07.恋人ごっこ2
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「つ、疲れた…」
席へ着くなり、私は力尽きたようにテーブルへ突っ伏した。
まだケーキを一口も食べていないというのに、すでに今日一日分の気力と体力を使い果たした気分だ。
学校からここまで全力で走らされ、店先では恋人繋ぎ。
おまけに、イケメンと十秒間も見つめ合うという過酷な試練まで乗り越えた。
限定ケーキを食べるだけなのに、どうしてここまで心身を削られなくてはならないのだろう。
「何へばってんだよ。まだ何も食ってねぇぞ」
向かいに座ったブン太くんは、疲れた様子など微塵も見せず、早くもメニューを広げて目を輝かせている。
「君のその元気、一体どこから湧いてくるの…」
「ケーキ」
「愚問でした」
迷いのない即答だった。
私も重たい頭を持ち上げ、ブン太くんが広げているメニューを覗き込む。
チラシにも載っていた色とりどりの可愛らしいケーキたち。
中でもやっぱり目を引くのは…。
そんな私の気持ちを察してか、ブン太くんはさっとページをめくる。
すると、見開きいっぱいに掲載された限定メニューが目に飛び込んできた。
それは、とても大きなハート型のケーキ。
右半分は、真っ白な生クリームと艶やかな苺で彩られたショートケーキ。
左半分は、濃厚そうなチョコレートクリームに、砕いたナッツと小さなマカロンが飾られている。
その周りには、色とりどりのベリーと二種類のアイスクリーム。
さらには、ハート型のクッキーまで添えられていた。
「…………」
思わず息を呑む。
先ほどまでテーブルに沈んでいた上半身が、勢いよく起き上がる。
全身を支配していた疲労が、ものすごい勢いで消えていった。
「か、可愛い…!」
「だろ!?」
ブン太くんも興奮したように身を乗り出した。
「見て!この苺、間違いなくおいしいやつ!」
「こっちのチョコも絶対濃いやつだぜ!」
「マカロンまでついてるよ!」
「アイスも二種類選べるって書いてあんぞ!」
「天国か、ここは!」
先ほどまでの瀕死状態はどこへやら。
私たちはテーブルの中央へ頭を寄せ合い、夢中になってメニューを眺める。
大はしゃぎしている私たちを、店内の他のお客さんたちが微笑ましそうに見てくる。
だが、今はそんなことどうでもいいのだ。
「アイスは苺とバニラで決まりな」
「えっ、チョコも捨てがたいよ」
「ケーキにチョコついてんだから、アイスは違う味のほうがいいだろ」
「なるほど。一理ある」
「だろい?」
ブン太くんが得意そうに笑う。
悔しいが、甘いものに関しては彼の意見を聞いておいて間違いはない。
「じゃあ苺とバニラで」
「決まりな」
「飲み物は?」
「俺、紅茶」
「私も」
「ミルクティー?」
「いや、ストレートで。ケーキの甘さを邪魔したくない」
「分かってんじゃん」
「ふふん。私を誰だと思っている」
腕を組み、得意げに顎を上げる私に、ブン太くんはにやりと口角を上げた。
「さっき店の前で死にかけてたやつ」
「急に余計な記憶を取り戻すな」
私たちが言い争っていると、注文を取りに来た店員さんまでもが、微笑ましそうにこちらを眺めていた。
「とても仲がよろしいんですね」
「いや、それほどでも」
「普通だろい」
声が重なる。
店員さんはますます嬉しそうに頬を緩めた。
だから、どこを見て仲良し判定しているんだ。
「こちらの限定セットでよろしいですか?」
「はい!」
「アイスは苺とバニラで!」
再び、ケーキへの熱意によって声が重なった。
店員さんが注文票へ書き込みながら、にこりと微笑む。
「ありがとうございます。それでは少々お待ちください」
店員さんは一度踵を返しかけ――。
「あ、そうでした」
何かを思い出したように振り返った。
「こちらの『ラブラブスイートセット』をご注文のお客様には、サービスがございます」
「サービス?」
ブン太くんが目を輝かせる。
まさかケーキのおかわり!?
そんな淡い期待を抱いた私とは裏腹に、店員さんは満面の笑みで続けた。
「はい、ケーキとご一緒にお二人のお写真をお撮りします!」
「記念にぜひ!」と進める店員さんの手にはすでにカメラが握られていた。
拒否権は、ないのか…?
そろりとブン太くんの方に目をやると、さっさと撮ってさっさと食うぞ。と顔に書いていた。
はい、私に拒否権などないみたいですね…。
「わ、わかりました…」
げんなりしながらそう呟くと、店員さんはウキウキしたように少々お待ちくださーい!と店の奥へと消えていった。
席へ着くなり、私は力尽きたようにテーブルへ突っ伏した。
まだケーキを一口も食べていないというのに、すでに今日一日分の気力と体力を使い果たした気分だ。
学校からここまで全力で走らされ、店先では恋人繋ぎ。
おまけに、イケメンと十秒間も見つめ合うという過酷な試練まで乗り越えた。
限定ケーキを食べるだけなのに、どうしてここまで心身を削られなくてはならないのだろう。
「何へばってんだよ。まだ何も食ってねぇぞ」
向かいに座ったブン太くんは、疲れた様子など微塵も見せず、早くもメニューを広げて目を輝かせている。
「君のその元気、一体どこから湧いてくるの…」
「ケーキ」
「愚問でした」
迷いのない即答だった。
私も重たい頭を持ち上げ、ブン太くんが広げているメニューを覗き込む。
チラシにも載っていた色とりどりの可愛らしいケーキたち。
中でもやっぱり目を引くのは…。
そんな私の気持ちを察してか、ブン太くんはさっとページをめくる。
すると、見開きいっぱいに掲載された限定メニューが目に飛び込んできた。
それは、とても大きなハート型のケーキ。
右半分は、真っ白な生クリームと艶やかな苺で彩られたショートケーキ。
左半分は、濃厚そうなチョコレートクリームに、砕いたナッツと小さなマカロンが飾られている。
その周りには、色とりどりのベリーと二種類のアイスクリーム。
さらには、ハート型のクッキーまで添えられていた。
「…………」
思わず息を呑む。
先ほどまでテーブルに沈んでいた上半身が、勢いよく起き上がる。
全身を支配していた疲労が、ものすごい勢いで消えていった。
「か、可愛い…!」
「だろ!?」
ブン太くんも興奮したように身を乗り出した。
「見て!この苺、間違いなくおいしいやつ!」
「こっちのチョコも絶対濃いやつだぜ!」
「マカロンまでついてるよ!」
「アイスも二種類選べるって書いてあんぞ!」
「天国か、ここは!」
先ほどまでの瀕死状態はどこへやら。
私たちはテーブルの中央へ頭を寄せ合い、夢中になってメニューを眺める。
大はしゃぎしている私たちを、店内の他のお客さんたちが微笑ましそうに見てくる。
だが、今はそんなことどうでもいいのだ。
「アイスは苺とバニラで決まりな」
「えっ、チョコも捨てがたいよ」
「ケーキにチョコついてんだから、アイスは違う味のほうがいいだろ」
「なるほど。一理ある」
「だろい?」
ブン太くんが得意そうに笑う。
悔しいが、甘いものに関しては彼の意見を聞いておいて間違いはない。
「じゃあ苺とバニラで」
「決まりな」
「飲み物は?」
「俺、紅茶」
「私も」
「ミルクティー?」
「いや、ストレートで。ケーキの甘さを邪魔したくない」
「分かってんじゃん」
「ふふん。私を誰だと思っている」
腕を組み、得意げに顎を上げる私に、ブン太くんはにやりと口角を上げた。
「さっき店の前で死にかけてたやつ」
「急に余計な記憶を取り戻すな」
私たちが言い争っていると、注文を取りに来た店員さんまでもが、微笑ましそうにこちらを眺めていた。
「とても仲がよろしいんですね」
「いや、それほどでも」
「普通だろい」
声が重なる。
店員さんはますます嬉しそうに頬を緩めた。
だから、どこを見て仲良し判定しているんだ。
「こちらの限定セットでよろしいですか?」
「はい!」
「アイスは苺とバニラで!」
再び、ケーキへの熱意によって声が重なった。
店員さんが注文票へ書き込みながら、にこりと微笑む。
「ありがとうございます。それでは少々お待ちください」
店員さんは一度踵を返しかけ――。
「あ、そうでした」
何かを思い出したように振り返った。
「こちらの『ラブラブスイートセット』をご注文のお客様には、サービスがございます」
「サービス?」
ブン太くんが目を輝かせる。
まさかケーキのおかわり!?
そんな淡い期待を抱いた私とは裏腹に、店員さんは満面の笑みで続けた。
「はい、ケーキとご一緒にお二人のお写真をお撮りします!」
「記念にぜひ!」と進める店員さんの手にはすでにカメラが握られていた。
拒否権は、ないのか…?
そろりとブン太くんの方に目をやると、さっさと撮ってさっさと食うぞ。と顔に書いていた。
はい、私に拒否権などないみたいですね…。
「わ、わかりました…」
げんなりしながらそう呟くと、店員さんはウキウキしたように少々お待ちくださーい!と店の奥へと消えていった。
