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計画は密かに

捨てた挑戦状を背にして、寮の門をくぐる。
メイデンはふっ……とため息を吐き、振り返る。

「最近体が鈍ってきてたとこだし、仕方ないわねぇ。
ちょいとウォーミングアップ程度に、相手してやっか!」

メイデンはゴミ箱から拾い上げた挑戦状たちが入った
フィルムを携えて、再度寮に戻るのだった。

◆◆◆◆◆◆◆
◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ユーイン・セタロットとメイデンの間には、数年前から
深い溝があった。

元々、二人とも尋問官志望で、同じ志を持つ友人としての付き合いだった。

尋問官の採用試験当日、メイデンとユーインは一緒に試験会場へ入った。

その時に居たのが、(当時はまだ尋問官志望だった)スカイランドルハットだった。

ユーインはスカイのルックスの良さと、爽やかな笑みに

惹かれ、一気に恋心を寄せる。

「ねぇ、メイデン。彼って、素敵よね」

 ユーインがそう話しかけた時のメイデンの表情は、少し引きつっていた。

「う……、うん。素敵ね」

 その時はまだユーインはメイデンの気持ちには気づいていなかったのである。

気付いたのは、試験を終えた直後だった。

回答後は自由解散というスタイルの試験だったので、ユーインも
問題を解き終えると、他の受験者の机と机の間を縫うように歩いて戸口を出た。



その時――。


見てしまったのである。

メイデンがスカイと親しげに腕を組んで自分より先に帰っていく後ろ姿を。

メイデンはユーインに振り向くと、長い前髪を掻きあげて舌をぺろっと出し、如何にも恋の勝ち組的な態度を取ってきたのだ。

以来、ユーインは裏切られたと思い、メイデンとは恋敵の仲なのである。

そんなために、どうしてもメイデンが許せないユーインは、その憂さ晴らしをしたい衝動を抑えきれず、メイデンの実家近くの通りの店のショーウィンドウを魔法の杖で薙ぎ払うように破壊しては捕まり、酒に溺れ、自分の家を放火してぼんやり眺めた日もあった。

そして今宵、ユーインは――ユーイン・セタロットは、同じようにメイデンにスカイを横取りされた被害者仲間たちと共に、戦争を始めようとしていた__。
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