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「名無し、この間お前が言ってた資料だ
明日の実験に使うらしいから早めに返しとけよ?」
『有り難う御座います、阿近三席
では失礼致します』
…技術開発局霊波計測研究所を後にした私は一人、
自室という名の研究室へ足を進める
暦はまだ皐月だというのに
昼間に掛けて日の光りは燦々と地上に降り注ぎ、
緑香る風が隊舎の廊下を吹き抜ける
室内に入れば、換気扇を回さずにはいられぬ湿気と蒸し暑さに
誰もがその額に汗を滲ませていた
そんな気候を不快に感じながらも
私は阿近三席から借りた資料を片手に研究室へと入り、灯りを点す
実験器具や棚が狭苦しく立ち並ぶ中、
机の上へと資料を置いた私は
静かに 溜息を溢した
『… 涅隊長…』
十二番隊第十席 無名名無し
私は一生この身を 涅隊長へ捧げる
…この言葉を耳にした者は必ず驚愕し、
脅迫されたのかと恐れ戦くのだが
これは命令でも 強制でも無い
私自らが勝手にそう定め、
涅隊長に変わらぬ忠誠心を誓った
院生時代のあの日
初めてこの瞳に映した時からずっと
私は涅隊長を慕い続け、憧れ続け入隊して十数年
涅隊長の駒として務め続けてきた
駒として使われる度に溢れ出る喜び
切り裂かれようが
腕を引き千切られようが
涅隊長が笑って下さるのなら
私は命さえも 惜しくはなかった
… しかし
其れ程の幸せを感じていても
私の口からは
溜息ばかりが溢れ 地面へ落ちて行く…
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