他校詰め込み
非常に厄介な相手に惚れてしまった、と自分でも思う。
「真ちゃーんちゅーしたいぎゅーってしたい今日家来ない?」
「しないされたくない行かない」
「えっちょっ真ちゃん酷い!」
結局後ろから高尾に抱きしめられる形になる。あぁもう。
「もー真ちゃん背高い……せめてあと10センチ縮まねぇ?」
「無理なのだよ」
「あーでもいいや、やっぱりこの高さの方が燃える」
ニィ、と楽しそうに高尾が口の端を上げて笑う。
全然意味がわからない。
はて、と疑問符を飛ばしていたらまた真ちゃん可愛い顔!反則!ってうざったいのだが高尾?
「何、そんなカオして」
「言った意味がわからないのだよ…燃えるとかなんとか」
「え、要するにアレだよ、『恋は障害がある程燃え上がる』ってな!」
「……やっぱり意味不明なのだよ…」
「それにな」
「?」
高尾はおもむろにオレの左手をとり、指先に口づけた。
「なったた高尾…!」
ボッ、と音がしたんじゃないかと思うほどに体温が、鼓動が跳ね上がる。
ジッと真面目な目で見つめてくる高尾と目が合う。
「は、はなせ」
「真ちゃん」
低い声でオレの名を呼ぶ高尾は、もう既にさっきとは別人で。
「なぁ、オレ真ちゃん好き過ぎて死にそう」
「は、」
「真ちゃん、好きだよ、……愛してるって言っても過言じゃない」
「う、たか」
高尾、と全部言う前に唇と唇が重なり合う。
恥ずかしくてぎゅう、と目をつぶれば高尾は手を重ねて優しく包んで、妙な安堵感と堪えきれない何かが心の中でぐるぐると渦巻く。
眼鏡ジャマ、と高尾が呟いたかと思うと次に見えたのはぼやけた世界。
高尾のすっきりとした顔が間近に近づいてきて、また目をつぶる。
キス、の合間にも高尾は「愛してる、真ちゃん」なんて言って、あぁもうオレの心臓がもたないのだよ高尾。
そんなことを冷静な頭の隅で考えたりしてみたが、言えるはずもなく。
何回言われたことだろうか、因みにオレは言ったことはない。
………すきもそうそう言えないのに言える訳がないだろう…?
「…愛してる、愛してるよ」
強く強く抱きしめられた体温は、やはり心地良い。
しかし、決まって『真ちゃん』としか呼ばれない意味もわかっている。
…わかっているのだよ。
END
090510/香夜
091217/高緑のみで表記