フォークダンスを踊ろう
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突然だが僕とブローノ・ブチャラティは同居している。
だからお互い女は連れ込まないし、そもそもこんなクソ狭くてキタネー部屋には友人すら呼べなかった。
実を言うと僕もブチャラティもギャングだ。といっても一緒なのは管轄内だけでチームは違うし、顔を合わせるのも夜と朝だけ。
それなのに僕らは同居している……それはブチャラティが目に入れても痛くない程可愛らしかった頃からの縁があったからだ。
彼が自分のチームなんて持ってなかった頃、一緒に仕事することが多かった頃……僕は思わず声をかけた。それはちょうどブチャラティの父が死んだという時だったからだ。
年の割にしっかりしたヤツだとは前から思っていたが、その時のアイツはもっと冷静でクールな男だった。
ブチャラティは一緒に住もうと言った僕を拒絶するとさらに仕事にのめり込んでいった。
心の拠り所であった父が死に、自分の存在する場所は組織だと言い聞かせるように懸命に、命知らずの様に働くブチャラティはもちろんエネルギー切れでぶっ倒れちまった。
たまたま近くで仕事していた僕の迅速な尻拭いでブチャラティは組織から対したお咎めは喰らわなかった……ちなみに自分の仕事をほっぽってブチャラティの方へ行っちまった僕は盛大にお叱りを受けたがな。
そしてその時初めてアイツは僕に心を開いたんだ……そしてそれと同時に加減ってものを知った。それでも因縁のある麻薬に対してだけはすぐに熱くなるブチャラティを抑える為にと僕は再びアイツに同居を提案した。
すると今度こそブチャラティは首を縦に振ってくれた。それと同時に「お節介なヤローだ」と呆れたように笑ったのだった。
それから少しして、誰よりも仕事熱心で賢明そして応用の利くスタンド能力からブチャラティに白羽の矢が立ったーー彼は自分のチームを持つことになったのだ。
チーム結成のためにメンバーを探していたブチャラティはすぐに僕に話を持ちかけてきた。内容はやはりメンバーに入って欲しいとの事だった。
「ブチャラティ……オマエは僕に何を求めているんだ……? 」
「……オレはお前にチームに入ってもらって一緒にやっていきたいと……」
「上からチームを組め、と言われたんだぞ……学校でお友達とお弁当を食べるグループを作れってのとは違うんだ」
僕の返しにあからさまに不機嫌な表情を返したブチャラティは勢いよく机を叩くと「オレがそんな軽い気持ちでアンタに話を持ちかけていると思うのか? 」と叫ぶように言った。
「思うね! 思うから言ってやってるんだぜッブチャラティ! ……単刀直入に言わせてもらうが『スタンド能力のない』僕にオマエは何を求めているんだ? 」
辺りに沈黙が訪れる……ブチャラティは返す言葉がないのか黙りこけてしまった。
僕は自分が間違えたことを言ったとは一ミリだって思わなかった。
わざわざチームを組めと命令を受けているのだ……きっと厳しい任務だって任されることに違いない。その時にスタンドも使えないドベがいたら足を引っ張るのは目に見えている。
ギャングの世界では一瞬の油断や隙は命を失うことに容易く繋がるのだ。
「……ブチャラティなにもチームのメンバー探しを手伝わないとは言ってない……出来ることは手伝うぜ」
「ああ……助かる……その、すまなかった」
僕もブチャラティもタバコは吸わなかった。
だからか分からないが住んで数年経つ部屋の壁紙は全くもって真っ白だ。
ブチャラティには白が似合う……出会った時も白い服を着ていたような気がする。
「まずは……そうだなァ〜……リーダーになるわけだしよ、カッコイイ服とか買わね? 」
「……形から入るのか……お前らしいかもな」
突然だが僕とブローノ・ブチャラティは同居していた。
一人暮らしになったものだから当然女を連れ込んだ。部屋の掃除だって、数週間前にボスがイヤな知らせを持ってやって来るってもんだから急いで片付けた。
実を言うと僕はその後すぐにギャングをやめた。御歳二十代も半ばのゴロツキ上がりの僕を雇ってくれたのは屋台のジェラート屋っつー仕事だった。当然プライベートの時間なんて夜と朝だけだ。
だから僕は誰とも同居なんてしていない……目に入れても痛くない程の相手なんていないからだ。
住み始めてからもう十数年経つ部屋の壁紙はここ数週間で黄色く変色してしまった。
僕にはどんな色が似合うだろう……彼と初めて出会った時、彼の瞳にはどんな風に僕は映っていたのだろう。
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