火黒(2009/02/19~2010/11/21分)
例えば、の話ですよ?
もしボクが本当は、火神くんのことが殺したいくらい大嫌いで大嫌いで堪らないんですって言ったらどうしますか?
なんて大真面目な顔で聞いてくるもんだから、一瞬自分の耳を疑った。
なんでそんなこと聞くんだ、とはもちろん思ったが時々こいつは詩人みたいなこと言ったり、よくわからないことを一人で言ってたりするのを思い出したからすぐに返事をする。
「じゃあもし今、オレがそれ考えてたって言ったら、お前どーすんの」
そう返されると思ってなかったんだろう、黒子は大きな目でオレを見上げる。
あ、ヤバイ。いつもだけどその顔可愛い。
そんなことを思っていると、そうですね、と一拍置いてから
「多分ショックで死んじゃいますね」
サラリと黒子は表情も変えずに言う。
ふーん。そう相槌を打ったらふーんは酷いです、火神くんってちょっとふてくされたように黒子が言う。
悪いけど言い出したのはお前だろうが。
「火神くんはどうなんですか?」
とつっこまれた。
はぐらかさないで下さい、と。
しかしお前、冗談は苦手とか前言ってなかったっけ?
「そーだな…やっぱり落ち込むんじゃねぇの」
本気で言われたら多分オレも死ぬんだろうな、とは思っても言わない。絶対。
黒子はそれを聞くと、そうですかと、やっぱり表情を変えずに言った。
お前も似たような返事じゃねーかと心の中で突っ込む。
「…すみません」
と、黒子はオレの肩にもたれ掛かる。
「いーよ、別に」
そう言って黒子をベリッと腕から離して抱きしめる。
22センチの身長差のおかげで、オレの腕の中にすっぽりと納まる黒子。
こうしているといつもよりさらに小さく見えて、やけに可愛い。
ポンポンと頭を撫でてやれば、オレの背中に腕を回し胸に顔を埋める。
「…好きだよ、黒子」
「ボクだって好きですよ」
「オレの方が好き」
「絶対ボクの方が好きです」
そう言いあうのもいつものこと。
これは黒子が甘えたい証拠なんだと最近気づいた。
時々こいつは、何か変なこと考えて一人で不安になって突拍子もない話を始めて、でもそれは安心したいから言葉が欲しいからで、本気でそんなことを考えてるわけじゃない。
そうわかってからはもうこいつの行動が可愛くて可愛くてしょうがない。
小さな身体を包み込めるのが自分であることが本当に嬉しい。
「火神くん」
「ん?」
「ありがとうございます」
上目遣いでふわっと微笑んだ黒子にくらくらする。
あぁもうそんな顔すんな、ますます惚れるだろうが!
ある晴れた日のこと
(火神くん、大好きですよ)
(…恥ずかしいからやめろオレも好きだから!)
(火神くんの方が恥ずかしいじゃないですか)
END
090315