ポートマフィアの重力使いに十の贈り物

 人間は、神に救いを求めたり、祈ったりする。無神論者を自称する人も、仏を信仰している人も、知らず、超自然的で強大な何か──人はそれを神と呼ぶ──に縋る。それで心を軽くしたり、現実から逃げ出したり、そうやって地獄紛いのこの世を少しだけ生きやすくしている。つまり、その願いが叶わなくとも、願うという行為それそのものが救いの代替。
 ならば、人間の都合のみで人間の世界に放り込まれ、しかし人間のように祈る対象を持たぬかみさまは、如何して救われるのだろう?そんな問に答を探すのは、中也には不毛なことだ。
 譬えば街中で、小さい子供が手を離した風船を捕まえてやる。その少女が流すはずだった淚が何処かへ消えて、太陽のような笑顔に変わる。
 或いは、気紛れで育て始めた名も無い植物が花を咲かす。小さく、香りもないけれど、それでも懸命に咲いている。
 きっとそれだけで、神に祈る必要もなく、救い足り得るのだと中也は知っている。けれどもし云うのであれば、彼にとっての神は──
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