「フゥーっ」



(…もう1セットも落とせない…)



ブロックの切り替えとかもっと後出しにしたほうがよかったかな…。

完全に奇襲だししばらくは使えないもんな…。

自分で思ってるよりテンパってたのかな俺…。

いやでも「スガーッ！！お前まで考えすぎモードに入るなよー！」

「そーだぞースーさん！！」

「2セット目絶対取り返すその為にはまずー」

「おう。及川のサーブを攻略だな。」



うちは少しローテを回しての開戦だが向こうは1セット目と同じ…。

まぁ助かるちゃ助かるわ。

うちはとにかくレシーブをあげないことには始まんないけど。

開始早々ウチはスーさんのセットアップから蛍のスパイクが決まった。

うん。

良い感じ。



「ナイス月島！！」

「あ、ハイ。」



温度差凄いなあそこ。

でも蛍は素直に褒められたり真正面からのコミュニケーションは慣れていないのか何時ものように躱したりしないから蛍に対しての対応はアレが正解だ。

果たして飛雄にあれが出来るのか？と聞かれたら疑問は残るんだけど…。



「菅原さんって決めるとすげー褒めてくれんだぜ！」

「そうかよ…」

「別に仲良しこよししようってしてるんじゃなくてさあぁやって声をかけながらスパイカーそれぞれの表情とか今日の調子とかそういうの見てるんだと思うよ。あくまでさりげなくね」




なんとなく翔陽飛雄コンビと縁下先輩が面白い話をして居るので会話に入って見た。




「縁下先輩の言う通りだよ。特に蛍なんかは2・3年生と違ってスーさんにとっても未知の部分が多いだろうからどう考えても単純な性格じゃないし…気を遣ってんよ…アレ。」

「なんで俺が他人のご機嫌伺いしなきゃいけねぇんだボケェーって顔だな！！」

「別にそんなことはっ…！言ってません！」

「ぷっ…くっくっくっ。顔に出やすいねぇ。」



思いっきり顔に出てるし…。

ホント単細胞。




「だって影山日向が打ちづらそうだったらすぐにトスを修正するだろ？」

「？はい。こいつすぐ空振るし…」

「日向はまだ技術てきにその…えーっと…あー「下手くそです！！」




あんまりにも言い淀む縁下先輩に翔陽は自ら言った。




「翔陽自分で言っちゃったよ。」

「だって！！」

「う、ごごめん。うん…だから…」

「いいんです！」

「はははっ。っまぁ飛雄と息が合わないと目に見えて失敗するからね、翔陽は。でも他のみんなはそこそこ技術と経験があるから多少やり辛い程度なら打てるでしょ。翔陽もコレから上達するし翔陽は伸び代しか無いからね落ち込むのは早いよ。」

「オッス！！」

「そーそれ！！高尾ちゃんが言ってくれてるそれ！！て言うか影山練習の時は旭さんとかに今のトスはどうですか！？って詰め寄るじゃん？」

「…ブロックが居るとそっちのが気になっちゃって…」

「俺が言うのもアレなんだけどさ、うちのスパイカーって結構レベル高いと思うんだよ。」

「え、縁下先輩それ今更…。そう思ってなかったらどんだけ高望みしてるの！？6人全員牛若ですか？」

「いや。そこまでは…」

「それぐらいウチは側から見てもレベルありますけど？旭先輩を止めたいなら鉄壁3枚揃えてもってこいって思いますけど？」

「…俺もレベル高いと…思い…ますけど…」

「じゃあさそいつらがちゃんと100%の力で打てたら多少ブロックが立ちはだかったってちゃんと戦えると思わないか？」

「ま、確かにそれですね。飛雄は焦れば焦るほど、ひたすら馬鹿の一つ覚えみたいにスピードでブロックを引き剥がそうとしてるけど…うちにはぶち破る火力がありますからね。」

「ば…ばかとか…」

「見て見た？金田一くん。あの子の最高打点練習試合の時よりボール1つ分上なの。あの身長とあの筋力なら多分あれが今の100%。中学の時どうだった？」

「……練習試合の時と同じぐらいだったと思います。」

「ならそう言うことでしょ。飛雄はコミュニケーションを取らないけどよく見て居るから無意識のうちに相手の癖にも合わせてる節がある…。ここまでやってたからここだろ～って決め付けてる気がする。たまには当人に聞いて見たら？翔陽みたいに自分から言ってくる人ばっかじゃないし、見てるだけでは気づけないことたくさんあるよきっと。特に蛍は顔に出さないし…必要ならデータノート貸すけど…。」

「…あざすっ」

「な、なんか高尾ちゃん怒ってます？」

「怒ってます。」

「え…ご、ごめんなさい？」

「理由分かってないのに謝られても…。まさかあーんな自信無さそうに言われるとは思いませんでした。もっと胸張っていいと思うんですけどねぇ？」

「えっ…ほんとごめんっ」

「じゃあ今度から縁下先輩のこと力先輩って呼びますね。それで許します。」

「えっ…あ…うん。ありがとう…」