不死鳥の騎士団
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みんなで地下に降りると、会議が終わったばかりのようだった。
十本以上もの巻紙を一度に集めようとしながら、ビルが声をあげた。
「それじゃ、マッド‐アイは、グリーンランド上空を経由しなかったんだね?」
「そうしようとしたわよ」
トンクスがそう言いながら、ビルを手伝いにすたすた近づいてきたが、たちまち、最後に一枚残っていた羊皮紙の上に蝋燭をひっくり返した。
「あ、しまった──ごめん──」
ナマエはその羊皮紙に何かの建物の設計図のような物が描かれているのを見た。しかし、モリーさんがすぐに気づいて消してしまった。
ナマエはごまかすように申し出た。
「えっと、モリーさん。手伝います」
「ええ、お願いするわ──あなたたちも、真夜中にならないうちに食べたいなら手を貸してちょうだいな」
モリーさんが振り返ってみんなに声をかけた。
「あら、ハリー。あなたはゆっくりしていていいのよ。長旅だったもの」
テーブルにはハリーとシリウス、そして気まずそうにしているマンダンガスが残っていた。
ハリーの怒りはひとまず引っ込んでいたようで、ナマエはほっと胸を撫で下ろした。
みんなで夕食の準備をする間、ナマエはトンクスが運ぼうとした食材に何度もぶつかった。
「ほんとごめん!」
「──トンクスって本当にドジ」
ナマエはトンクスがひっくり返したまな板に頭を小突かれ、小さく悪態をついた。ロンがニヤッとした。
「君もずいぶんのろくさいぜ。だって、君以外はみんな避けてるだろ」
ロンが言うとジニーが笑ったので、ナマエはむくれた。すると今度はモリーさんの叫び声が聞こえた。
「フレッド、ジョージ──おやめっ!普通に運びなさい!」
ナマエの頬を熱い何かがかすめたと思った次の瞬間、テーブルについていたハリーたち三人が席から飛び退いた。
フレッドとジョージが、シチューの大鍋、バタービールの大きな鉄製の広口ジャー、重い木製のパン切り板、しかもナイフつきを、一緒くたにテーブルめがけて飛ばせたのだ。シチューの大鍋は、木製のテーブルの端から端まで、長い焦げ跡を残して滑り、落ちる寸前で止まった。バタービールの広口ジャーがガシャンと落ちて、中身があたり中に飛び散った。パン切りナイフは切り板から滑り落ち、切っ先を下にして着地し、不気味にプルプル振動した。
「……トンクスのがマシだ」
ナマエが頬の無事を確かめながら言った。
「まったくもう!」
モリーさんが叫んだ。
「そんな必要ないでしょっ──もうたくさん──何でもかんでもいちいち杖を振る必要はないのっ!」
「僕たち、ちょいと時間を節約しようとしたんだよ」
フレッドが急いで進み出て、テーブルからパンナイフを抜き取った。
「ごめんよ、シリウス。わざとじゃないぜ──」
ハリーもシリウスも笑っていた。マンダンガスは椅子から仰向けに転げ落ちていたが、悪態をつきながら立ち上がった。クルックシャンクスはシャーッと怒り声を出して食器棚の下に飛び込み、真っ暗な所で、大きな黄色い目をギラつかせていた。
「おまえたち」
シチューの鍋をテーブルの真ん中に戻しながら、アーサーさんが言った。
「母さんが正しい。おまえたちも成人したんだから、責任感というものを見せないと──」
「兄さんたちはこんな問題を起こしたことがなかったわ!」
モリーさんが二人を叱りつけながら、バタービールの新しい広口ジャーをテーブルにドンと叩きつけた。中身がさっきと同じぐらいこぼれた。
「ビルは、一ヤードごとに『姿現わし』する必要なぞ感じなかったわ!チャーリーは、何にでも見境なしに呪文をかけたりしなかった!パーシーは──」
途端に、空気が張り詰めた。アーサーさんは無表情になっていた。きょとんとしているハリーに向かって、ナマエとロンは何も言うな、と口の形で必死に伝え、首を横にブンブン振った。
「さあ、食べよう」
ビルが急いで言った。
「モリー、おいしそうだよ」
皿にシチューをよそい、テーブル越しにさし出しながら、ルーピンが言った。しばらくの間、皿やナイフ、フォークのカチャカチャ言う音や、みんながテーブルに椅子を引き寄せる音がするだけで、誰も話をしなかった。
ナマエは居心地が悪くてロンやハーマイオニーを見たが、二人とも気まずい空気に耐えることに集中していて、目を合わせてはくれなかった。ナマエは重苦しい雰囲気にまるで気づいていないような軽い声を出した。
「そういえば、もしかして──」
「チチオヤのことなら、すまない。まだ何もわからないんだ」
ナマエは毎度、食卓で同じことを聞くので、ルーピンが先回りして、しかし申し訳なさそうに答えた。そう言われてしまえば、ナマエはそれ以上何も聞くことができなかった。ナマエは肩を落としてシチューに視線を戻した。
──チチオヤの足取りはいまだに騎士団も、おそらく闇の陣営もつかめていないそうだった。しかし、ナマエは少なからず違和感を抱いていた。ルーピンや他の団員が知らなくとも、ダンブルドアまでもチチオヤの行方を知らないなんてことがあるだろうか?
チチオヤは用心深く、息子にすら手の内を明かさない。アーサーさんがいつか言っていたように、秘密主義だ。そして、ナマエの知る限りでは、チチオヤは大いに偏見を持った純血主義者だった。ナマエは、父が真に心を許しているのは、ダンブルドアとマッド-アイだけではないかと推測していた。だが、同時にそうした疑いを抱く自分に、どこか落ち着かないものを感じてもいた。周囲を測りにかけるのはルーピンたち騎士団を信頼しきれていない証拠のようで、ひどく居心地が悪かった。
気づけば皆それぞれが話し始めていた。アーサーさん、ビル、ルーピンは小鬼の動きについて議論し、トンクスはジニーとハーマイオニーのリクエストに答えて顔を変化させて楽しませていた。フレッドとジョージがマンダンガスの商売の話でどっと沸き、モリーさんが顔を顰めた。
ナマエはルバーブ・クランブルを食べ終えてスプーンを置いた。それぞれが満ち足りてくつろいだ様子で椅子に寄り掛かり、トンクスの顔は元どおりになり大欠伸をしていた。ジニーはクルックシャンクスを食器棚の下から誘い出し、床にあぐらをかき、バタービールのコルク栓を転がして猫に追わせていた。
「もうおやすみの時間ね」
モリーさんが言った。
「いや、モリー、まだだ」
シリウスが空になった自分の皿を押し退け、ハリーのほうを向いて言った。
「いいか、君には驚いたよ。ここに着いたとき、君は真っ先にヴォルデモートのことを聞くだろうと思っていたんだが」
部屋の雰囲気がさーっと変わった。吸魂鬼が現れたときのような急激な変化だった。テーブル全体に戦慄が走った。ちょうどワインを飲もうとしていたルーピンは、緊張した面持ちで、ゆっくりとゴブレットを下に置いた。
「聞いたよ!」
ハリーは憤慨した。
「ロンとナマエとハーマイオニーに聞いた。でも、三人は言ったんだ、僕たちは騎士団に入れてもらえないから、だから──」
ナマエはバツの悪い気持ちと、シリウスがもっとハリーをけしかけてくれたら、ハリーがもっと騒いでくれたら、何か教えてもらえるかもしれないと言う希望もあった。
そうは思いつつも、ナマエはモリーさんの方をチラリと見た。モリーさんは背筋をピンと伸ばして椅子に掛けていた。ナマエは胃が重くなった。この愛情深い人を傷つけてしまうことは嫌だった。むしろ、チチオヤのように尊大で排他的な態度であれば、反抗しても心は痛まなかっただろう。
子供たちを巻き込まんとするシリウスの態度を、モリーさんは決して見過ごさなかった。
「ダンブルドアがおっしゃったことを、よもやお忘れじゃないでしょうね?この子は不死鳥の騎士団のメンバーではありません!「この子はまだ十五歳です。それに──」
「それに、ハリーは騎士団の大多数のメンバーに匹敵するほどの、いや、何人かを凌ぐほどのことをやり遂げてきた」
シリウスが言葉を被せた。穏便に済ませる気はないということが伝わってきた。
「誰も、この子がやり遂げたことを否定しやしません!」
モリーさんの声がいちだんと高くなり、拳が椅子の肘掛けで震えていた。
「ハリーは子供じゃない!」
シリウスがイライラと言った。
「大人でもありませんわ!」
モリーさんは、頬を紅潮させていた。
「シリウス、この子はジェームズじゃないのよ!」
「お言葉だが、モリー、わたしは、この子が誰か、はっきりわかっているつもりだ。それに、この子はあなたの息子じゃない」
シリウスが冷たく言った。
「息子も同然です。他に誰がいるって言うの?」
「わたしがいる!」
「あなたがアズカバンに閉じ込められていた間は、この子の面倒を見るのが少し難しかったのじゃありません?」
シリウスは椅子から立ち上がりかけた。
「モリー、このテーブルに着いている者で、ハリーのことを気遣っているのは、君だけじゃない」
ルーピンは厳しい口調で言った。
「シリウス、座るんだ」
シリウスは顔をこわばらせたままゆっくりと腰を下ろした。
「ハリーも、このことで意見を言うのを許されるべきだろう」
ルーピンが言葉を続けた。
「僕、知りたい。何が起こっているのか」
ハリーは即座に答えた。
「──わかったわ」
モリーさんはハリー以外の子供達を食卓から追い出すことも諦め、掠れた声で言った。ハリーは息を深く吸ってから言った。
「ヴォルデモートはどこにいるの?騎士団は何をしているの?」
ナマエを含んだほとんどが身体をこわばらせた。ハリーはそれに気づいた上で無視した。
「わからない。しかし、身を隠しながら仲間を増やそうと動いているんだ──」
シリウスが答えた。ダンブルドアが再結集させた騎士団のこと、闇の帝王の復活を認めない魔法省のこと、そのせいでダンブルドアが魔法省で煙たがられていること──どれもナマエにとっては正直、フレッドたちの「伸び耳」で得た情報以上のことはないように思えた。ナマエは落胆を顔に出さないように椅子に座り直した。
「でも、ヴォルデモートが『死喰い人』をもっと集めようとすれば、どうしたって復活したことが表ざたになるでしょう?」
ハリーは必死に言った。預言者新聞の言うとおり、闇の帝王の復活の目撃者はハリーだけなのだ。それ外に、復活を証明する証拠がないのは事実だった。
「ハリー、ヴォルデモートは魔法使いの家を個別訪問して、正面玄関をノックするわけじゃない」
シリウスが言った。
「騙し、呪いをかけ、恐喝する。隠密工作は手馴れたものだ。いずれにせよ、やつの関心は、配下を集めることだけじゃない。ほかにも求めているものがある。やつがまったく極秘で進めることができる計画だ。いまはそういう計画に集中している」
「配下集め以外に、何を?」
ハリーがすぐ聞き返した。シリウスとルーピンが、ほんの一瞬目配せしたような気がした。それからシリウスが答えた。
「極秘にしか手に入らないものだ」
ナマエは背筋を伸ばした。伸び耳では知り得なかったことをシリウスが口に出そうとしている。シリウスが言葉を続けた。
「武器のようなものというかな。前の時には持っていなかったものだ」
「前に勢力を持っていたときってこと?」
「そうだ」
「それ、どんな種類の武器なの?『アバダ ケダブラ』呪文より悪いもの?」
「もうたくさん!」
それまで、黙って聞いていたモリーさんが叫んだ。カンカンに怒った顔だ。
「いますぐベッドに行きなさい。全員です」
モリーさんはハリー、フレッド、ジョージ、ロン、ハーマイオニーをぐるりと見渡した。シリウスを見ながら、おばさんは小刻みに震えていた。
「あなたはハリーに十分な情報を与えたわ。これ以上何か言うなら、いっそハリーを騎士団に引き入れたらいいでしょう」
「そうして!」
ハリーが飛びつくように言った。
「僕、入る。入りたい。戦いたい」
「だめだ」
答えたのは、モリーさんではなく、ルーピンだった。
「騎士団は、成人の魔法使いだけで組織されている」
ルーピンが続けた。
「学校を卒業した魔法使いたちだ」
フレッドとジョージが口を開きかけたので、ルーピンがつけ加えた。
「危険が伴う。君たちには考えも及ばないような危険が……シリウス、モリーの言うとおりだ。私たちはもう十分話した」
シリウスは中途半端に肩をすくめたが、言い争いはしなかった。モリーさんは威厳たっぷりに息子たちとハーマイオニーを手招きした。ナマエは初めに立ち上がった。続いて、一人、また一人とみんなが立ち上がった。ハリーも敗北を認め、みんなに従った。
十本以上もの巻紙を一度に集めようとしながら、ビルが声をあげた。
「それじゃ、マッド‐アイは、グリーンランド上空を経由しなかったんだね?」
「そうしようとしたわよ」
トンクスがそう言いながら、ビルを手伝いにすたすた近づいてきたが、たちまち、最後に一枚残っていた羊皮紙の上に蝋燭をひっくり返した。
「あ、しまった──ごめん──」
ナマエはその羊皮紙に何かの建物の設計図のような物が描かれているのを見た。しかし、モリーさんがすぐに気づいて消してしまった。
ナマエはごまかすように申し出た。
「えっと、モリーさん。手伝います」
「ええ、お願いするわ──あなたたちも、真夜中にならないうちに食べたいなら手を貸してちょうだいな」
モリーさんが振り返ってみんなに声をかけた。
「あら、ハリー。あなたはゆっくりしていていいのよ。長旅だったもの」
テーブルにはハリーとシリウス、そして気まずそうにしているマンダンガスが残っていた。
ハリーの怒りはひとまず引っ込んでいたようで、ナマエはほっと胸を撫で下ろした。
みんなで夕食の準備をする間、ナマエはトンクスが運ぼうとした食材に何度もぶつかった。
「ほんとごめん!」
「──トンクスって本当にドジ」
ナマエはトンクスがひっくり返したまな板に頭を小突かれ、小さく悪態をついた。ロンがニヤッとした。
「君もずいぶんのろくさいぜ。だって、君以外はみんな避けてるだろ」
ロンが言うとジニーが笑ったので、ナマエはむくれた。すると今度はモリーさんの叫び声が聞こえた。
「フレッド、ジョージ──おやめっ!普通に運びなさい!」
ナマエの頬を熱い何かがかすめたと思った次の瞬間、テーブルについていたハリーたち三人が席から飛び退いた。
フレッドとジョージが、シチューの大鍋、バタービールの大きな鉄製の広口ジャー、重い木製のパン切り板、しかもナイフつきを、一緒くたにテーブルめがけて飛ばせたのだ。シチューの大鍋は、木製のテーブルの端から端まで、長い焦げ跡を残して滑り、落ちる寸前で止まった。バタービールの広口ジャーがガシャンと落ちて、中身があたり中に飛び散った。パン切りナイフは切り板から滑り落ち、切っ先を下にして着地し、不気味にプルプル振動した。
「……トンクスのがマシだ」
ナマエが頬の無事を確かめながら言った。
「まったくもう!」
モリーさんが叫んだ。
「そんな必要ないでしょっ──もうたくさん──何でもかんでもいちいち杖を振る必要はないのっ!」
「僕たち、ちょいと時間を節約しようとしたんだよ」
フレッドが急いで進み出て、テーブルからパンナイフを抜き取った。
「ごめんよ、シリウス。わざとじゃないぜ──」
ハリーもシリウスも笑っていた。マンダンガスは椅子から仰向けに転げ落ちていたが、悪態をつきながら立ち上がった。クルックシャンクスはシャーッと怒り声を出して食器棚の下に飛び込み、真っ暗な所で、大きな黄色い目をギラつかせていた。
「おまえたち」
シチューの鍋をテーブルの真ん中に戻しながら、アーサーさんが言った。
「母さんが正しい。おまえたちも成人したんだから、責任感というものを見せないと──」
「兄さんたちはこんな問題を起こしたことがなかったわ!」
モリーさんが二人を叱りつけながら、バタービールの新しい広口ジャーをテーブルにドンと叩きつけた。中身がさっきと同じぐらいこぼれた。
「ビルは、一ヤードごとに『姿現わし』する必要なぞ感じなかったわ!チャーリーは、何にでも見境なしに呪文をかけたりしなかった!パーシーは──」
途端に、空気が張り詰めた。アーサーさんは無表情になっていた。きょとんとしているハリーに向かって、ナマエとロンは何も言うな、と口の形で必死に伝え、首を横にブンブン振った。
「さあ、食べよう」
ビルが急いで言った。
「モリー、おいしそうだよ」
皿にシチューをよそい、テーブル越しにさし出しながら、ルーピンが言った。しばらくの間、皿やナイフ、フォークのカチャカチャ言う音や、みんながテーブルに椅子を引き寄せる音がするだけで、誰も話をしなかった。
ナマエは居心地が悪くてロンやハーマイオニーを見たが、二人とも気まずい空気に耐えることに集中していて、目を合わせてはくれなかった。ナマエは重苦しい雰囲気にまるで気づいていないような軽い声を出した。
「そういえば、もしかして──」
「チチオヤのことなら、すまない。まだ何もわからないんだ」
ナマエは毎度、食卓で同じことを聞くので、ルーピンが先回りして、しかし申し訳なさそうに答えた。そう言われてしまえば、ナマエはそれ以上何も聞くことができなかった。ナマエは肩を落としてシチューに視線を戻した。
──チチオヤの足取りはいまだに騎士団も、おそらく闇の陣営もつかめていないそうだった。しかし、ナマエは少なからず違和感を抱いていた。ルーピンや他の団員が知らなくとも、ダンブルドアまでもチチオヤの行方を知らないなんてことがあるだろうか?
チチオヤは用心深く、息子にすら手の内を明かさない。アーサーさんがいつか言っていたように、秘密主義だ。そして、ナマエの知る限りでは、チチオヤは大いに偏見を持った純血主義者だった。ナマエは、父が真に心を許しているのは、ダンブルドアとマッド-アイだけではないかと推測していた。だが、同時にそうした疑いを抱く自分に、どこか落ち着かないものを感じてもいた。周囲を測りにかけるのはルーピンたち騎士団を信頼しきれていない証拠のようで、ひどく居心地が悪かった。
気づけば皆それぞれが話し始めていた。アーサーさん、ビル、ルーピンは小鬼の動きについて議論し、トンクスはジニーとハーマイオニーのリクエストに答えて顔を変化させて楽しませていた。フレッドとジョージがマンダンガスの商売の話でどっと沸き、モリーさんが顔を顰めた。
ナマエはルバーブ・クランブルを食べ終えてスプーンを置いた。それぞれが満ち足りてくつろいだ様子で椅子に寄り掛かり、トンクスの顔は元どおりになり大欠伸をしていた。ジニーはクルックシャンクスを食器棚の下から誘い出し、床にあぐらをかき、バタービールのコルク栓を転がして猫に追わせていた。
「もうおやすみの時間ね」
モリーさんが言った。
「いや、モリー、まだだ」
シリウスが空になった自分の皿を押し退け、ハリーのほうを向いて言った。
「いいか、君には驚いたよ。ここに着いたとき、君は真っ先にヴォルデモートのことを聞くだろうと思っていたんだが」
部屋の雰囲気がさーっと変わった。吸魂鬼が現れたときのような急激な変化だった。テーブル全体に戦慄が走った。ちょうどワインを飲もうとしていたルーピンは、緊張した面持ちで、ゆっくりとゴブレットを下に置いた。
「聞いたよ!」
ハリーは憤慨した。
「ロンとナマエとハーマイオニーに聞いた。でも、三人は言ったんだ、僕たちは騎士団に入れてもらえないから、だから──」
ナマエはバツの悪い気持ちと、シリウスがもっとハリーをけしかけてくれたら、ハリーがもっと騒いでくれたら、何か教えてもらえるかもしれないと言う希望もあった。
そうは思いつつも、ナマエはモリーさんの方をチラリと見た。モリーさんは背筋をピンと伸ばして椅子に掛けていた。ナマエは胃が重くなった。この愛情深い人を傷つけてしまうことは嫌だった。むしろ、チチオヤのように尊大で排他的な態度であれば、反抗しても心は痛まなかっただろう。
子供たちを巻き込まんとするシリウスの態度を、モリーさんは決して見過ごさなかった。
「ダンブルドアがおっしゃったことを、よもやお忘れじゃないでしょうね?この子は不死鳥の騎士団のメンバーではありません!「この子はまだ十五歳です。それに──」
「それに、ハリーは騎士団の大多数のメンバーに匹敵するほどの、いや、何人かを凌ぐほどのことをやり遂げてきた」
シリウスが言葉を被せた。穏便に済ませる気はないということが伝わってきた。
「誰も、この子がやり遂げたことを否定しやしません!」
モリーさんの声がいちだんと高くなり、拳が椅子の肘掛けで震えていた。
「ハリーは子供じゃない!」
シリウスがイライラと言った。
「大人でもありませんわ!」
モリーさんは、頬を紅潮させていた。
「シリウス、この子はジェームズじゃないのよ!」
「お言葉だが、モリー、わたしは、この子が誰か、はっきりわかっているつもりだ。それに、この子はあなたの息子じゃない」
シリウスが冷たく言った。
「息子も同然です。他に誰がいるって言うの?」
「わたしがいる!」
「あなたがアズカバンに閉じ込められていた間は、この子の面倒を見るのが少し難しかったのじゃありません?」
シリウスは椅子から立ち上がりかけた。
「モリー、このテーブルに着いている者で、ハリーのことを気遣っているのは、君だけじゃない」
ルーピンは厳しい口調で言った。
「シリウス、座るんだ」
シリウスは顔をこわばらせたままゆっくりと腰を下ろした。
「ハリーも、このことで意見を言うのを許されるべきだろう」
ルーピンが言葉を続けた。
「僕、知りたい。何が起こっているのか」
ハリーは即座に答えた。
「──わかったわ」
モリーさんはハリー以外の子供達を食卓から追い出すことも諦め、掠れた声で言った。ハリーは息を深く吸ってから言った。
「ヴォルデモートはどこにいるの?騎士団は何をしているの?」
ナマエを含んだほとんどが身体をこわばらせた。ハリーはそれに気づいた上で無視した。
「わからない。しかし、身を隠しながら仲間を増やそうと動いているんだ──」
シリウスが答えた。ダンブルドアが再結集させた騎士団のこと、闇の帝王の復活を認めない魔法省のこと、そのせいでダンブルドアが魔法省で煙たがられていること──どれもナマエにとっては正直、フレッドたちの「伸び耳」で得た情報以上のことはないように思えた。ナマエは落胆を顔に出さないように椅子に座り直した。
「でも、ヴォルデモートが『死喰い人』をもっと集めようとすれば、どうしたって復活したことが表ざたになるでしょう?」
ハリーは必死に言った。預言者新聞の言うとおり、闇の帝王の復活の目撃者はハリーだけなのだ。それ外に、復活を証明する証拠がないのは事実だった。
「ハリー、ヴォルデモートは魔法使いの家を個別訪問して、正面玄関をノックするわけじゃない」
シリウスが言った。
「騙し、呪いをかけ、恐喝する。隠密工作は手馴れたものだ。いずれにせよ、やつの関心は、配下を集めることだけじゃない。ほかにも求めているものがある。やつがまったく極秘で進めることができる計画だ。いまはそういう計画に集中している」
「配下集め以外に、何を?」
ハリーがすぐ聞き返した。シリウスとルーピンが、ほんの一瞬目配せしたような気がした。それからシリウスが答えた。
「極秘にしか手に入らないものだ」
ナマエは背筋を伸ばした。伸び耳では知り得なかったことをシリウスが口に出そうとしている。シリウスが言葉を続けた。
「武器のようなものというかな。前の時には持っていなかったものだ」
「前に勢力を持っていたときってこと?」
「そうだ」
「それ、どんな種類の武器なの?『アバダ ケダブラ』呪文より悪いもの?」
「もうたくさん!」
それまで、黙って聞いていたモリーさんが叫んだ。カンカンに怒った顔だ。
「いますぐベッドに行きなさい。全員です」
モリーさんはハリー、フレッド、ジョージ、ロン、ハーマイオニーをぐるりと見渡した。シリウスを見ながら、おばさんは小刻みに震えていた。
「あなたはハリーに十分な情報を与えたわ。これ以上何か言うなら、いっそハリーを騎士団に引き入れたらいいでしょう」
「そうして!」
ハリーが飛びつくように言った。
「僕、入る。入りたい。戦いたい」
「だめだ」
答えたのは、モリーさんではなく、ルーピンだった。
「騎士団は、成人の魔法使いだけで組織されている」
ルーピンが続けた。
「学校を卒業した魔法使いたちだ」
フレッドとジョージが口を開きかけたので、ルーピンがつけ加えた。
「危険が伴う。君たちには考えも及ばないような危険が……シリウス、モリーの言うとおりだ。私たちはもう十分話した」
シリウスは中途半端に肩をすくめたが、言い争いはしなかった。モリーさんは威厳たっぷりに息子たちとハーマイオニーを手招きした。ナマエは初めに立ち上がった。続いて、一人、また一人とみんなが立ち上がった。ハリーも敗北を認め、みんなに従った。
