影に咲く者
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ラクーンシティ警察署(R.P.D.)の一角に設置された特別部隊、S.T.A.R.S.(Special Tactics And Rescue Service)。
その精鋭部隊にルシア・グレイは正式に配属された。
新しい制服を身にまとい、規則正しく整ったオフィスに足を踏み入れた瞬間、彼女は小さく息をのむ。
刑事たちの荒っぽい掛け声が飛び交う通常の警察署の雰囲気とは違い、ここには秩序と研ぎ澄まされた緊張感があった。
装備を整える音、無線のやり取り、そして磨き上げられた銃のメタリックな光。
訓練を積んだ者だけが持つ動作の無駄のなさが、彼女の目に映る。
──この場所が、私の新しい居場所になる。
その思いを噛みしめながら、彼女はオフィスの中をゆっくりと歩いた。
「君が新しく入ったルシア・グレイか?」
低く、落ち着いた声が背後から響いた。
振り向くと、そこにはがっしりとした体格の男が腕を組んで立っていた。
髭をたくわえた顔にはどこか親しみやすさがあり、深みのある瞳には鋭さと同時に優しさが宿っている。
「バリー・バートンだ。アルファチームのベテランでな。ま、これでも古株の一人だ」
「あ……! はじめまして。ルシア・グレイです。よろしくお願いします」
ルシアは反射的に姿勢を正し、礼儀正しく頭を下げた。
バリーは少し驚いたように目を瞬かせた後、口元に微笑を浮かべた。
「礼儀正しいな。最近の若いもんはやたらと態度がでかいのが多いが……君は真面目そうだ」
「いえ……ただ、まだ緊張していて……」
「そうか、まぁ最初はみんなそんなもんさ」
バリーは大きな手を差し出した。
「S.T.A.R.S.へようこそ、ルシア」
ルシアは一瞬戸惑いながらも、その手をしっかりと握った。
その瞬間、彼の手の温かさが伝わってきた。
まるで、大きな父親のような安心感。
──この感覚は、今まで味わったことがない。
驚きと戸惑いが胸をよぎるが、ルシアはそれを悟られないように静かに微笑んだ。
訓練と実戦の始まり
S.T.A.R.S.に配属されたばかりのルシアは、ブラヴォーチームの一員としての基礎訓練を受けることになった。
とはいえ、すでに高度な戦闘訓練をクリアしての入隊であり、基礎といってもほぼ実戦レベルのものばかりだった。
「ブラヴォーチームは主に索敵と捜査を担当する。君は技術員とはいえ少しの戦闘能力もあるようだが、それだけじゃダメだ。状況判断力と、チームワークが求められる」
バリーが訓練場でそう説明しながら、ターゲットシューティングのデモンストレーションを見せる。
「まずは実戦形式でやってみよう。準備はいいか?」
「はい、やらせてください」
ルシアは素早くホルスターから拳銃を抜き、的へと狙いを定めた。
──パンッ! パンッ! パンッ!
三発の銃声が響く。
ルシアの撃った弾はすべて中心から少しずれた位置に着弾した。
彼女の表情にわずかな悔しさが滲む。
「ふむ……いい線しているな、若干慎重になりすぎるな。もっと大胆にいけるはずだろう?」
「……はい」
ルシアは再び銃を構えた。
彼女は、ずっと「普通でいる」ことを意識してあらゆることを調整したり、押さえ込んできたものだった。
けれどここでは、そうする必要はないのかもしれない。
彼女は軽く息を吸い、撃鉄を起こした。
──次の瞬間、ルシアの弾は、的のど真ん中に吸い込まれるように命中した。
バリーは少し目を見開いたが、すぐに満足げに頷く。
「ほう……やればできるじゃないか」
「ありがとうございます」
「お前さん、過去に射撃の訓練をどこかで受けたことあるのかい?」
「えっ……?」
バリーは冗談めかした口調で笑いながらルシアの肩を軽く叩いた。
「初めての射撃であんな迷いのある撃ち方をしてたくせに、一気に命中率を上げるなんざ、普通はできん。ま、理由は聞かんが……」
彼は腕を組みながらにやりと笑った。
「お前さん、ここで生きていくにはその遠慮、捨てちまったほうがいいぜ?」
「……遠慮、ですか?」
「お前さんはまだ“ここにいていいのか”って顔をしてる。けど、そんなこと気にしてたら、すぐに置いてかれちまうぞ」
ルシアは驚き、バリーの顔を見つめた。
この人は、私の中の迷いを見抜いているのか?
彼女は戸惑いながらも、ゆっくりと拳を握る。
「……はい。ありがとうございます」
バリーは満足げに頷いた。
「そうそう、その調子だ。ま、困ったことがあったら遠慮せず言えよ。俺には二人の娘がいてな、若い娘の扱いには慣れてるんだ」
「……ありがとうございます、バリーさん」
──温かい。
この人は、本当に「家族のような」温もりを持っている。
ルシアは、その感覚に少しだけ胸が締め付けられるのを感じながら、小さく微笑んだ。
新しい居場所
訓練を終えた後、ルシアはオフィスの一角に腰を下ろし、静かに水を飲んでいた。
──ここは、私の居場所になるだろうか。
今までは「普通の人間でいること」に縛られ、自分の本来の力を押し殺して生きてきた。
けれど、ここでは「本当の自分」を出してもいいのかもしれない。
バリーの言葉が、彼女の心に小さな灯をともす。
「お前さん、ここで生きていくには遠慮なんていらねぇぞ?」
ルシアはゆっくりと拳を握り、そして小さく息を吐いた。
「……ここなら、大丈夫かもしれない」
彼女は静かにそう呟き、新たな生活に向けて心を決めた。