So precious you!序章
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「黒川イザナ君」
名前を呼ばれたので振り返ると、その声の主は若い小柄な女だった。けれどもその女を見た瞬間、黒川イザナは息を飲んだ。何故なら彼女と目が合った途端、朝から苛つかされていたあの忌々しい「天気痛」が、嘘のように消えさったからだ。天気痛とは気圧の変化により引き起こされる頭痛のことで、イザナは子供のころからずっとこの体質に悩まされている。それが一瞬で治るなんて、生まれて初めての事だ。この女は一体何者なのだろう?
しかも次に起こった出来事に、イザナはまた目を見開いた。その女は自分と同年代で、何処からどう見てもごく普通の、地味で気弱そうな女だ。細くて小さいし、どんなに目を凝らしてみても喧嘩が出来そうなタイプではない、ごく普通の女だ。
それなのにその女は次の瞬間に路地裏から現れた暴漢を、飛び蹴りで倒してしまったのだ。そいつは先の抗争の残党で、突然イザナを狙って襲いかかってきた大男だった。しかもその女の動きは非常に俊敏で、イザナが総長を務める横浜"天竺"の幹部達と比べても、遜色のない"戦才(センス)"だ。
「オマエ、一体何もんだ?」
イザナの問いに、女は震える声で答えた。顔を真っ青にして、大事そうに抱えた大きな紙袋を、さらに強く握りしめながら。
「……も、申し訳ありません。黒川君が襲われそうだったので、つい跳び蹴りをきめてしまいました……」
それを聞くとイザナはその大きな目をまた更に見開く事になった。「不良の世界」に生きるイザナにとって、こんな事は日常茶飯事だ。けれどもイザナはそれを女に助けて貰った事なんて、これまでただの一度もない。そんな事、普通の女に出来るはずがない。それなのにこの女は、それをいとも簡単にやってのけてしまったのだ。つい飛び蹴りをきめただと? しかもその理由はこのオレを守る為? オレを? オレはこの神奈川を統一した、"天竺"の総長だぞ? すぐにじわじわと、強烈な笑いが込み上げてくる。
イザナは屈託なく笑い始めた。両隣に居る"天竺"の幹部達、灰谷蘭と斑目獅音も、同じように腹を抱えて笑っている。こんなに面白おかしいのは、一体いつぶりだろう? あの酷い天気痛もやはり消え失せているし、イザナは途端に気分が良くなった。
名前を呼ばれたので振り返ると、その声の主は若い小柄な女だった。けれどもその女を見た瞬間、黒川イザナは息を飲んだ。何故なら彼女と目が合った途端、朝から苛つかされていたあの忌々しい「天気痛」が、嘘のように消えさったからだ。天気痛とは気圧の変化により引き起こされる頭痛のことで、イザナは子供のころからずっとこの体質に悩まされている。それが一瞬で治るなんて、生まれて初めての事だ。この女は一体何者なのだろう?
しかも次に起こった出来事に、イザナはまた目を見開いた。その女は自分と同年代で、何処からどう見てもごく普通の、地味で気弱そうな女だ。細くて小さいし、どんなに目を凝らしてみても喧嘩が出来そうなタイプではない、ごく普通の女だ。
それなのにその女は次の瞬間に路地裏から現れた暴漢を、飛び蹴りで倒してしまったのだ。そいつは先の抗争の残党で、突然イザナを狙って襲いかかってきた大男だった。しかもその女の動きは非常に俊敏で、イザナが総長を務める横浜"天竺"の幹部達と比べても、遜色のない"戦才(センス)"だ。
「オマエ、一体何もんだ?」
イザナの問いに、女は震える声で答えた。顔を真っ青にして、大事そうに抱えた大きな紙袋を、さらに強く握りしめながら。
「……も、申し訳ありません。黒川君が襲われそうだったので、つい跳び蹴りをきめてしまいました……」
それを聞くとイザナはその大きな目をまた更に見開く事になった。「不良の世界」に生きるイザナにとって、こんな事は日常茶飯事だ。けれどもイザナはそれを女に助けて貰った事なんて、これまでただの一度もない。そんな事、普通の女に出来るはずがない。それなのにこの女は、それをいとも簡単にやってのけてしまったのだ。つい飛び蹴りをきめただと? しかもその理由はこのオレを守る為? オレを? オレはこの神奈川を統一した、"天竺"の総長だぞ? すぐにじわじわと、強烈な笑いが込み上げてくる。
イザナは屈託なく笑い始めた。両隣に居る"天竺"の幹部達、灰谷蘭と斑目獅音も、同じように腹を抱えて笑っている。こんなに面白おかしいのは、一体いつぶりだろう? あの酷い天気痛もやはり消え失せているし、イザナは途端に気分が良くなった。
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