影に咲く者
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ラクーンシティ郊外、アークレイ山地。
S.T.A.R.S.に舞い込んだ新たな任務は、行方不明のブラヴォーチームを捜索することだった。
墜落したヘリコプター。隊員たちの失踪。
不可解な事件の真相を探るため、アルファチームは夜の森へと足を踏み入れた。
月の光が木々の隙間から差し込み、不気味な影を作り出している。
「気をつけろ……ここは、ただの捜索任務じゃ済まなそうだ」
クリスが慎重に周囲を警戒しながら言う。
ルシアも、その場の空気が普段の任務とはまるで違うことを感じていた。
そして、事件の核心へと向かうきっかけは突然訪れた。
闇の中、“それ”は現れた。
──異形の獣。
咆哮とともに飛びかかってきたそれは、狼のような姿をしていたが、歪に変形した筋肉と、鋭く伸びた牙を持っていた。
「なっ……!」
銃を構える間もなく、一瞬で隊列は崩れた。
クリスが咄嗟に反撃し、バリーが援護射撃をするが、状況は混乱を極める。
「走れ!」
誰かの声が響いた。
獣の動きは素早く、弾丸をものともせず襲いかかってくる。
このままでは全滅する──そう判断したウェスカーの号令で、隊は撤退を余儀なくされた。
森の奥、突如として目の前に現れた大きな建物。
「……あれは?」
「洋館か……とにかく、中へ入るぞ!」
息を切らしながら、ルシアたちはその古びた洋館の扉を押し開けた。
重厚な扉が軋みながら閉まると、外の狂気が隔絶されるように、館内は不気味な静寂に包まれた。
吹き抜けのホールには、古めかしいシャンデリアが吊るされ、壁には格式高い装飾が施されている。
だが、その美しさとは裏腹に、空気はどこか澱んでいた。
「ここは……」
ジルが辺りを見回しながら呟く。
「まるで、何かを隠しているような場所だな」
バリーが低く言い、銃を構える。
「二手に分かれる」
ウェスカーが冷静な声で指示を出す。
「ジル、バリー、クリス、お前たちは西翼を調べろ。ルシアは……俺と行動しろ」
「……了解しました」
ルシアはすぐに返事をしたが、心の奥に小さな緊張が走った。
──ウェスカーと二人きりでの行動。
普段なら、任務上の判断として受け入れただろう。
だが、今の彼女は、彼の存在を以前よりも強く意識してしまっている。
それを悟られないよう、ルシアはできるだけ平静を装いながら、彼の隣に並んだ。
「行くぞ」
ウェスカーはいつも通りの冷静な表情で、ホールの奥へと歩き出す。
長い廊下を進むと、館の異様な静けさがより鮮明になっていった。
まるで、生き物の気配がない。
だが、それは決して”安全”を意味するわけではなかった。
ルシアは、どこかで誰かに見られているような感覚を覚えながら、無意識に指を引き金にかけた。
そんな中、不意にウェスカーが口を開く。
「ルシア、君は……本当に”普通の人間”なのか?」
「……え?」
足が止まった。
彼女は彼の横顔を見上げる。
ウェスカーは前を向いたまま、淡々と言葉を続けた。
「いや、少し気になってね。君の動きは……あまりにも洗練されすぎている」
ルシアは動揺を悟られまいと、あくまで冷静な口調を保った。
「そんなことは……訓練の賜物です」
「ほう……」
ウェスカーの口元が微かに笑う。
それが、何を意味しているのかは分からない。
ただ、彼は間違いなく”何かを知っている”。
──まるで、彼の視線がすべてを見透かしているような気がした。
ルシアは奥歯を噛みしめ、視線を前へ戻した。
「先に進みましょう。ここに何があるのか、確かめるために」
「……フフ、そうだな」
ウェスカーは愉快そうに微笑むと、再び歩き出した。
ルシアは、妙な感覚を振り払うようにして、その背中を追った。
だが、心の奥で小さな疑念が生まれ始めていた。
──ウェスカーは、私のことをどこまで知っているのだろう?
その疑問に答えが出るのは、そう遠くない未来のことだった。