水金SS
くるくると変わる表情が好き。
機嫌のわかる声色が好き。
オレを引っ張ってくれるところが好き。
そう言いたげに水戸部が微笑む。
水戸部は喋らないけれど、オレにはたくさんの言葉を向けてくれている。
内容はあくまでも予想でしかないけれど、喋らなくたって気持ちはわかるもんだなあと水戸部を好きになってからしみじみと感じる。
「水戸部ー…」
「?」
ん、と両手を差し出せば照れたように笑いながらぎゅっ、と抱きしめてくれた。
この温度が好きだなあ、と思う。
触れたところが、じわじわとあたたかくなっていく。
全身が、ひだまりにあるような、そんな感覚になる。
幸せの温度って多分これくらいなんだろうなあ。
「…?」
「んー?あのねー、水戸部があったかくてね……んー……」
広い胸板に顔を預けた。
さっきよりも、はやい心臓の音が聞こえてきて、なんだか嬉しくなる。
水戸部はオレを抱きしめながらも頭の上に疑問符を飛ばしていた。オレが何を言いたいのかわからないって顔をしている。
いいんだよ、そのままで。
ちょっと戸惑った水戸部も好きだから。
それに水戸部はさっきから叫んでくれていた。こんなにも全身で叫んでくれていた。
もう一度、しっかりと水戸部の胸に耳をあててみる。
ほら、聞こえるのはこの音の中にたくさんたくさんつまった「好き」の感情だけ。
無音のまま君は告白した
(オレもだーいすきだよ!)
END
120731
水金の日企画「恋するマーキュリー」様提出作品
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