火黒(2009/02/19~2010/11/21分)




「…そういえば、結構気になってたことがあるんですけど」
「ん?」
「火神君は、ボクのどこが好きなんですか?」
「……今聞かきゃいけねぇことじゃないよな」
「思い出してしまったので」

火神の言う、今は。
火神宅で、外はもう静かな夜で、更に言うならば現在進行形で二人はキスをしていた。
唐突に言い出すものだから、何かと思えば。

「とりあえずもっかい…」
「言ってくれたらいいですよ。あ、ちなみに全部っていうのは極力無しで」
「え、なにそれ、どう考えてもオレ不利じゃね?」
「……そんなに言うところがないんですか」
「違っ、そういう意味じゃねぇってば」

とうとう唸り出してしまった火神に、黒子はごめんなさい、と口に出さず呟いた。
本当は自分でも野暮な質問であるとはわかっているのだ。ただ、自分で考えてもマイナスなところしか出なかった。だから聞いてみたくなったのだ。

「えーと、オレを見上げるときの顔」
「あ、はい」

ひとつ、と火神が喋り出す。

髪の触り心地。
空みたいな目。
時々甘えてくるところ。

「…とか?」
「へぇ」
「…あー…でもやっぱり一番はバスケしてるときかな」
「?」
「オレも楽しいし、お前も機嫌良いし!」
「………ありがとうございます。ごめんなさい、こんな質問して」
「まとめると全部」
「…はい。自分で考えてみたら、ぐるぐるしてしまって…」
「お前結構そういうのあるよな」

嫌な笑い方をする火神に、う、と言葉を詰まらせる。

「まあ結局はさー」
「…?」
「理由とか数えてたらキリねぇって。そんなん後からいくらでもついてくる」
「……そうですね」
「…っつーわけで、」
「あ、ちょっ……」

この、もう本当、心臓に悪い。
そりゃあそういう条件を出したのは自分だけど。

「ん…っ」

……それでも、いい、か。

どんな言葉で形容しようとも、最後はやはり直球の、その一言しかないのだから。
それがどんなに、自分の胸に響いたかなんて、この人は考えることもないんだろう。
それでいい、この幸せはボクが独り占めします。

「火神、君…」
「ん…」
「……好き」
「…オレも、好き」

ボクはまた、君へと溺れていく。


END

101011

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