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[掌編]黒ばら憂覧飛行

私立の魔法大学を出たばかりの私《野崎ことわ》は、今、真っ白なベッドの上で、灰色の天井を見ていた。
思い返すのは、大学の同期や先輩から浴びせられる奇異の目、陰口、噂話。
私は窓を振り向き、睨んだ。

こんな病気にかからなければ、
私はあんな悲惨な目に遭わずにすんだのに。

黒ばら病に、かからなければ………。

病室にいても、やはり、ドアの向こうに先程退室した、仮面の優しさを被って見舞いに来た連中の笑い声は響いてくる。
ラジオだって、私が聴くとかわいた笑い声で、番組のMCの声とか、音楽とか、どれだけ周波数変えてもかき消されてしまう。

窓が勝手に開いたと同時に、雨風が、私しかいないこの病室に吹き込んでくる。
大量に流れ込んでくる水。それに気付いた看護師さんが、魔法で何度も何度も消してくれる。
しかし、悪意に満ちたいたずらは終わらない。

今度は病室の電気が消えた。
看護師さんに聞いたら、やはり私の病室だけブレーカーが落ちて、上がらないそうだ。
こんなこと考えて実行に移すのは、私のことを毛嫌いし、いじめ倒しにかかる同期と先輩だけ。

こんなことにばかり魔法が使われるなら、いっそのこと、魔法なんてなければいいのに。

黒ばら憂覧船は、今日もゆらゆら、呪いの魔法にかけられた河をゆく。
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