火黒(2011年以降)
こころは、見えないものですよ。
そう言ったボクの顔を難しそうな顔で見る火神君を見上げる。
「いや、そりゃそうなんだけどさ」
「それ以外に何があると…?」
「完璧になんかわかるわけないし、でも、わかりたいわけ。だからこいつ今何考えてんのかなーとか必死に考えるんだよこっちは」
「はぁ」
「はぁ、じゃねーよまったく」
少し前を歩く火神君はボクの反応に不満なのか、ブツブツと何か言っている。
夕刻、いつもより少し早い部活帰りの道に長く伸びた影が二つ。
火神君はボクの考えていることがわからない、と言う。それは当たり前だろう、その気持ちは個人のものなのだから。そう思って言ったのだ。こころは、見えないものだと。
「でもお前はオレの考えてることわかってるじゃねーか」
「だって火神君は顔に書いてありますもん。今も思い切り腹減ったって書いてありますもん」
「……」
「火神君は普通より群を抜いてわかりやすいですよ。マジバ行くんでしょう?」
「…納得いかねー!いつか絶対オレもお前が考えてること言い当ててやるからな!」
「頑張ってくださいね」
こころは、見えないものだと。
でも考えることはできるのだと。
少しでも、ボクをわかってくれようとしているのだと。
火神君はそこまで考えていないかもしれないけれど、そう思うと自然に口元が緩んだ。
「何笑ってんだよ」
「いえ、何も」
「なんだよもう」
普通の人じゃ気付かないような仕草も、少しずつ気付いてくれるようになってきていることが嬉しくて。
こんなことを考えているなんて、君は思いもしないだろう。
でも、いつか辿りついてほしい自分もいて。
「……待ってますよ」
そう、大きな背中に小さく呟いた。
END
111011
主催企画「ライオンと影ぼうし」提出作品
そう言ったボクの顔を難しそうな顔で見る火神君を見上げる。
「いや、そりゃそうなんだけどさ」
「それ以外に何があると…?」
「完璧になんかわかるわけないし、でも、わかりたいわけ。だからこいつ今何考えてんのかなーとか必死に考えるんだよこっちは」
「はぁ」
「はぁ、じゃねーよまったく」
少し前を歩く火神君はボクの反応に不満なのか、ブツブツと何か言っている。
夕刻、いつもより少し早い部活帰りの道に長く伸びた影が二つ。
火神君はボクの考えていることがわからない、と言う。それは当たり前だろう、その気持ちは個人のものなのだから。そう思って言ったのだ。こころは、見えないものだと。
「でもお前はオレの考えてることわかってるじゃねーか」
「だって火神君は顔に書いてありますもん。今も思い切り腹減ったって書いてありますもん」
「……」
「火神君は普通より群を抜いてわかりやすいですよ。マジバ行くんでしょう?」
「…納得いかねー!いつか絶対オレもお前が考えてること言い当ててやるからな!」
「頑張ってくださいね」
こころは、見えないものだと。
でも考えることはできるのだと。
少しでも、ボクをわかってくれようとしているのだと。
火神君はそこまで考えていないかもしれないけれど、そう思うと自然に口元が緩んだ。
「何笑ってんだよ」
「いえ、何も」
「なんだよもう」
普通の人じゃ気付かないような仕草も、少しずつ気付いてくれるようになってきていることが嬉しくて。
こんなことを考えているなんて、君は思いもしないだろう。
でも、いつか辿りついてほしい自分もいて。
「……待ってますよ」
そう、大きな背中に小さく呟いた。
END
111011
主催企画「ライオンと影ぼうし」提出作品
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