火黒(2009/02/19~2010/11/21分)



「ふと思ったんですけど、」
「ん?」
「日向先輩と木吉先輩って、もしかして同じ中学だったんでしょうか」
「…は?」

ズズズ、と黒子はシェイクを片手に唐突に口を開いた。
いきなりなんで、と火神はバーガーを食べながら相槌を打つ。

「…名前呼びだったじゃないですか」
「……だっけ?」
「はい」

なんだかいいな、と思ったので。
そう呟いて、ほんの少し寂しそうに黒子は口元を緩めた。

「ふーん……でもお前青峰と、桃井だっけ?に呼ばれてたじゃん」
「あれは…こう言っちゃ悪いですが一方的なものですから」
「…あ、そう」

最後のひとつのバーガーを飲み込んで、コーラを口にしながら火神は黒子を見た。
なんですかと言うように見上げる瞳。

「なに、要は名前で呼んでほしいわけ?」

頬杖をついて黒子を見つめれば、ぴたりと動きが止まった。

「……別に。と、いうか火神君ボクの名前知ってますか」
「好きな奴の名前知らねぇ奴がいたら会ってみてぇよ…なあテツヤ?」
「っ」

ニッと笑う火神の顔を見て、黒子は俯いてシェイクを両手で握りしめた。
自分から言っておいて恥ずかしくなったのか、黒子の頬は朱に染まっている。
それから少し間をあけて黒子が口を開いた。

「……そ、ですよね、……すみません、…大我、君」

目を見開く。今の言葉を脳内でゆっくりと再生する。

「………ごめん黒子」
「え」

勢いよく火神が机に突っ伏したせいでゴツンという音が聞こえて、黒子が顔をあげた。

「…予想以上に、なんか、……ヤバイ」
「……火神君、耳赤くないですか?」
「だっかっら!ヤバかったんだって!!」
「煩いです火神君、落ち着いて下さい」
「ムリ!てゆーかお前一瞬で冷めすぎじゃね!?」

よしよしと頭を撫でる黒子の手をどけて、火神は顔を上げた。

「……そんなこと、ないと思いますよ」

黒子が小さく言った通り。
頬の熱はそんなにすぐ引くはずもなく、火神が見た黒子の頬はまだほんのりと赤みを残している。

「…帰りましょうか」
「……だな」

微妙な距離を空けながら、二人は店を後にする。
無機質な店員の声が、やけに響いた。

別に、本当に少し、気になっただけのこと。
自分から言い出しておいてアレだが、どうにも気恥ずかしいというか、しっくりこないというか。

「火神君」
「なに、黒子」

あぁ、やっぱり。
そのトーンが心地良い。
そう気にすることでもないだろうと、黒子は火神に見えないように嬉しかったですよ、と微笑んだ。




END

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