影に咲く者
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──すべては、初めから決まっていた。
青白いモニターの光が静かに研究施設の床を照らす。
私は無駄のない動作で手袋を嵌め直し、背後に立つ存在に目を向ける。
彼女──ルシア・グレイ。
いや、その名は”本当の彼女”ではない。
彼女は、自分の名をそう認識しているに過ぎない。
“ルシア”は、ただの仮初めの存在。
しかし、今ここにいる彼女は、私が望んだ通りの”本物”だ。
──私の手のひらの中で、計画通りに動いた結果としての。
「……何か?」
ルシアが静かに私を見上げる。
迷いのない瞳。
“普通の人間”を演じるための仮面を捨て去り、“適応者”としての本能を受け入れた目だ。
私は微かに微笑む。
「いや……完璧だ、ルシア」
彼女は一瞬まばたきをし、再び静かに頷いた。
彼女はもう、私の言葉を疑うことはない。
彼女は、私のもとにあることを”正しい”と認識し、“必要なこと”だと理解している。
それは当然のことだ。
──彼女の運命は、最初から私が決めていたのだから。
***
ルシア・グレイ。
彼女は”偶然”生まれた存在ではない。
彼女は、私の計画の一部として生み出され、私の手の中で育ってきた。
彼女は”始祖ウィルス適応者プロジェクト”の産物だった。
アンブレラが極秘裏に進めていた”適応者”の創出計画。
彼女は、数多くの被験体の中で唯一”生き残った存在”だった。
しかし、彼女の存在は”計画外”とされた。
研究施設のバイオハザード。
漏洩したウィルスによる惨劇の中、研究員たちは死に絶え、他の被験体も全滅した。
──彼女だけが生き延びた。
その事実が”異常”とみなされた。
アンブレラは、彼女の”存在そのもの”を危険視した。
“完全な適応者”として生き延びたことは、彼女が”制御不能”である可能性を意味していたからだ。
彼女の処分が決定された。
だが、その決定が実行されることはなかった。
──私がそれを阻止したからだ。
施設崩壊の混乱の中、私は彼女を”逃がした”。
組織に報告することもなく、上層部の決定に従うこともなく、私は独断で彼女を影の中に隠した。
アンブレラのデータ上、彼女は”死亡”したことになっている。
“研究事故の犠牲者の一人”。
──だが、彼女は生き延びた。
私は、彼女を普通の世界へと送り込み、“普通の人間として生きられるか”を試した。
もし本当に”適応者”ならば、どこに置かれても生き残り、“自ら道を選ぶ”はずだった。
そして、彼女は”私の望んだ通り”の結果を示した。
──普通ではいられないと、彼女自身が気づくように。
私は、影から彼女を見守り、“必要な選択肢”を与えた。
彼女がS.T.A.R.S.へと辿り着いたのは、決して偶然ではない。
私は”道を敷いた”に過ぎない。
そして、彼女は”最適な選択”をした。
私が望んだ通りに。
***
「お前は最初から、私のものだった」
私はそう告げながら、ルシアの髪を指先で梳いた。
彼女は微かに目を伏せ、私の手を拒むことなく受け入れた。
その姿を見て、私は静かに笑う。
“計画通りだ”。
私は始祖ウィルスを投与し、適応した。
彼女もまた、私と同じ”適応者”でである。
私たちは、“進化の先”を見据える者として、共に歩むべき存在。
それ以外の選択肢など、初めからありはしなかったのだ。
──私がそう”作り上げた”のだから。
「ルシア、お前の”力”はこれからさらに研ぎ澄まされていく」
「ええ……それが”あるべき姿”なのでしょう?」
彼女の返答は、まるで”当たり前”のことを言うようだった。
──完璧だ。
あの日私は、“最高の適応者”を手に入れた。
そして、長い月日を超え彼女は”自ら”私のものとなった。
「フフ……」
私は静かに笑い、彼女の肩に手を置く。
「行こう、ルシア。私たちには成すべきことがある」
「……ええ、アルバート」
彼女の迷いは、もうない。
彼女の運命は、私が握っている。
そしてそれは、私の手の中で完璧に”染め上げられた”。
──全ては、私の思い通り。
私は静かに目を閉じ、ほくそ笑む。
──これが、“運命”というものだ。