2017.10.22 広島での出来事

「なんでここに…?どうやって?」

「フロントに電話して開けてもらった」

そんな無茶苦茶な…。


「俺の活動時間はこれからだからな。ずっと待ってたんだぜ?テルとイイことシようと思って」

「…いいこと、って…?ひぁっ!」

いつもと違う雰囲気を醸し出す彼に俺が身体を強張らせていると、ヒサシはいきなり俺の右耳を甘噛みした。

「ぁっ、ぁんっ…」

そして耳朶から首筋、鎖骨へとついばむように口唇を寄せていく。

「あッ、ヒサ、シ…」

「スゲー、イイ声…」

何の嫌がらせなのか、どういうつもりなのか、俺の頭は混乱するばかり。


「あぁっ…なんで、こんな事っ…?」


ヒサシの息使いを至近距離で感じ、これだけの事で反応してしまう自分が恥ずかしかった。
俺の問い掛けに、ヒサシは顔を上げる。



「お前を抱きたいからに決まってんじゃん」

「ヒサ…んっ!」

それだけ言うと、俺は口唇を奪われた。


「ん…ふっ、ぁっ…」

離れては触れ、何度も口唇が触れる。その度に俺からは声が漏れた。


「今日の歌も最高だった…」

キスの合間にヒサシが呟く。

「特に、バラードの切ない声、切ない表情、マイクを伝うお前の指…。全てを俺の物にしたい…」

「ヒ、サシ…」

「その声で俺の名前をもっと聴かせろ」

「んんッ!!」


今度は深く吸い付き、俺の歯列に舌を侵入させてきた。
強引に舌を絡めながら、俺の股間を擦るようにヒサシの太ももが俺の内股に割って入ってくる。両手を壁に固定されている俺は、されるがままだった。

「ん、んぁっ…はぁんんっ…」

強引なキスの間にふと目を開けると、ヒサシの切れ長の目とかち合った。鋭い視線で見つめられると、目が離せない。
…あぁ、今日もこんな瞳をしていたな。
ライブ中にスクリーンで大きく映し出されたその表情に、男の俺でもドキッとした。一瞬時間が止まったかのように美しかった。この瞳に囚われない人間なんて居るのだろうか。


濃厚な口付けが終わらないまま、ヒサシは片手を俺の手首から離し、俺のシャツに手を入れて肌に滑らせた。撫で回すその手が妖艶で、俺の頭は何も考えられなくなるぐらい痺れていった。
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