影に咲く者
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S.T.A.R.S.の訓練は厳しいが、日常の中には穏やかな時間もあった。
この日、ルシア・グレイは訓練を終え、休憩室で隊員たちと共にコーヒーを飲んでいた。
バリーが豪快に笑いながら、クリスの肩を叩いている。
「だからよ! クリス、お前はそろそろ誰かいい相手を見つけたらどうなんだ?」
「は? なんで俺がそんな話題の中心になってんだよ」
「いやぁ、そろそろ誰かいい相手を見つけるべき年頃じゃねぇか?」
「……お前が言うと妙に説得力あるな」
クリスはコーヒーカップを持ち上げながら、軽くため息をついた。
ジルが横から口を挟む。
「ま、確かにクリスにはもう少し落ち着いてほしいところよね。任務以外のことも考えたら?」
「お前まで言うのかよ……」
ルシアは微笑みながら、そのやりとりを眺めていた。
こんな風に気さくな会話ができる仲間がいるのは、今までの人生にはなかったことだ。
「じゃあ、ルシアはどうなんだ?」
バリーが唐突に話を振る。
「え?」
「お前さん、好きなタイプとかあるのか?」
「え、あの……」
ルシアは不意を突かれ、カップを持つ手が少し強張った。
好きなタイプ。
そんなことを深く考えたことはなかった。恋愛なんて、自分とは遠い世界のものだと思っていた。
それでも、ふと考えてみると、どんな人に惹かれるのだろうか。
「……冷静で、知的な人がいい……かな?」
自然と、そう口にしていた。
その瞬間、クリスが怪訝な顔をし、バリーが微かに目を細めた。
「……なるほどな」
「え?」
「ルシア、それって……隊長みたいじゃないか?」
「えっ!?」
ルシアは一瞬固まった。
ウェスカー。
まさか、そんな風に考えたことはなかった。
いや、むしろ考えないようにしていたのかもしれない。
「お前さん、気づいてなかったのか?」
バリーの声が、さっきまでの冗談混じりのものとは違う、どこか探るような響きを持っていた。
「いやいやいや、そんなわけ……」
慌てて否定しようとしたが、心の奥で何かがざわめいた。
──本当に、“そんなわけ”はないのだろうか?
確かに、ウェスカーの指導は的確で、彼の言葉には重みがあった。
冷静で、知的で、何よりも”自分を否定しない”存在。
「お前さ、最近ウェスカーの話ばっかりしてるしな」
クリスが腕を組みながら言う。
「そ、そんなことは……」
「いや、してるな」
「……してるな」
ジルとバリーが口を揃えて言う。
ルシアは、顔が熱くなっていくのを感じた。
「ち、違います……! ただ、隊長として尊敬してるだけで……!」
バリーはルシアの表情を見つめながら、ゆっくりと口を開く。
「そうか……まあ、隊長は優秀だからな」
その言葉には、妙な含みがあった。
からかうような笑みはもう消えていて、代わりに慎重に彼女の反応を探るような眼差しが向けられている。
ルシアは、その視線から思わず目をそらした。
──そうなのかな……?
隊員たちの何気ない冗談は、ルシアの中でくすぶっていたものを炙り出すような感覚だった。
まさか、自分がウェスカーを意識しているなんて。
いや、そんなはずはない。
でも、もし……
ルシアはコーヒーカップを見つめながら、初めて自分の気持ちと向き合い始めていた。