ポートマフィアの重力使いに十の贈り物

 薄い黎明に目が覚めた。掛け布団の隅、控えめに丸まった灰色の毛玉を撫でる。あんなにも拾ってくれと訴えていたのに、いざ家に入れれば申し訳なさそうに小さくなった。それがいじらしくて哀れに幼くて、温めた牛乳をそっと置いて、気になどしていないという風にシャワーを浴びた。電気を消して寝台に潜っても、猫はうろうろと所在なさげで、叱られた後の子供のように。
「来いよ。怒ったりしねぇから」
 それでもやはり頭を垂れて、お邪魔します、と眠りについた。
 すうすうと立てる寝息があまりに繊細で、柔らかすぎる身体が脆くて、蝶の標本でも作っているみたいだ。しかし、守ってやらなければ、とは思わなかった。あの時合わせた眼は、ちゃんと強かったから。
「手前は、きっと生きられる」
 今は弱くとも、もしも辛くとも、大丈夫、正解なんてないのだから。その眼があれば、美しい覚悟があれば。
 この言葉を、誰かに贈ったのは初めてかもしれない。自分にも言い聞かせるように、俺とは違う、ぬくもりの夢を見る生命へ。
「──生きろ」
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