか友達とか、生まれつき周りの人達に恵まれてるんです。田舎に住んでる両親や兄弟とも、ずっと仲が良くて。だからなんじゃないかと思います……自分に良くしてくれる人達を沢山見てきたから、その人が私にとって、いい人か良くない人なのかを、見極められるのかなぁって……」
彼はひゅう、と小さく口笛を鳴らした。
「お前、ほんとに賢いね。その通りだ。じゃあ、うんと悪りぃ奴が目の前に現れた時はどうするの?」
「……スルーします。距離を取って、関わらないようにします」
「そうだな。"悪意"のある奴には、ぜってぇ近寄っちゃいけねぇ。反応してもダメ、反論したり、正そうとする必要もねぇ。完璧に無視しろ」
そこで私達は暫く沈黙が続いた。私は最後に彼に何を言おうか迷ったけど、ひとつだけ、彼に尋ねてみる事にした。
「……これから何処へ行くんですか??」
「オレは日本を出る。ガキの頃に死んじまったオレの大事な兄貴が、昔訪れた国に行ってみようと思うんだ。お前と過ごしてたら、やっと吹っ切れたよ。オレも"オレに悪意を向けてくる存在"は、完全に断ち切る事にする」
「……そうですか」
「オレはその国で、昔の仲間に会うんだ。ソイツはまるで、"時をこえたように昔のまんま"で、このオレに会いに来る」
彼の瞳は澄んでいた。すごく爽やかで、満足そうに微笑んでいる。彼が言っている事は私には全ては分からなかったけど、私は『彼の門出』を、心から祝いたいと思った。だから元気良くこう言ったのだ。
「きっと素敵な再会になりますよ!!楽しみですね!!」
最後に彼はこう言って、笑顔で去っていった。その時また彼の首筋に刻まれた龍のタトゥーが見えて、やはり儚げだった。
「お前のお陰で癒されたよ、有難う。そのボストンバッグの中身はお前が好きに使って。オレからの礼だから。じゃあ。お前、ずっと元気でね。必ず夢を叶えろよ」