夜伽


―――数日後…




仕事の合間、俺は一人で休憩室で休んでいた


「テル、大丈夫か?」

ふと気が付けば、目の前にはタクロウが立っていた
心配そうな表情で俺の前の椅子に腰掛ける

「どうしたの、タクロウ」

「どうした、って…
最近テル疲れてるみたいだから」

タクロウはやっぱり優しいな
皆の前では元気に振る舞ってたつもりだけど、タクロウにはそう見えてなかったのかな

「ううん、大丈夫だよ」

俺は心配を掛けたくなくて、得意の笑顔で微笑んでみせた
それでもタクロウはまだ心配そうに俺の顔を覗き込む

するとタクロウは身を乗り出し、俺の顔の一点を見つめた

「テル、その顔の傷どうしたんだよ!」

次の瞬間、タクロウの手が伸びてきて俺の顔に触れた

「ぁ…」

初めて触れられたタクロウの手は大きくて温かくて、優しかった

…俺の恋人は、こんな風に触れてくれる事なんてない


やめて…
そんな温かい手で、そんな優しい目で俺を見ないで



「…テル?」

「あっ、何でもないよ!ちょっと何かで切っちゃったみたい」

俺はハッとして、慌てて嘘を言った


「そっか…
テルはドジな所があるからな、気を付けろよ」

「あはは」
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