影に咲く者
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──私は、間違っていなかった。
崩壊する洋館の残骸を背に、私は静かに夜の闇を見上げた。
この手にはまだ、バリーの温もりが微かに残っている。
彼は最後まで私を引き止めようとした。
“家族みたいなもんだろう”と、何度も言ってくれた。
けれど、私はその手を振り払い、ウェスカーの差し出した手を取った。
──それが、私の選んだ道。
かつて私は”普通の人間”として生きようとした。
それが正しいことで、それが幸せだと信じていた。
だが、それはただの幻想だった。
私は最初から普通ではなかった。
私の血に流れる”適応者”としての力。
私だけが持つ”異質さ”。
それを受け入れることこそが、私が本来進むべき道だったのだ。
そして、それを教えてくれたのは──ウェスカーだった。
彼は、私のすべてを見抜いていた。
普通の世界に馴染もうと足掻く私の愚かさも、孤独に苛まれた私の脆さも。
だが、彼は決してそれを”否定”しなかった。
むしろ、その”異質さ”を”正しいもの”として肯定してくれた。
──それがどれほど、救いだったか。
「ついてこい」
彼のその言葉に、私は迷いなく頷いた。
彼はその後、始祖ウィルスを投与し、適応した。
それは、彼もまた”普通の人間ではなくなった”ということ。
彼は私と同じ存在になった。
私と彼は”選ばれし者”として進化し、“新たな道を歩む者”になったのだ。
私は彼と共に生きる。
それが、私にとっての”正しい道”だと確信している。
バリーは言った。
「お前はまだ戻れる」と。
だが、それは違う。
私はもう”戻る”必要などない。
私は”普通の人間”ではなく、ウェスカーと共に”進化の先”へと進むべき存在なのだから。
そして、私は彼と共に新たな未来を築く。
「……アルバート」
その名を呼ぶと、彼はわずかに微笑んだ。
「フフ……ようやく、理解したか?」
「ええ……最初から、間違っていなかったのだと」
彼のそばにいることが、私にとっての”正解”なのだから。
彼の導く未来を共に見届けることが、私の役目なのだから。
“影に咲く者”として──私は、これからも彼と歩んでいく。