03.唐揚げウォーズ
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時間はあっという間に過ぎて、昼休み。
椿は委員会の仕事があると言って早々に教室を去ってしまった。
仕方ない。今日は一人でお弁当を食べることにしよう。
いそいそとカバンからチェック柄の包みを取り出す。
それを開けると、出てきたものは小さくてかわいらしいお弁当箱…。
ではない!
どどん。と効果音が付きそうなほどそれはそれは大きなお弁当箱だ。
何を隠そうこれは、1000mlも入る優れモノなのだ!!
見た目はステンレスの武骨なデザインで男子運動部員を彷彿とさせるが、これはれっきとした私のものである。
サイドの留め具を外し、ふたを外すと…。
ごくり。
思わず生唾を飲んでしまうほど素晴らしい光景が広がっていた。
見よ、白く光り輝くこのお米を。
黄色く滑らかな肌をした、分厚い卵焼きを。
そしてなんといってもこの箱内のメインメンバーでもある唐揚げ!
下味にショウガ醤油を使用しているため、冷めてもおいしいのだ。
私はよだれが垂れないよう気を付けながら箸を取り出し、手を合わせる。
まずはどれから食べようかな~。
そこで、お弁当の一番目立つところに鎮座している真っ赤なトマトと目が合う。
鮮やかで食べてほしいと言わんばかりに光り輝いていた。
「ではまず君から…いただきまー」
つぶやきながらトマトに箸を伸ばそうとしていたその時だった。
「うお、すっげーうまそう!」
そう、すぐ横から声がした。
驚いて声のする方に顔を向けると、すぐ横にこのトマトの様に赤い髪をした男子が立っていた。
私は思わず体を固くする。
彼は私と同じクラス、且つ仁王と同じ男子テニス部のレギュラーメンバーでもある丸井くんだ。
男女問わず友達が多いようで一人で居るところはあまり見かけない。
そんな彼とは挨拶はすれど、会話らしい会話を新学期が始まってからしたことはなかった。
なのに、なぜか今、突然話しかけられたのだ。
いつも以上に近い距離に思わず緊張してしまう。
仁王が湿度の高い美形なら、丸井くんは太陽の下が似合う美形だ。
大きな瞳に、屈託のない笑顔。
見た目だけなら可愛らしい部類なのに、不思議と男らしさもある。
つまり、何が言いたいかというと。
近くで見ると、非常に顔がいい。
「なぁ、それ一つくれよ」
その言葉に抜けていた意識を戻す。
彼の指さす先には、唐揚げが。
ま、まぁたくさんあるからいいけどさ…。
「どうぞ…」
と弁当箱を彼の近くに差し出すと、「サンキュー」と言いながら唐揚げを摘み上げ、ヒョイと口へ放り込んだ。
「…なんだこれ…」
「え…どうしました?まさか、お口に合いませんでしたか…?」
不安になり俯く彼の顔を覗き見る。
すると…
「すっっっっっっっげーーーーうまい!!!!」
きらきらした目をさらに輝かせ私に向き直る丸井くん。
よ、よかった。どうやらお口には合ったらしい。
ほっと胸を撫で下ろしていると、彼は不思議そうに首を傾げた。
「つーか、なんでそんなかしこまってんだ?」
「え?」
「同じクラスなんだから、普通に喋ればいいじゃん」
普通にと言われましても。
こちらは先ほどからあなたのパーフェクトフェイスに耐えるので精いっぱいなのですが。
「あと、丸井くんじゃなくてブン太でいいぜ」
「距離の縮まり方が急では!?」
恐ろしい、恐ろしいぜ男テニの太陽こと丸井ブン太…。
「いいじゃん。俺、丸井くんって呼ばれるの慣れてねーし」
「じゃあ、丸井さんで…」
「なんで逆に遠ざかんだよ」
おぉ…イケメンはツッコミもできるのか…。
私のズレた発言にも怯まず反応してくれる。
貴重な人材だ。
協議の結果、呼び方は折衷案でブン太くんに決定した。
「これ、お前が作ったのか?」
再び、ブン太くんがお弁当を指さす。
「そうだけど」
「マジで!? この唐揚げも?」
「下味から私が仕込みました」
「じゃあ明日も入れてきてくれよ!」
「私のお昼ごはんなんですけど!?」
さも当然のような顔をしておられますけれども!?
作るのも私なんですからね!?さっき言いましたよね!?
唐揚げなんて手間も時間もかかるものを毎日作ってられるかってんだぃ!
心の中で悪態をつき続ける私をよそに、ブン太くんはまだ、まじまじとお弁当を見つめていた。
「つーか、これ全部一人で食うのかよ、名前」
「…………え?」
そう言われた瞬間、時が止まった。
思わず腑抜けた声を出してしまう。
なんで…なんで…
「なんだよ」
「なんで私の名前を知ってるの!?」
「クラスメイトだろい」
「クラスメイトの名前を把握している……だと……?」
「お前、俺をなんだと思ってんだよ」
だって、君、クラスの中心人物だよね。
そんな人が、挨拶程度しか交わしたことのない私の名前まで覚えているなんて誰が思うだろう。
「いや、でもこれ、でかすぎだろ。男子テニス部でもそんなの持ってきてる奴いねーぞ」
「失礼な。たったの1000mlなんですけど!?」
「“たった”の基準がおかしいだろい」
おかしそうに肩を揺らしながら笑うブン太くん。
だって、普通のサイズじゃお腹空いちゃうんだもの。
一般的な女子が使ってる大きさじゃ私のおやつにもならないね!
何がおかしいんだと首を傾げる私を見て、ブン太くんはますます楽しそうに笑った。
その様子を見て、私もつい、顔が緩んでしまう。
椿は委員会の仕事があると言って早々に教室を去ってしまった。
仕方ない。今日は一人でお弁当を食べることにしよう。
いそいそとカバンからチェック柄の包みを取り出す。
それを開けると、出てきたものは小さくてかわいらしいお弁当箱…。
ではない!
どどん。と効果音が付きそうなほどそれはそれは大きなお弁当箱だ。
何を隠そうこれは、1000mlも入る優れモノなのだ!!
見た目はステンレスの武骨なデザインで男子運動部員を彷彿とさせるが、これはれっきとした私のものである。
サイドの留め具を外し、ふたを外すと…。
ごくり。
思わず生唾を飲んでしまうほど素晴らしい光景が広がっていた。
見よ、白く光り輝くこのお米を。
黄色く滑らかな肌をした、分厚い卵焼きを。
そしてなんといってもこの箱内のメインメンバーでもある唐揚げ!
下味にショウガ醤油を使用しているため、冷めてもおいしいのだ。
私はよだれが垂れないよう気を付けながら箸を取り出し、手を合わせる。
まずはどれから食べようかな~。
そこで、お弁当の一番目立つところに鎮座している真っ赤なトマトと目が合う。
鮮やかで食べてほしいと言わんばかりに光り輝いていた。
「ではまず君から…いただきまー」
つぶやきながらトマトに箸を伸ばそうとしていたその時だった。
「うお、すっげーうまそう!」
そう、すぐ横から声がした。
驚いて声のする方に顔を向けると、すぐ横にこのトマトの様に赤い髪をした男子が立っていた。
私は思わず体を固くする。
彼は私と同じクラス、且つ仁王と同じ男子テニス部のレギュラーメンバーでもある丸井くんだ。
男女問わず友達が多いようで一人で居るところはあまり見かけない。
そんな彼とは挨拶はすれど、会話らしい会話を新学期が始まってからしたことはなかった。
なのに、なぜか今、突然話しかけられたのだ。
いつも以上に近い距離に思わず緊張してしまう。
仁王が湿度の高い美形なら、丸井くんは太陽の下が似合う美形だ。
大きな瞳に、屈託のない笑顔。
見た目だけなら可愛らしい部類なのに、不思議と男らしさもある。
つまり、何が言いたいかというと。
近くで見ると、非常に顔がいい。
「なぁ、それ一つくれよ」
その言葉に抜けていた意識を戻す。
彼の指さす先には、唐揚げが。
ま、まぁたくさんあるからいいけどさ…。
「どうぞ…」
と弁当箱を彼の近くに差し出すと、「サンキュー」と言いながら唐揚げを摘み上げ、ヒョイと口へ放り込んだ。
「…なんだこれ…」
「え…どうしました?まさか、お口に合いませんでしたか…?」
不安になり俯く彼の顔を覗き見る。
すると…
「すっっっっっっっげーーーーうまい!!!!」
きらきらした目をさらに輝かせ私に向き直る丸井くん。
よ、よかった。どうやらお口には合ったらしい。
ほっと胸を撫で下ろしていると、彼は不思議そうに首を傾げた。
「つーか、なんでそんなかしこまってんだ?」
「え?」
「同じクラスなんだから、普通に喋ればいいじゃん」
普通にと言われましても。
こちらは先ほどからあなたのパーフェクトフェイスに耐えるので精いっぱいなのですが。
「あと、丸井くんじゃなくてブン太でいいぜ」
「距離の縮まり方が急では!?」
恐ろしい、恐ろしいぜ男テニの太陽こと丸井ブン太…。
「いいじゃん。俺、丸井くんって呼ばれるの慣れてねーし」
「じゃあ、丸井さんで…」
「なんで逆に遠ざかんだよ」
おぉ…イケメンはツッコミもできるのか…。
私のズレた発言にも怯まず反応してくれる。
貴重な人材だ。
協議の結果、呼び方は折衷案でブン太くんに決定した。
「これ、お前が作ったのか?」
再び、ブン太くんがお弁当を指さす。
「そうだけど」
「マジで!? この唐揚げも?」
「下味から私が仕込みました」
「じゃあ明日も入れてきてくれよ!」
「私のお昼ごはんなんですけど!?」
さも当然のような顔をしておられますけれども!?
作るのも私なんですからね!?さっき言いましたよね!?
唐揚げなんて手間も時間もかかるものを毎日作ってられるかってんだぃ!
心の中で悪態をつき続ける私をよそに、ブン太くんはまだ、まじまじとお弁当を見つめていた。
「つーか、これ全部一人で食うのかよ、名前」
「…………え?」
そう言われた瞬間、時が止まった。
思わず腑抜けた声を出してしまう。
なんで…なんで…
「なんだよ」
「なんで私の名前を知ってるの!?」
「クラスメイトだろい」
「クラスメイトの名前を把握している……だと……?」
「お前、俺をなんだと思ってんだよ」
だって、君、クラスの中心人物だよね。
そんな人が、挨拶程度しか交わしたことのない私の名前まで覚えているなんて誰が思うだろう。
「いや、でもこれ、でかすぎだろ。男子テニス部でもそんなの持ってきてる奴いねーぞ」
「失礼な。たったの1000mlなんですけど!?」
「“たった”の基準がおかしいだろい」
おかしそうに肩を揺らしながら笑うブン太くん。
だって、普通のサイズじゃお腹空いちゃうんだもの。
一般的な女子が使ってる大きさじゃ私のおやつにもならないね!
何がおかしいんだと首を傾げる私を見て、ブン太くんはますます楽しそうに笑った。
その様子を見て、私もつい、顔が緩んでしまう。
