Buona giornata Tea break!! LAGOON
「僕に何も説明しないつもりなんですか?」
少し苛立ったような、焦ったような。
とにかくあまり気分が優れないような声色で話しかけてきた少年は私の腕を強く掴んだ。
ブチャラティに連れられてやってきたリストランテにて、これから仕事を共にするチームのメンバーに2度目の自己紹介を終えたばかりの私を呼び出し問い詰める彼の眉はつりあがっている。
「もちろんするけど……あまり身のある話じゃあないわよ、ジョルノ」
ほんの数十分前、再会を果たした彼はーージョルノ・ジョバァーナは私からその言葉を聞くと腕に込めていた力を弛めた。話すように催促しているのだろう、彼のターコイズブルーはまだ刺すように鋭い。
観念したように目を細めた私は「組織に入団する動悸」となった先日の出来事ーーフィガロ殺害事件について包み隠さずジョルノに話した。勿論ブチャラティ達に敗北したことも交えて、だ。
「成り行き、情けない話だけれどこれが全ての答えかもね…… 」
「康一くんには話したのか?」
「まさか!話せると思う?」
私の呆れたような笑みに「それもそうだな」とジョルノが呟く。どうやら正直に話した甲斐があったようで彼が纏っていた「不機嫌なオーラ」はキレイさっぱりなくなっていた。やっぱりジョルノの怒った顔は少し怖い。
「私は……心細くなくていいなって思うけど」
「……は?」
「ジョルノが仲間だなんて頼りになって嬉しいな〜って言ってんのよ。褒めてるの!」
そんな彼にほっと息を着いた私が片方の目を瞑って明るい声でそう言えば呆気に取られた様子のジョルノが訝しげな声をあげる。そんな態度に肩透かしを食らい「信用ないな〜」と私が独り言てば「まあね」とやんわりと口許を緩めた彼が意地悪そうに嘯いた。
「僕も……名前が仲間でよかったと思っている」
聞きたいことは聞けたのだろう、こちらに背を向け歩き出したジョルノは不意に立ち止まるとぽつりと呟いた。その声色は優しく、柔らかくて私は思わず目を見張る。
「ジョルノ……!」
「でもやっぱり心配だな……きみはあまり機転が利く方じゃあなさそうだし。すぐ人に騙されるタイプだろ?」
そして、いつも通りの屈折した言葉にガックリと肩を落とした私は気持ちを180度切り替えてジョルノの隣に並ぶ。ゆっくりと話している時間は無いのだ。
早速ひと仕事ということで、私たちブチャラティチームはモロ・ベヴェレッロ港にて船を借りてカプリ島に向かう。機密事項なのだろうか、どんな任務の内容なのかはまだ知らされていない。
「なんてね……それでも頼りにしているんだ。きみは信用出来る……名前の素直な性格やスタンドはね」
リストランテの玄関扉を潜るほんの直前、柔らかな表情をうかべたジョルノから紡がれた言葉はドアベルの高らかな音にかき消されてすぐに消えてしまった。
それでもすぐ隣にいた私にはすべて聞こえていて。本当に心の底から嬉しくなった私はただ彼にだけ聞こえる声量で「グラッツェ」と囁いた。