赤きヒヤシンスを贈られし君へ
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「名無し、お前何とかして来いよ」
『何をですか?』
「…」
阿近三席、もとい副隊長は私からの問いにその何かを目線だけで示す。
そこには技術開発局の局員を前に激怒し、声を荒げる涅隊長の姿があった。
どうやら採集されたサンプルのデータがあるべき場所に保存されていなかったという、
本来ならば取るに足らない些細なミスに対して必要以上に…否、
𠮟責というより八つ当たりをしているようだった。
可哀想に、怒られた局員は顔面蒼白で震えが止まらないまま仕事へ戻っていく。
あんな不機嫌極まりない隊長をただの隊士である私にどうにかしてこいだなんて、
副隊長は何を考えているのだろう。
そもそも今は三席の仕事を引き継ぐ為に副隊長の後をついて回って
ただでさえ忙しいというのに、隊長の機嫌まで一々気にしていたら身が持たない。
『そういうのは副隊長の仕事なのでは?』
「いや、原因はお前だろ」
『はぁ?』
思わず礼儀を欠くような態度を取ってしまったがお互い気にすることは無い。
私が原因…と言われても全く身に覚えがない。
最近はこれといって会話をしていないし、
作業報告書を提出した時に事務的なやり取りをしたくらいだろうか。
その時前十二番隊隊長である浦原喜助さんが技術開発局に顔を出していたけれど…。
あの人が原因なんじゃないかと私は思っている。
兎に角私と隊長の機嫌は無関係だ、どうにも出来ない…と副隊長に向きなおれば
唐突に頭に手を置かれた。
『えっ、ちょっと…何』
「隊長の方見てみろよ」
突然の事に振り払うことも出来ず私の頭はわしわしと撫でられる。
意味が解らず取り敢えず副隊長の言う通りに、ちらりと横目で隊長の方を見ると
先程よりも明らかに怒り心頭といった様子で、
わなわなと両の手を震わせながらこちらを睨んでいた。
マズイ、業務中にふざけているのを見られてしまった。
あんなに機嫌が悪いのに、これは確実に先程の人よりも更に怒られてしまう。
副隊長も副隊長で何故隊長の目に触れるところでこんなことをするのか…。
鬼の形相でつかつかと向かってくる涅隊長に、私は何もかも諦めて目を伏せた。
バチーンという音が局内に響く。
驚いて顔を上げれば、私の頭に置かれた阿近副隊長の手が
涅隊長によって叩き落されていた。
痛みに眉を顰める副隊長を尻目に、隊長は私の腕を掴むとそのまま出口へと引っ張っていく。
何が起こったのか一切分からず、混乱しながらも視線だけで助けを求めたが
他の局員は憐れみの顔で、副隊長は赤くなった腕をさすりながらニヤニヤと笑っているだけだったので
私は副隊長を恨みながら、ただ大人しく連行されるしかなかった。
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