日月SS




日向と出逢ってから、もう5年目になる。
最初はただの部活仲間、だったのが変わったのは、いつの頃だったか。実際、きっかけというほど気にとめるものでもなかったのかもしれない。正直よく覚えていないのが現状だが、それは今は置いておく。

高2現在、オレと日向は所謂恋仲なわけで。

日向の声が好きだ。
いや、他にも好きなところは沢山あるけれど、今回は敢えて声に限定しておく。
もっと限定するならば、二人っきりのときの少し間抜けで、優しい声が好きだ。隣にいるんだ、と安心できるから。

でも、オレはそんなちょくちょく好きだなんて言えない。冗談みたいに軽く言うのは別に気にしないが、実際日向となんかいい雰囲気になって、とかだったら恥ずかしい。今更だとコガに笑われたが、そう思ってしまうのはもう仕方ないと思う。
だってほら、今だって、


「…今余計なこと考えてただろ」

「別にそんなことないけど……、っ!」

「嘘」


ちょっと詳しく説明するのは恥ずかしいので想像してほしい。今の状況を。

耳元で囁かれるのは苦手だ。
そういうときの日向は決まってクラッチタイムで、一段と低い声で、悔しいけど格好いい。心臓に悪すぎる。


日向が触れた手が、唇が、一気に熱を帯びるのがわかる。それはきっと日向にも伝わっている、意地悪い顔で笑うのが見えるから。


「拗ねんなって」

「うるさい、日向のばか」

「あー?どの口が言うか」


オレも一応男なので、翻弄されっぱなしは嫌なのだ。
だから、絶対いつか日向を真っ赤にしてやろうと思う。あの言葉の重みを、いつかわかるようになったら。


「……ひゅーが、」

「ん」


それまでは、キスをねだるくらいにしておいてやるんだ。




キミに囁く魔法の5文字

(今は『だいすきだ』で勘弁しといてやるよ!)




END


110403
日月の日企画『Sol*Luna』様参加作品


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