140字SS

《お題bot*(@0daib0t)》
【トワイライト症候群@お題bot(@twilight_Sx)】
〔お題bot(@odai_bot00)〕


★乱与
ねェ名探偵さん、妾のこれが何なのか、アンタなら判るンじゃないのかい?夜の帳のその裏の息の詰まった鯨が見えるようだよ。そいつが妾を見つめ返して、憐憫と羨望を謳うのさ。瞳の中には千の星、萬の蝋燭。淡く揺れる朱。甘い菓子でも喉に引っかかったような。ねェ名探偵さん、これは一体何なンだい?
《恋を知らない蝶々》


☆ホーミチェ
神様、アタシ、貴方のこと、嫌いよ。彼がアタシを見てくれないのも、紅い尊い彼の伎も、聖書を繰る彼の横顔も、皆々貴方の仕業。アタシは彼に、何もあげられないのに。彼はアタシに、貴方に向ける百分の一の愛も向けてくれないのに。見ているだけは同じなのに、この違いは何なのよ?彼より嫌いよ、神様
【その愛を、私にも注いでください】


★鏡銀
撫子の隣に咲くために、私はこんなに花なのだ。光と影の境なぞ、土の下ではただの譫。根と根を絡めて枯果つるまで、淡い恋歌を祈りませう。あなたにロミオは必要ない。私にロミオは必要ない。二輪の黒髪のジュリエット。演者はふたり、脚本はなし。結末は誰にも見せてあげない。夢と現のハニーエンド。
【ああ、ジュリエット。どうしてあなたは、女なの。 】

ほんと、仲良しだよね。級友の言葉に、曖昧な笑み。夕暮の図書室、誰も知らない秘密の花園。駄目だよ、なんて、拒む気なんかない癖に。白い肌、花の匂。私だけが知っている。紅唇をなぞる、柔く震える肩を抱く。伏せられた瞳。朝露を点したような。明日、晴れるみたい。橙の空に呟いて、接吻を落とした【制服が乱れた分だけ、私たちは親友になるのです】

私には兄だけだった。守りたいのも大切なのも。だけどあなたはただひとり、私の嫌われたくない人になった。あなたが遠くに行ったとき、幸あれと願えなかった。夢敗れて果敢なんで、戻ってくれば良いとさえ思った。今、あなたは幸せなはず。遥か光の中で微笑んで。なのに何故、あなたは私を祝福するの。
忘れることなどできなかった。黒曜石のその瞳。浮かぶ涙を揩わせて。私の名を転がした、鈴より細く朱い声。その隣で生きたいと、今更希んだ私は愚か?赦されずとも言祝ぎだけは、あなたの行く末への禱りだけは。私を忘れてくれても良いから。私に恋を教えてくれたあなただけの、今日この日を祝わせて。“銀ちゃん誕生日”

水鏡の檻のモノクロヲム、銀城の籠のコントラスト。空が藍くとも、森が蒼くとも、翼は二人を隠すもの。湖水に溶けた淚は甘く、あなたの呪を解かせはしない。歌も王子も奪ってあげる。その網膜に、耳朶に、脳裏に、この黒羽根を刻み込んで。悪魔もきっと驚くでしょう。オディールがオデットに恋なんて。【私はオディール。悪魔の、娘。】


☆敦鏡
瞼の向こうと地平の彼方、太陽はまだ見えないけれど。私が咲いていたこの場所に、高く東雲とトワイライト。私ひとりじゃ逃げられなかった、深い闇を切り裂いた。この手から零れ落ちた光が、私をすくう。あなたがくれた曙は、クリィムと苺、幸福の味。それでもあなたは、生まれてきたのが罪だと云うの。
〔生まれた命は間違いでしたか?〕

僕に太陽はまだ遠く、曙は長い。結局僕は独り善がり、赦に胸を焦がしただけ。君のそうぼうが眩しくて、遼遠に届く希望の打算。自分の意味さえひとのもの、所詮僕はサテライト。無縁なはずの温もりに、触れたら壊れそうな幸福に、泣きべそかいてる張子の虎。それでも君は、僕に生きてて良いよと云うの。
〔生まれてきて、よかったですか?〕


★中紅
名もない墓石の前、鮮やかな紅が揺れる。この墓の主を俺は知らないが、勝てないことだけは判っている。闇の花が焦がれたのは、光ではなく此奴だろう。此奴と共に生きるのが、彼女の希であったのだ。代替にすらなれないが、臆病者から抜け出そう。呼び止める声は情けなく震えて。初恋なんぞ消えちまえ。
〔無理矢理にだって奪おうとした〕


☆綾村
紫煙を燻らすシルエット、私はまた逃げてしまった。あの時の後悔を置き去りに。何時ぞやの影を踏み潰し。貴方の瞳の光まで、そのレンズは遮った。見栄と虚勢を知ってたくせに。何にも云ってくれない貴方はなんて狡い人、酷い人。そんなに我儘な貴方なら、私も我儘に追いかけよう。訣別はまだ許さない。
〔まだ行かないで、お願いだから〕


★芥樋
黒外套が翻る。彼の常闇にはまだ遠い。私の景色はまだ夕映えだと、いつか云われた憶えがある。未だ相容れぬ刻だけど、及ばぬわけではないのだと。嗚呼、慰めになど貶すまい。私のこの金色が、貴方の闇夜に光差す天満月となりますように。私のこの鮮紅が、貴方だけのアルストロメリアになりますように。
《叶えるための恋ではないけれど、どうか想いが届きますように》
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