他校詰め込み




気づくといつも、となりにいる。
どうして見つけられてしまうのかよくわからないのだけど。
だって自分は、



「くーろこっちー!」

「…………苦しいです」

「あ、ごめん!」

「…いえ…」



気づくといつも、すぐ抱き着かれて。
大きな身長差の前では振り払うことなど敵わず。
……特に嫌、な訳ではないのだからさらによくわからない。
だって、自分は、



「そういえばね、こないだロケで海行ってきたんスよー!」

「結構前の話ですよねそれ…」

「え、なんでわかったんスか」

「撮影は季節先取りしすぎてて大変だって言ってたじゃないですか」

「あ、確かにそーっスね!」



ころころとかわる表情を見ていれば飽きることはなく。
ふわふわとまとう雰囲気に惑わされているのか否か。



「夏休み海行こうよ、オレ黒子っちと行きたいっス!」

「……大丈夫なんですか?」

「何がっスか?」

「…受験勉強……」

「…………………いきぬきも大事っス……よ…ね」



あぁ勉強してないんだろうなぁでもきっとバスケ推薦でどこにだって入れるか、と黒子は思う。
高校、どこに行こうか。
彼はどうするんだろうか。



「……いいですよ」

「へ?」

「海、行きましょうか」

「……!ホントっスか!?ありがとー!!」



ボクは、影だ。
こちらから君を見つけることはできても、向こうからなんて無理だと思っていた。
そんな中で初めて君は、ボクを他の人と変わらず見つけてくれた。


また抱きしめられて、彼が笑った瞬間に少し目を細める。
やっぱり少しだけ苦しいけれど、むしろ気持ちはあたたかくなる。
ふわりと微笑んだ。



「…黄瀬くん、」






スウィートマリン


(ボクは君に酔っているようです)


END


090610



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