火黒(2009/02/19~2010/11/21分)
「はーい、じゃあみんなそろそろあがってー!」
体育館にカントクであるリコの声が響いた。
「今日はここまでね、お疲れ様でした!解散!」
その声と同時に部員たちはバラける。
一年生は片付けのために。
二年生は一足先に着替えるために部室に。
「火神くん」
「ん?」
「ついでにこれ乗っけてもらっていいですか」
「おぅ」
道具を倉庫にしまいに火神と黒子はそこにいた。
それから二人で部室に戻る。
「今日寒いですね…」
「朝雨降ってたしな」
「止んでるといいのですが…」
「お疲れー先あがるなー」
「あぁ、ども」
「お疲れ様です」
部室に入った二人とすれ違いに日向が帰って行った。
ふと、誰かが口を開く。
「…あ、雪」
「え?……おー、マジだ!」
部室の小さな窓からちらちらと白が舞っているのが見てとれた。
「……寒いはずですね」
「オレ日本で雪見るの初めてだ」
「ここらへんはあまり降りませんから…今年は暖冬だと言われてましたしね」
「だんとう…?」
「暖かい冬のことですよ」
「ふーん」
もそもそと着替えながら、火神と黒子はそんな会話をする。
* * *
「ボク、雪にはあまりいい思い出ないんですよ」
ズ、とお決まりのバニラシェイクを片手に黒子は呟いた。
「は?」
黒子の目の前には、お決まりのハンバーガーの山をたいらげていく火神。
「好き、なんですけどね」
「寒いから?」
「……溶けてしまうから、です」
「そりゃ雪は溶けるもんだろ」
「…ボクがですよ」
黒子はふい、と窓の外に目をやった。
止みそうにない雪はうっすらと地面を白に染め始めている。
「雨よりも、雪の中にいるボクは見つけにくいそうです」
「……確かに」
「昔、作った雪だるまのとなりで座って遊んでたら近所の子に思いきり雪玉投げられまして。その子が言うには『雪だるまが並んでるんだと思った』そうですよ」
懐かしむように、黒子は目を細めた。
「…でもよ」
ちょっと間を空けて、火神が口を開く。
「多分オレ見つけられると思う」
根拠とかねーけど。
そう付け足してまた火神はハンバーガーを口に運ぶ。
「…それはそれは」
クス、と黒子は静かに微笑む。
「嬉しいですね、とても」
「別に慣れたってわけじゃねーけど…オレにはもう影薄いなんてイメージねぇもん」
「…そう、なんですか?」
「弱っそーなイメージはあるけどな」
ニィ、と火神が口の端を持ち上げて笑った。
「それでもいいですよ」
黒子もふわり、優しく微笑んだ。
* * *
ハンバーガーをたいらげた火神と黒子は店を後にする。
雪も小降りになっていた。
「…手袋忘れました」
「バカだな」
「そんな訳で火神くん、手繋いでいいですか」
しゃく、と少しばかり積もった雪を踏みわけて行く。
火神が立ち止まって振り返った。
そして左手を黒子に差し出す。
「…どーぞ」
ぱちくり、そんな効果音が聞こえそうな感じに黒子は瞬きをして
それから差し出された手とその腕に思いきり抱き着いた。
触れあったところがやけに熱く感じたが、多分幸せだからだと思うことにした。
しろのうた
(雪もたまにはいいかもしれない)
END
090302
体育館にカントクであるリコの声が響いた。
「今日はここまでね、お疲れ様でした!解散!」
その声と同時に部員たちはバラける。
一年生は片付けのために。
二年生は一足先に着替えるために部室に。
「火神くん」
「ん?」
「ついでにこれ乗っけてもらっていいですか」
「おぅ」
道具を倉庫にしまいに火神と黒子はそこにいた。
それから二人で部室に戻る。
「今日寒いですね…」
「朝雨降ってたしな」
「止んでるといいのですが…」
「お疲れー先あがるなー」
「あぁ、ども」
「お疲れ様です」
部室に入った二人とすれ違いに日向が帰って行った。
ふと、誰かが口を開く。
「…あ、雪」
「え?……おー、マジだ!」
部室の小さな窓からちらちらと白が舞っているのが見てとれた。
「……寒いはずですね」
「オレ日本で雪見るの初めてだ」
「ここらへんはあまり降りませんから…今年は暖冬だと言われてましたしね」
「だんとう…?」
「暖かい冬のことですよ」
「ふーん」
もそもそと着替えながら、火神と黒子はそんな会話をする。
* * *
「ボク、雪にはあまりいい思い出ないんですよ」
ズ、とお決まりのバニラシェイクを片手に黒子は呟いた。
「は?」
黒子の目の前には、お決まりのハンバーガーの山をたいらげていく火神。
「好き、なんですけどね」
「寒いから?」
「……溶けてしまうから、です」
「そりゃ雪は溶けるもんだろ」
「…ボクがですよ」
黒子はふい、と窓の外に目をやった。
止みそうにない雪はうっすらと地面を白に染め始めている。
「雨よりも、雪の中にいるボクは見つけにくいそうです」
「……確かに」
「昔、作った雪だるまのとなりで座って遊んでたら近所の子に思いきり雪玉投げられまして。その子が言うには『雪だるまが並んでるんだと思った』そうですよ」
懐かしむように、黒子は目を細めた。
「…でもよ」
ちょっと間を空けて、火神が口を開く。
「多分オレ見つけられると思う」
根拠とかねーけど。
そう付け足してまた火神はハンバーガーを口に運ぶ。
「…それはそれは」
クス、と黒子は静かに微笑む。
「嬉しいですね、とても」
「別に慣れたってわけじゃねーけど…オレにはもう影薄いなんてイメージねぇもん」
「…そう、なんですか?」
「弱っそーなイメージはあるけどな」
ニィ、と火神が口の端を持ち上げて笑った。
「それでもいいですよ」
黒子もふわり、優しく微笑んだ。
* * *
ハンバーガーをたいらげた火神と黒子は店を後にする。
雪も小降りになっていた。
「…手袋忘れました」
「バカだな」
「そんな訳で火神くん、手繋いでいいですか」
しゃく、と少しばかり積もった雪を踏みわけて行く。
火神が立ち止まって振り返った。
そして左手を黒子に差し出す。
「…どーぞ」
ぱちくり、そんな効果音が聞こえそうな感じに黒子は瞬きをして
それから差し出された手とその腕に思いきり抱き着いた。
触れあったところがやけに熱く感じたが、多分幸せだからだと思うことにした。
しろのうた
(雪もたまにはいいかもしれない)
END
090302