04.ザ・普通の女
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丸井ブン太side
そいつは、かなりの変わり者だった。
仁王雅治。
あいつは、何を考えているのかいまいち掴めない。
あまり人と関わることを好まない、野良猫みたいな奴だった。
話しかければ返事はする。
けど、自分から話しかけることはほとんどない。
誰かが面白い話をしていても、輪の外からつまらなそうに眺めているだけ。
たまに笑ったかと思えば、目はまるで笑っていなかった。
部活の連中とも、必要なこと以外はほとんど話さない。
先輩に褒められても嬉しそうにはしないし、誰かに勝っても誇らしげにするわけでもない。
かといって、負けて悔しがる姿も見せない。
何をしていても、どこか他人事。
周りに人がいても、一人だけ別の場所にいるような奴だった。
だから最初は、なんでこんな奴が、この強豪と呼ばれているテニス部に所属しているのか理解できなかった。
スポーツで汗を流すなんて、柄じゃないだろう。
まあ、ただの気まぐれかもしれないし、そのうち辞めんだろ。
そう考えていた。
しかし、奴は辞めなかった。
それどころか、皆が驚くほどの速さでテニスの腕を上達させていった。
二年の春、突然髪を銀色にしてきたときでさえ、コートに立てば誰も強く文句を言えなかった。
相変わらず、誰に対しても興味がなさそうだった。
――たった一人を除いて。
そいつは、苗字名前という名前の、同じクラスの女子テニス部員だった。
仁王がそいつと親しくしていると知ったのは、二年になってしばらく経った頃だった。
黒髪のショートボブで、中肉中背。テストの成績だって平均的。
顔だって飛び切り美人ってわけでもない。
どこにでもいる女子中学生。
そんなザ・普通の奴の何が、あの仁王の興味を引いたのか。
俺は、少しだけ気になった。
だからといって、すぐに話しかけたわけじゃない。
しばらくは、遠くから様子を見ていた。
友達とくだらない話をして笑ったり。
授業中に当てられて、分からない問題を堂々と勘で答えたり。
昼休みには、女子にしてはやけにでかい弁当箱を机いっぱいに広げたり。
見れば見るほど、普通だった。
いや、弁当箱の大きさだけは普通じゃなかったけどよ。
仁王がそいつに話しかければ、面倒くさそうな顔をする。
ちょっかいを出されれば怒るし、物を取られれば容赦なく取り返す。
特別優しくするわけでもない。
仁王の機嫌を窺うこともない。
それなのに、仁王は何度追い払われても、懲りずにそいつのところへ行った。
ますます分からない。
だから、直接確かめてみることにした。
「よっす、お前んとこのクラス前の時間数学だっただろい?小テストあったか?」
仁王のクラスへと赴き、机に腰掛けながら、俺はさりげなく隣へ視線を向けた。
仁王の視線も、きっと同じ方を向いているに違いない。
俺たちに見られているなんて微塵も気付いていないであろうそいつは、ぽけーっと口を開けてどこか一点を見つめていた。
「フッ…」
隣から、小さな笑い声が聞こえた。
横目で見ると、仁王が珍しく楽しそうに笑っている。
そのとき初めて思った。
なるほど。
こいつは、仁王にとって退屈じゃないらしい。
そいつは、かなりの変わり者だった。
仁王雅治。
あいつは、何を考えているのかいまいち掴めない。
あまり人と関わることを好まない、野良猫みたいな奴だった。
話しかければ返事はする。
けど、自分から話しかけることはほとんどない。
誰かが面白い話をしていても、輪の外からつまらなそうに眺めているだけ。
たまに笑ったかと思えば、目はまるで笑っていなかった。
部活の連中とも、必要なこと以外はほとんど話さない。
先輩に褒められても嬉しそうにはしないし、誰かに勝っても誇らしげにするわけでもない。
かといって、負けて悔しがる姿も見せない。
何をしていても、どこか他人事。
周りに人がいても、一人だけ別の場所にいるような奴だった。
だから最初は、なんでこんな奴が、この強豪と呼ばれているテニス部に所属しているのか理解できなかった。
スポーツで汗を流すなんて、柄じゃないだろう。
まあ、ただの気まぐれかもしれないし、そのうち辞めんだろ。
そう考えていた。
しかし、奴は辞めなかった。
それどころか、皆が驚くほどの速さでテニスの腕を上達させていった。
二年の春、突然髪を銀色にしてきたときでさえ、コートに立てば誰も強く文句を言えなかった。
相変わらず、誰に対しても興味がなさそうだった。
――たった一人を除いて。
そいつは、苗字名前という名前の、同じクラスの女子テニス部員だった。
仁王がそいつと親しくしていると知ったのは、二年になってしばらく経った頃だった。
黒髪のショートボブで、中肉中背。テストの成績だって平均的。
顔だって飛び切り美人ってわけでもない。
どこにでもいる女子中学生。
そんなザ・普通の奴の何が、あの仁王の興味を引いたのか。
俺は、少しだけ気になった。
だからといって、すぐに話しかけたわけじゃない。
しばらくは、遠くから様子を見ていた。
友達とくだらない話をして笑ったり。
授業中に当てられて、分からない問題を堂々と勘で答えたり。
昼休みには、女子にしてはやけにでかい弁当箱を机いっぱいに広げたり。
見れば見るほど、普通だった。
いや、弁当箱の大きさだけは普通じゃなかったけどよ。
仁王がそいつに話しかければ、面倒くさそうな顔をする。
ちょっかいを出されれば怒るし、物を取られれば容赦なく取り返す。
特別優しくするわけでもない。
仁王の機嫌を窺うこともない。
それなのに、仁王は何度追い払われても、懲りずにそいつのところへ行った。
ますます分からない。
だから、直接確かめてみることにした。
「よっす、お前んとこのクラス前の時間数学だっただろい?小テストあったか?」
仁王のクラスへと赴き、机に腰掛けながら、俺はさりげなく隣へ視線を向けた。
仁王の視線も、きっと同じ方を向いているに違いない。
俺たちに見られているなんて微塵も気付いていないであろうそいつは、ぽけーっと口を開けてどこか一点を見つめていた。
「フッ…」
隣から、小さな笑い声が聞こえた。
横目で見ると、仁王が珍しく楽しそうに笑っている。
そのとき初めて思った。
なるほど。
こいつは、仁王にとって退屈じゃないらしい。
