火黒(2009/02/19~2010/11/21分)

「火神くん、コレして下さい」
「…ネクタイ?」

昼休み、中庭の木陰で火神と黒子のランチタイム。
いきなり黒子がどこからともなく黒いネクタイを取り出した。

「なんで」
「…ボク火神くんのネクタイしたところ見たいんです」
「いやいやいや意味わかんねーよそれ」
「…とっても似合うと思うんですけど…」

そう言うと、黒子はあからさまにしゅんとした。
(他の人から見たらそう大きな変化ではないのだが)
火神はその顔、というか目に弱いのだ。
それはもう、いつもの彼のイメージをぶち壊すくらい。

「………………わーったよ」
「!」

火神は黒子からネクタイをもぎ取ると、慣れたような手つきでするすると首に巻いていく。

………が。

「…ん?」
「なんか変ですよ火神くん」

慣れたような手つきに見えたのだが、火神に巻かれたネクタイは不自然に曲がっている。

「え、」
「もう、やってあげますからこっち向いて下さい」
「ん」

スッと黒子の手が、ネクタイを掴む。
そして、それをちょっと引っ張った。

「なっ、………!」

当然引っ張られた火神の体はぐらつき、黒子はそれを受けとめるように唇に触れた。
もちろん、自分の唇で。

「……っんのテメ!」

ぷはっとひとつ、火神は息を吐き出す。

「…火神くんはやっぱりかっこいいですね」

真っ赤になっている火神を見て、黒子は微笑んだ。

「お前、これやりたかっただけだろ…!」

ビッと火神はネクタイを取る。
してやられた、なんか悔しい。

「だって、火神くんは背が高いから」
「はぁ?」
「ボクが爪先立ちしても全然届かないんですよ。その唇には」
「…………お前、よくそんなストレートに…」

ふぅ、とほてった顔を隠すように下を向いて火神はため息をつく。
黒子はこんな奴だったか?

「だって、火神くんですから」

好きなんですよ、と黒子は小さく呟いた。

「……あっそ」

火神は下を向いたまま。
そのとき、黒子が火神と同じように顔を真っ赤にしていたことを

…火神は知らない。


たまにはボクから

(……というわけです)
(…テメー…)



END

090220
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