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chapter1. MEGALOPOLIS PATROL

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暴風注意報!!
燃ゆる朝焼けハートオブ・ザ・サンライズ


 気づいた時には走り出していた。この男を殺さなくてはならないと使命感まで覚えていた。
 ポケットから取り出したナイフで相手の土手っ腹目掛けて飛び込むアゲハに対し、冷静な男はスタンドによる突風で彼女をはじき飛ばした。

「オイオイオイ……なあにプッツンしてンだよ? お前、知ってたんじゃあないのか」

 呆れたような顔をした男は、アゲハががむしゃらにナイフを振り回したせいで傷がついた右太ももを冷たい目で見つめる。
対して吹き飛ばされたアゲハの身体は傷だらけとなり、今にも倒れそうだ。

「馬鹿みたいに突っ込んでくるなんて、所詮は温室育ちの子供だな。そんだけ暴れて負わせた傷はたったの一箇所……それに対してお前の身体は何百箇所もの傷が出来ちまってんだぜッ」

 心底人を小馬鹿にするように唇を歪める男はどこか上品な動作で髪をかきあげる。
アゲハはその動作に既視感を覚えつつも、自身の状況を冷静に振り返っていく。

「そうだね……貴方の言っていることは正しい。だけど優勢なのは本当に貴方なのかな 」

「なんだってェ? 下らねー事言ってんじゃあねェだろうな」

「弾丸を創り出すスタンド使い相手に銃を使えない状態をつくるっていうのは正直驚いた……いい作戦だと思う。周りの人もちゃっかり警察を呼ばせてから殺したんだよね?」

 絶体絶命の状況下で、淡々と言葉を紡ぐアゲハにだんだんと不機嫌になる男。遠くからパトカーの音が聞こえる。アゲハにもう時間が無いのは明らかだ。

「だけど、私のスタンド能力の恐ろしさに気づけなかったあなたの負けだよ!あなたはもう術中にハマっているんだ!」

 アゲハが右手に持ったナイフを投げ捨てると手の中には創り出した銅色の弾丸だけが残った。
それを自身の右太ももに押し込んでいくーーそう、その患部はすでに彼のスタンドにより傷つけられていた場所だ。

「第一の弾丸“二人きりの遺跡探索 アローンウィズ・メガロポリス”ッ! ……あなたは絶対にこの私が殺るッ」

「なんだとッ!いつ……!?オレにそんな隙は無かった筈」

「私のスタンドは相手の体内に入り込む事で能力を発揮するものッ 普段は銃本体のパワーを使い皮膚を破壊し入り込むのをナイフの切り傷から挿入したってだけの事よ」

 がむしゃらにナイフで男に斬りかかったその時、すでに創り出していたアローンウィズ・メガロポリスの弾丸はアゲハの人差し指と中指の間に挟みこまれていた。そして切りつけたと同時に傷口に投げ込むことで見事策にはめることが出来たのだ。
 話をしているうちに切り替わった二人きりの空間に男は気づていないのか
「クソッ!クソッ!」とうわ言のように叫ぶ。

「……よければあなたの名前を教えて欲しいな」

 細心の注意を払いながら実弾を装填するアゲハがほんの数メートルの距離で激しく頭を掻き毟る男に視線を向けながら問う。アゲハの声に反応して顔をあげた男の銀色の目は鋭くつり上がっていた。

「……ミスルトー、「ハバロフ・J・ミスルトー」言っておくけどDIO様の雇った刺客たちにオレの事を聞いたって無駄だぜ」

 意外とすんなり名前を答えた男ーーミスルトーにアゲハは目を丸くする。しかしそれ以上に後に続く言葉に引っかかった。

「オレは刺客でもDIO様の手下でもなんでもない……オレの親父がDIO様の友人でさ、オレはその親父の手伝い 」

 だからタロットカードの暗示のスタンド使い共はオレ達のことなんて知らないだろうなーーというミスルトーにアゲハは肩を落とす。

「そう……ならもういいよ、あなたはもう用済み」

 銃口をミスルトーに向ける。そこでようやく彼はここがメガロポリス・パトロールの世界内に閉じ込められていることに気づいた様だ。

「シャープ・ディスタンスッ!アイツを切り刻め!」

「無駄なことを! もうあなたは殺される他道はないのッ」

 アゲハは叫ぶと同時に五発の弾丸を発砲する。対するミスルトーのスタンドは先程とは違い真空波ではなくただのそよ風だ。
 当然全ての弾丸が命中したミスルトーは地面に身を沈める。銃創から流れ出る鮮血が彼の褐色の肌を伝った。

「あなたのお父さんについて教えてくれさえすれば……命まで取らないであげてもいいけど」

身を伏せたミスルトーを冷たい目で見下ろしたアゲハがうそぶく。切れ長の瞳を痛みから歪めた彼は「……このッ悪魔がッ」と呟いた。
 そんなミスルトーの髪を掴んで、倒れていた身体を座らせると口内に銃口を突っ込み引き金に指をかける。

「私が悪魔だろうが天使だろうが関係ないの……話してくれるかくれないか、今はそういう話をしているんだよ」

「……ッ」

「三秒以内……それ以内に答えなければ撃つ」

 汗をかくミスルトー。その間もカウントは進んでいく。
 あと一秒ーー、その時だった視界の端で先程まで空を舞っていたハートが動き出したのだ。
動いた方向、つまり後ろに振り返ると薔薇の木 に向かってハートが集まっていく。そしてそれに相対するザワザワと薔薇の花達が擦れ合う音が酷く大きくなる。

「油断したな……アゲハッ」

 突然とてつもない暴風がアゲハの背中を押す。それと同時にミスルトーも自身の口から銃口を外した。

「逃がさないぞ……ッミスルトー!」

 アゲハはそれでもと発砲するが、物凄い暴風の中、照準がブレてしまいあられもない方向へと飛んでいく銃弾。

「お前のスタンドは『スタンドの破壊力をゼロにする』だけでスタンド能力自体は使えるってワケだな」

「殺してやる……!あなたも、あなたの父親も!」

「今日の所は引いてやるぜ。でもわすれるんじゃねー……お前の家族はもういないんだぜ」

 ミスルトーは再び大きな風を起こすとそのまま風にさらわれて行ってしまった。
 一人その場に取り残されたアゲハはこの消化不良な気持ちを抑えきれず、思わず握りこぶしを地面に叩きつけた。



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 アローンウィズ・メガロポリスの効力が切れ、目を覚ましたアゲハは病院にいた。あの時野次馬が連絡した警察が彼女を運んでくれたようだった。

(特に身体に異常は無いみたい。顔に大きな傷はあるけど……)

 アゲハは早速ベッドから立ち上がり近くに置いてあった自身のスーツケースを開ける。病衣を脱ぎ、中に入っていたセーラー服に着替えたのだ。

(一応卒業旅行って名目だったから持ってきてたけど……なんか変な感じ)

 居心地悪そうに苦笑いを浮かべたアゲハが包帯に巻かれた指でカーディガンのボタンを一つづつ掛けていく。
その時だった、カーディガンの右手ポケットに少しだけ重みを感じたアゲハは中身を探るーー潜んでいたのはあの日ハーンハリーリで買ったネックレスだった。細い金色のチェーンがお洒落で魅力的だったのを覚えている。
 アゲハは早速ネックレスを身につけてみる。そして慎重に頬に貼られていたガーゼを外してみた。まだ完全に傷は治りきっていないようでえぐれた頬の肉を見てあの時の痛みを思い出す。

(あ……髪の毛が切れてる)

 そして、鏡に映る自分の姿を見てアゲハはハッとした。ミスルトーの真空波で無造作に切り裂かれていたらしい自身の髪はなんともみすぼらしく変わり果てていた。
 だが、アゲハの負傷がこの程度で済んだのは何を隠そう命を賭してまで彼女を守り抜いてくれた財団職員たちのお陰だ。それを理解しているアゲハはひどく顔を歪める。

「……ありがとうございました。本当に、ありがとう……」

 裂傷によりじんと痛む頬に手を添えて、真っ直ぐな切り揃えられてしまった自身の黒髪を見つめたアゲハは呟く。彼らの為にも、私は生きてジョースターさん達と共にDIOを討たなければならない……!

 決意を新たにしたアゲハは早速スーツケースから個人情報の書かれているものを抜き取ると必要最低限のもの以外はトイレに流してしまった。
 自分は今、空港での事件の重要参考人にされているか最悪の場合犯人にされている可能性がある。恐らくスーツケースの中は既に見られているだろうがここに置いて行くのもしのびない。

「よし、準備完了!早くジョースターさん達に合流しなくては……!」

 身を乗り出し窓の外を見れば、この病室は丁度大きな道路からは見えない部屋のようだった。二階だが下に偶然にもトラックが止まっている。エンジンも止まっているし人も居ないだろう……ギリギリ飛び降りられそうだ。



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 なんとか病院から逃げ出したアゲハは道中現地の人に話を聴きながら例の空港へ向かう。
やはりと言うべきか空港自体は閉鎖されており近づけるような状態ではなかった。

(ン……?あの帽子見覚えがあるな)

 空港までSPW財団職員が運転してきた車を探していると不意に一人の男と目が合う。車輪のマーク……見覚えがある、あれはSPW財団の帽子だ。

「……SPW財団の方ですよね? 私、アゲハです」

 こちらに振り向いたSPW財団の男はアゲハの全身に渡る裂傷に目を見開いた後、自身の被っていた帽子を被せると
「君は今警察に追われている。顔を隠すように」と声を潜めた。財団員の言葉に深く頷いたアゲハが車に乗り込むと直ぐに車は動き出した。

「シンガポールから出るぞ」

「……はい」

 車につまれていたタオルケットを被る。となりのシートには亡くなった職員の私物であろうラジカセからラジオが流れている。

「これからどうするか聞いても? 」

「……我々は君を日本へ送り届けることが任務なのだ。隣国であるマレーシアまで行き、そこから飛行機に乗ってもらう」

 アゲハは頭の中で地図を拡げる。確かシンガポールを北に進むとマレーシアがあってその隣にはタイがあっただろうか。

「あの……」

「言ってみなさい」

「行き先を変更してください、日本に帰る必要が無くなったんです……一刻も早くジョースターさん達に合流しなければならないんです」

 職員とアゲハの間に沈黙が流れる。アゲハは彼の次の言葉を待つ間バックミラー越しに見える彼のブルーの瞳をじっと見つめた。

「……こちらからジョースターさんに伝えておこう」

「ありがとうございます!……貴方はマレーシアまで送ってくださるだけで構いません。もう無関係なSPW財団の方が犠牲になるのは見たくないですから」

 運転席に座る男の目がアゲハの隣にあるラジカセに移る。そして彼は目を細め「……そうかい」とどこか嬉しそうに呟いた。
 彼が今何を考えているのか、アゲハには分からなかったがとにかく今は気持ちの整理をつけなければならない。アゲハは気を引き締めるようにセーラー服のリボンをキュッと締めた。

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