蛍を探しながら走って居れば彼を見つけたのは第３体育館でだった。

お！

いたいた！！




「失礼しあーっす」

「オー高尾ちゃん！！」

「おやおや？高尾ちゃんじゃーあーりませんか！！」

「高尾？どうしたの？上がり？」

「いやいや。なんとなく他の体育館も見回りっすよ。」

「お！じゃあここの練習に付き合ってくれる？」




チロリと周りを見渡せば体育館の端にクロさん相手に半泣きでレシーブ練する灰羽くん。

コートにはセッターの一に着く赤葦さんと相変わらずフレンドリーな木兎さん。

２人と反対側のコートに蛍。

大方木兎さんのスパイク練習のブロック役にでも捕まったのだろう。

意地の悪いクロさんと木兎さん相手じゃ流石の蛍も躱せなかったらしい。

ご愁傷様である。




「んで？高尾ちゃんも交じってくれるの？」

「あーじゃあ蛍と一緒にブロックでも入りますよ。まぁ私程度じゃ木兎さんを止めるなんて無理ありすぎますけど。」

「え？高尾ちゃん跳べんの！？」

「元バスケ部のジャンプ力なめないでくださいね！！蛍ブロックのタイミング任せるから指示頂戴ね」

「高尾さんがやるなら僕は別にいなくても・・・「いや私一人じゃ無理でしょこれ。いいから頼むよ」

「・・・わかった。」





さっそく赤葦さんから木兎さんにトスを上げる。




「もういっぽォーン！」

「せーのっ！！」




グワリと背中を後ろに反らして腕を振るう木兎さん。

空中でのボディーバランスは流石としか言いようがない。

蛍がストレート閉めて私も合わせて跳んだが木兎さんはクロスへ。

腕を振ってあてるがそんなんでドシャットなんて無理。

バヂッと手に当たったボールは私の後衛へ吹き跳んでいった。




「うひぃい！！手がしびれる。やっばい。流石の威力！！」

「おぉ！！良い反応！！」

「相変わらずよく飛ぶね高尾。」

「あれ？赤葦さん私のプレー見たことありましたっけ？」

「いや。球技大会でやってるのを少し見ただけ」

「あーなるほど。」

「そういえばあの時男子の部に出てたよね・・・あれ何だったの？」

「いやあれなんか兄貴のクラスからヘルプ着て何故か・・・」

「あーだからそっくりな男子が居たんだ・・・。」




威力やばすぎ。

一応テーピング巻いた手でよかった。

びりびりと痺れる手をプラプラと振る。

そこから木兎さんは「もう１本！！」「もう１本！！」と楽しそうに２本、３本とスパイクを打つ。

手に当てても吹き飛ぶ。

空中で打ち分けもしっかりしていて何本かよけられてしまった。

くっそー。

分かって居たけれど二人がかりでこれってば超強ぇｗｗｗ




「（ストレート！！）」

「（賢くかつ冷静！！でも！！）」




回を重ねれば蛍もパターンがわかってきたのかストレートを読んでブロックするが・・・ゴガッと凄まじい音と威力で押し込まれた。





「っしゃあ！！」

「２枚ブロックに勝っただけっすよ」

「うっせーな！！」

「じゃあ３枚でどーだ」




とクロさんがコートに入ってきた。

蛍と一緒になって後ろを振り返ればそこにはボールと一緒になって転がる灰羽くんの死体が・・・。

いや、別に死んでないんだけどね。

ただへばっているだけでたまにうめき声が聞こえる。



「３枚ブロック上等ォ！！行くぜ！！」

「メガネ君と高尾ちゃんはきっちりストレートしめとけよ！」




２人に合わせて跳ぶ。

っとクロさんがわざと開けていたクロスを木兎さんが見たかと思えばストレートを一緒に閉めていたクロさんが腕を振って叩き落した。

うほｗｗｗ

クロさんぱねぇ！！




「うぇい」

「くっそ！！」

「クロさん悪人面やばいｗｗｗ」

「高尾ちゃん見る所そこ！？」

「いや、だってねぇ？」

「うーんつーかやっぱメガネ君さ読みは良いんだけどさこう・・・弱々しいんだよなブロックが腕とかぽっきりぽれそうで心配なる。がっ！っと止めないとがっ！っと」




木兎さんのオブラートのないストレートな言葉に隣から嫌な音が聞こえて蛍を見上げれば案の定不機嫌そうな顔をしていた。

そして意地悪な顔をして言い返し始めた。




「僕はまだ発展途上なんですよ。筋力も身長もまだまだこれからなんで」

「むっ！？」

「悠長なこと言ってるとあのおちびちゃんにイイトコ全部持ってかれんじゃねーの。同じポジションだろー」




あちゃー。

クロさん地雷踏んだわ。

踏み抜く勢いでピンポイントだわ。

思わずあちゃーと片手で顔面を抑える。



「「・・・？」」



主将コンビは分かって居ないらしく首をかしげていたが蛍は作り笑い全開の笑顔を向ける。

やばい。

うすら寒くて逆に笑えてきたｗｗｗｗ




「それは仕方ないんじゃないですかねー。日向と僕じゃ元の才能が違いますからねー」

「？」

「あっ！またスパイク練習ですか！？お？高尾も居るじゃん」

「お？犬岡？お疲れー」

「お疲れー！！俺ブロックやります！？やります！？」

「おい！リエーフ転がってんじゃねぇレシーブ！」

「ゲェッ夜久さん・・・！」

「ゲッてなんだ！！」




入ってきたのはどこかで休憩していたのか音駒の面々だった。

あー。

これまた丁度いいタイミングで・・・。




「じゃあ僕お役御免っぽいんで失礼します。」

「あっオイ」



そそくさと足早に蛍は体育館を出て行ってしまった。





「なんか地雷踏んだんじゃないすか黒尾さん」

「怒らした。大失敗じゃん挑発上手の黒尾君」

「いやだって思わないだろ「何を？」

「烏野のちびちゃんは確かに得体がしれないし脅威だけれど、技術も経験もひよっこだろ。それにあの身長だし。それをあの身長も頭脳も持ち合わせてるメガネ君がちびちゃんを対等どころか、かなわない存在としてみてるなんてさ」

「あーまぁ蛍の場合頭が良すぎるんですよねー。でも蛍が居なくなったんなら私も烏野のところに戻りますね。」

「えー」

「高尾ちゃんも居なく何の？」

「元々蛍の様子を見に来たんで。それじゃあ失礼しまーす。」

「ちぇ・・・」

「高尾お疲れ様。」

「赤葦さんも木兎さんに付き合うのはいいんですけど程々に上がってくださいね」

「ありがとう。」

「いえいえ。」

「お疲れー高尾ちゃん」

「「「お疲れさまー」」」

「お疲れ様です！！」