火黒(2009/02/19~2010/11/21分)
──それは一体どんな感覚なのだろう、と昔思ったことがある。
だが同時に、自分がそんな感情を誰かに抱くことがあるのだろうか、とも思った。
…現在の結果だけを言えば、イエス。
体力だけが取り柄の彼が、もう寝てしまっているなんて珍しい。
風呂上がりの黒子は静かに笑う。
乾ききっていない赤髪がおとなしいのが、幼さの滲み出る寝顔が、なんとも言えず。全身にじわじわとあたたかさが広がる心地がたまらない。
タオルを頭にかぶったまま、そのベッドの端に腰掛ける。
部屋には火神の規則正しい呼吸音しか聞こえない。目を閉じてその音を聞いていたら、自分まで眠たくなってきた。
火神の机にタオルを置き、掛け布団を引っ張って自分と火神に掛ける。
「……んー…?」
「あ」
「…黒子?」
「すみません、起こしてしまいましたか?」
「やー…つーか、オレ寝てたか」
「疲れてるんじゃないですか?ボクも眠いです」
「………」
「今日はおとなしく寝るのがベストだと思います」
「…わーったよ」
少々不満そうな顔をしながらも、火神はおとなしくなった。
「電気消しますよ」
「おー」
カチリ。という音と共に部屋は暗くなり、明かりは若干開いたカーテンから差し込むだけになった。
──幸せだなあ、と。それだけが心の中に浮かんだ。
なぜって、それは。そう考えて、早々にやめた。理由なんてあとからいくらでもついてくるのだ。キリがないということは容易に想像ができる。
おやすみ、と声をかけられて、はい、と返事をする。
しあわせだ。
とろとろと眠りに落ちていく中で、昔思ったことがふと思い出される。
あの頃は、まさか未来がこんなことになるとは夢にも思わず。
空想のものだった感情を抱く相手が同性だとも、夢にも思わず。
これは君を好きになって知ったこと。
きっとこれからも、ボクの知らないことをたくさん実感するんだろう。
"恋は盲目"を実感
(二人一緒ならそれで、とか言えるくらいに。)
END
101121
「キスで窒息」様提出作品
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