デュース。

先に2点差つけた方が勝ちだ…！



「焦んなよ！声出して行くぞ！！」

「国見ちゃんイケるね？」

「ハイ」





2回目の青城のタイムアウトだ。

戻ってきた選手のマッサージを施しながら向こうのベンチを盗み見る。



「うぉおい！すげーぞ日向影山ぁ！！」




よーしよしよしと犬を可愛がるかの様に2人の頭を撫でる夕先輩。



「(国見もあんな風に必死にボールを追うのか)」

「影山！移動攻撃何回でも打つかんな！！！決まるまで！」

「飛雄ちゃん。みんなの疲労がひどいから打点とか気をつけて上げて。応急処置程度にしか処置できてないから。」

「はい。」



何か考え事をしている飛雄に自信満々に言う翔陽。

しかし、まぁみんな足に確実に疲労がきてるから念のため一言伝えれば素直に聞いてくれた。



「行くぞ！」

「「オオッ」」

「ッシャアアア」

「流れはこっちだ！」

「思いっきり行け田中ー！！」



タイムアウト終了。

龍先輩のサーブ。

マッキー先輩が拾ったが少し乱れた。

金田一くんのスパイクは三枚ブロックに飛んだ大地先輩の手にあたりワンタッチ。



「チャアンスボール！！！」


翔陽が移動攻撃。

渡さんが拾ったけど1本で帰ってくる。


「チャンスボール！！」

「もう一本！！」



もう一回走り移動攻撃を仕掛けるがまた渡さんが拾う。

翔陽は戻るのが早い。

ブロックにも飛びワンタッチ。



「もういっ…かぁぁぁあい！！」



重力との戦い。

限界まで短距離ダッシュを繰り返した翔陽の足にここでキた。

飛ぼうとするがカクンと力が抜ける。

ガン無視の移動攻撃だったはずなのに岩ちゃん先輩がブロックに出てきた。

翔陽のジャンプ力が下がりタイミングが合わないっ

と思ったところで翔陽がギリギリ指先を当てることで向こうのコートに落とした。

渡さんが飛び込んだけど不意打ちで更に岩ちゃん先輩が飛び出したことにより見えなかったのだろう拾えなかった。

ラッキー。



「翔陽ーつ！！」

「うぉぉおい！！今のは日向に救われたなオイ！」

「ナイス日向ー！！」

「一気にとるぞ！」

「「「オオッ」」」


今度は烏野が王手だっ。

しかし向こうは落ち着いている。

龍先輩のサーブはマッキー先輩が対処し及川さんから岩ちゃん先輩。

ブロックに間に合わなかった翔陽が狙われ撃ち抜かれ取り返された。

25-25

ここでローテが回り及川さんのサーブ。

点数は同じでも青城が連続得点しない限りうちが常に優位に立った状態だが、及川さんのサーブは試合の後半から徐々に威力をあげてきてる。

精鋭2人体制でもどこまで対応できるか…。




「西谷ァア！！」




コントロールを捨てた及川さんのサーブはエンドラインより外。

アウトだ。

一瞬力んだ？

及川さんが…？



「西谷ナイスジャッジ」

「っス」



26-25

またうちがセットポイントだ。

翔陽のサーブで蛍がコートに戻ってきた。

流石に及川さんも焦ったのかと思ったが岩ちゃん先輩が大地先輩のブロックに当てながらもスパイクを決めた。

多分今の今日1番の威力だった。



「これでチャラな。どっちだって同じ1点だ。」

「「「(岩泉さんカッケー！！！)」」」

「岩ちゃんに負けた気分ー」

「お前は今までのいつ俺に勝ったんだ」

「全体的にいつも俺が勝ってるアダッ」




さっすが3年生エース。

実際にはブレイクかサイドアウトかで1点の重みは違うだろうけどチームが崩れるのを免れた。

岩ちゃん先輩の一言で主に及川さんがだが持ち直しやがった。

ちぇ…。

青城一度も全国行ったことないなんてほんと嘘みたいに崩れない。

それでもこっちが優位に立ってるのは変わらない。

体力的な消耗は一緒でも精神的にきついのは向こうだ。

逃げ切れっ。

旭先輩のスパイク27-26

国見くんのスパイク27-27

蛍とまっつん先輩の押し合いは蛍が決め28-27

国見くんのスパイク28-28

お互いに譲らないまま31-31までリデュースが続いた。

どっちもきついが、うちの方がギリでつないでいる感じだ。

向こうは前半うまく手抜きをして体力温存してた国見くんがいる。

今のローテでちょうど1週。

及川さんのサーブに戻ってきた。

１週前のミスがあったが及川さんはどうするのだろうかと見ていれば岩ちゃんに何か声をかけられると無駄な力が抜け空気が変わった。


「一本で切る！！！」

「っス！！」



及川さんのジャンプサーブ。

今まで以上の威力で飛んできた。

今日見た中で一番のサーブだった。

この土壇場でこのモチベーション。

あの人が認めるだけある技量を見せつけられた気がした。

なんとか正面に入った大地先輩が受けるが向こうコートにチャンスボールとして返ってしまう。



「返ってくる！チャンスボール！」

「オーライ。」

「くっそすまん！！」

「あんなの上がるだけでありがたい！！」


うちのブロックは旭先輩翔陽大地先輩の3人。

囮で飛び込んできたのは岩ちゃん先輩だがトスが上がったのはライトに来てた国見くん。

フリーで打った国見くんのスパイクは飛雄の顔面コースだったけど飛雄がうまく弾き向こうのコートに戻った。

国見くん流石に温存していただけあって1人動きが違う。

戻りから再びセットアップからの国見くん。

今度はフェイントを決めて来た。

31-32

逆転し返してきた。



[三年間一緒のチームだった。けど試合中に普通に笑う国見を今日初めて見た。ーなんなんだ。アンタ…あんたみたいな人にどうやって太刀打ちすればいいー]

「山くん…影山さん！！おいまさかビビってんのかダッセー。っふがしっ！？」



深刻な顔で青城をみる飛雄に翔陽が茶化しに行ったが顔を掴まれていた。

ふがしっふがしって…ふがしってぇ…www


「だつ大王様が王様よりすごいなんて当たり前じゃんか！名前的にも！絶対お前より頭とか良さそうだし！」

「すまん影山！次絶対お前のとこへボール返してみせる。そしたらあとはいつも通りお前がベストだと思う攻撃をすればいい」

「影山ァー！！迷ってんじゃねぇぞ！！うちの連中はァ！！！」

「ちゃんとみんな強い！！！」

「飛雄ーよく言ったぞ！！！」




そして勝者と敗者が決まる。