不死鳥の騎士団
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ウィーズリー家の子供たちがブラック家にやってきてからも、ナマエの状況は変わらなかった。依然として、騎士団の動向は未成年のナマエたちに知らされることはなかったし、父親からの便りも無かった。
フレッドとジョージは部屋に籠り、たまに出てきたかと思えば新しい悪戯道具で会議の内容を盗み聞きしようと躍起になっていた。
ビルは何度かグリモールドプレイスを訪れていた。エジプトから帰って、騎士団の仕事を手伝うために家で事務をしているらしいが、なんとフラー・デラクールもグリンゴッツで働き始めたそうだった。
「ビルのやつ、フラーのえいごーがうまくなるように、個人授業をしてやってるのさ」
ある日の朝食の席で、フレッドはそう言って茶化すように笑っていた。チャーリーも騎士団員だが、ルーマニアに残って外国の魔法使いを仲間に募っているらしい。
「じゃ、パーシーも魔法省で似たようなことをしてるんだ」
ナマエが確認程度にパーシーの名前を出すと、突然、パリンと大きな音がしてウィーズリー一家が凍りついた。
──音の主はアーサーさんだった。アーサーさんの手にあるゴブレットは握りつぶしたかのように粉々になり、料理がびしょびしょになっていた。
ナマエが何事かと問う前に、今度は片付けをしていたモリーさんが台拭きを顔に当てて泣き始めた。ジニーがモリーさんを慰め、ルーピン先生が落ち着いてアーサーさんのゴブレットを直した。ナマエは訳がわからないままオロオロした。ロンはナマエの服を引っ張って意味ありげな目配せをした。ウィーズリー家の子供達は早々とごちそうさま、と口にして、ナマエを追い立てるように食卓を出た。後になって、パーシーとアーサーさんが大喧嘩したのだと知った。
ロンが暗い顔で言った。
「ここに来る直前、パーシーが家に帰ってきて、昇進したって言ったんだ」
「昇進?」
ナマエは信じられずにおうむ返しをした。お世辞にも、クラウチ氏の元でパーシーが有能さを発揮したとは思えなかった。
「パーシーは大得意で家に帰ってきた──それで、パパに言ったんだ。ファッジの大臣室勤務を命ぜられたって。ホグワーツを卒業して一年目にしちゃ、すごくいい役職さ。大臣付下級補佐官。パーシーはパパが感心すると期待してたんだろうな」
「ところが親父はそうじゃなかった」
フレッドが暗い声を出した。ナマエは黙って首を傾げた。
「うん。ファッジはどうやら、魔法省をひっ掻き回して、誰かダンブルドアと接触している者がいないかって調べてたらしい」
ジョージが言った。
「ダンブルドアの名前は、近ごろじゃ魔法省の鼻摘みなんだ」
フレッドが言った。
「ダンブルドアが『例のあの人』が戻ったと言いふらして問題を起こしてるだけだって、魔法省じゃそう思ってる」
「親父は、ファッジが、ダンブルドアと繋がっている者は机を片づけて出ていけって、はっきり宣言したって言うんだ」
双子は交互に言葉を引き取ってナマエに教えた。
「問題は、ファッジが親父を疑ってるってこと。親父がダンブルドアと親しいって、ファッジは知ってる。それに、親父はマグル好きだから少し変人だって、ファッジはずっとそう思ってた」
「ファッジがパーシーを大臣室に置きたいのは、家族を──それとダンブルドアを──スパイするためでしかないって、親父はそう考えてる」
ナマエは展開が読めて、あぁと意味のない声を吐いた。ナマエは特段パーシーと仲が良いわけではなかったのに、昇進を誇らしげに伝えたのだろうパーシーの挫かれた思いを想像して胃がズシンと重くなった。ロンが続きを引き取った。
「パーシーは完全に頭に来たよ。それでこう言ったんだ──うーん、ずいぶんひどいことをいろいろ言ったな。魔法省に入って以来、父さんの評判がぱっとしないから、それと戦うのに苦労したとか、父さんは何にも野心がないとか、それだからいつも──ほら──僕たちにはあんまりお金がないとか、つまり──」
ナマエは、今度はアーサーさんの心中を思って吐きそうになった。
ジニーは怒った猫のような声を出した。ロンが声を落とした。
「そして、ますますひどいことになってさ。パーシーが言うんだ。父さんがダンブルドアと連んでいるのは愚かだとか。そして、もし父さんと母さんが魔法省を裏切るなら、もう自分はこの家の者じゃないってことを、みんなにはっきりわからせてやるって。そしてパーシーはその晩、荷物をまとめて出て行ったんだ。いま、ここ、ロンドンに住んでるよ」
「おふくろが会いに行ったけど、門前払いさ」
フレッドが忌々しそうに言った。ナマエは自分の失言に言葉が出なかった。
「ということだ、パーシーの名前は二度と出さないように」
ジョージがナマエの顔の前で人差し指を立てて言った。
「先に言ってくれよ……」
ナマエはロンと二人で一部屋を与えられていた。それでも、まだ部屋の広さには余裕があった。ナマエがドクシーの噛み傷だらけになりながら屋敷中を徹底的に除染して、人が住める程度の清潔さは保たれていた。しかし、それがかえって、あちこちに仰々しく飾り付けられた闇の呪物たちが不気味に目立っていた。
「あの気色悪いドアノブ、普通のに変えられない?掴むと噛み付いてきそうで嫌なんだ」
ロンがドアを指差した。蛇があしらわれた把手は黒々と光って、不意に動いた。
ナマエとロンは思わずびくりとしたが、ドアが開いてジニーが入ってきただけだった。
「ノックをお忘れでしょうか?」
ロンがいらいらして言った。
「ハリーから手紙が来たわよ」
ジニーは無視してそう言うと、ナマエとロンに手紙をよこした。肩には真っ白のフクロウが留まっていた。
ジニーは、自分の手元に手紙が残らないのがなんとなく不満そうに見えた。
ナマエは手紙にさっと目を通した。ハリーからは、魔法界に何か動向があれば教えて欲しいということが、恨めしげに書かれてあった。例のあの人の復活を目撃した張本人が、マグルの世界に隔離され、何の情報も得られないことへの不平が連ねられていた。
しかし、ナマエたちは騎士団に関することをハリーに知らせることを許されていなかった。理由は教えてもらえなかったが、ダンブルドアの考えだそうだった。それに、ナマエたちとて伝える価値のあるほどの情報は与えられてはいなかった。
ヘドウィグがパタパタとナマエとロンの間に降りたった。
「……ハーマイオニーから手紙は無いのかな」
ナマエはヘドウィグを眺めながら、できるだけさり気なく聞こえるように呟いた。ロンは思い出したようにああ、と漏らした。
「ハーマイオニーなら、手紙どころかもうじきここに来るよ。今日くらいじゃないかな?」
ロンがこともなげに言い、ジニーも頷いた。
「えっ!……そうなのか」
ロン達が知っていて自分が知らないことに、腹立たしいような悲しいような気分になった。しかし、それを的確に表現する言葉も思いつかなかった。そんなナマエを見て、ジニーがくすっと笑って部屋を出て行った。ナマエはなんとなく話を変えた。
「でも、じゃあ。ハリーだけ来られないなんて、なおさら意味がわからないな」
「ああ、本当だよ……あー。ほら、ハリーに返事を書かなくちゃ……」
ロンはちらっとヘドウィグを見てうんざりして言った。ヘドウィグは手ぶらでは決して主人の元へは帰らないのだ。ハリーがそう言い聞かせたに違いないと、ロンはぶつくさぼやいた。ナマエはヘドウィグにちゃんと返事を書いているのが見えるよう、袖机に羊皮紙を広げて腕を組んだ。
「うーん……俺のことなら書いてもいいかな」
ロンはフンと笑った。
「『やあ、ハリー。実は、夏休み初日に僕ん家が吹っ飛んだけど、元気だよ』って?それで、今どこにいるかって聞かれたら?」
ナマエは呻いた。
だが、ナマエの経験上、ハリーに隠し事をして結果良かったと思えたことは一度もない。ナマエが答えずにいると、ロンが言った。
「あのさあ、ハリーが物分かりよく引き下がるわけないだろう?諦めるしかない。夏休み明けに会うのはどうあがいてもご機嫌斜めのハリーだよ」
ロンの言うとおり、ハリーは都合よく鈍感でもなければ、気が長いわけでもなかった。
結局、当たり障りのない返事を薄く引き延ばして文章にして、ヘドウィグに託した。ヘドウィグは不服そうに鳴いた。
「これ以上書けないんだ、ごめんな」
ナマエはヘドウィグにつつかれながら言った。ロンも同じようにヘドウィグに短い手紙を持たせた。ヘドウィグのために窓を開けてやると、渋々と言った様子で飛び立った。ヘドウィグを見送るとすぐに窓を閉めた。
ほぼ同時に、再びノックなしにドアが開いた。
「ジニー!」
ロンは怒って声を上げたが、ドアのところにいたのはジニーではなかった。ナマエは目を見開いてからにっこり笑った。
「ハーマイオニー!」
ナマエは思わず、勢いよくドアのところに駆け寄って、ぎゅっとハーマイオニーを抱きしめた。なんとなく、抱きしめ返して貰えることを期待していたが、ハーマイオニーは遠慮がちにナマエの背中をとんとんと叩いただけだった。
「ナマエ、大丈夫なの?心配してたのよ」
「ごめん、うん。俺は大丈夫──」
ナマエがハーマイオニーの顔を覗き込むと、ハーマイオニーは困ったように視線を泳がせた。その視線を辿って振り返ると、ロンが奇妙な表情で二人を見つめていた。
ナマエは気まずくぱっと両手を離して、ハーマイオニーから離れた。
その時だった。廊下の先からキーキー叫ぶ声が聞こえた。ハーマイオニーの肩越しに目をやると、ボサボサの赤毛の男が、屋敷しもべのクリーチャーを振り解いて荷物を運んでいるのがナマエの目に留まった。ナマエは呆れたように頭をガシガシと掻いて、男に向かって叫んだ。
「マンダンガス!その鉄斧をどこへやるんだ」
ナマエに呼ばれた小男は一瞬びくりと肩を跳ねさせてから、声の主がナマエだと気がついて油断したような表情を見せた。
「なぁんだ、ナマエ……シリウスはかまやしないんだ。家主がほったらかしてるんだ、いいじゃないか」
「だめだ、シリウスがあんたにプレゼントしたわけじゃないだろ」
マンダンガスは名残惜しそうに斧から手を離し、クリーチャーに悪態をついて出ていった。
「なんであんなやつが騎士団で俺たちは入れてもらえないんだ?」
「奥様の家を汚す、卑しい混血のコソ泥め!」
ナマエとクリーチャーが口を揃えて言うと、何がおかしいのかロンが背後でプッと笑った。
ナマエはロンをきっと睨んでから、クリーチャーとハーマイオニーを遮るように扉を閉めた。
「はあ。あいつ、俺が調合した魔法薬もくすねるところだったんだぜ。信じられるか?」
「誰なの?」
「マンダンガス・フレッチャー。なんだか知らないけど、ダンブルドアに恩があるらしくて──」
「女子の部屋はジニーのとこだぜ」
ロンがわざとらしく、ナマエとハーマイオニーの会話を遮るように言った。
「……ええ、そうでしょうね」
ハーマイオニーは一瞬驚いてからムッとしたように言った。
「親切に教えていただいてありがとう」
ハーマイオニーがぴしゃりと言い、トランクを持ち上げて部屋を出ていった。
ナマエは、わけがわからずドアとロンを交互に見て、途方に暮れた。
フレッドとジョージは部屋に籠り、たまに出てきたかと思えば新しい悪戯道具で会議の内容を盗み聞きしようと躍起になっていた。
ビルは何度かグリモールドプレイスを訪れていた。エジプトから帰って、騎士団の仕事を手伝うために家で事務をしているらしいが、なんとフラー・デラクールもグリンゴッツで働き始めたそうだった。
「ビルのやつ、フラーのえいごーがうまくなるように、個人授業をしてやってるのさ」
ある日の朝食の席で、フレッドはそう言って茶化すように笑っていた。チャーリーも騎士団員だが、ルーマニアに残って外国の魔法使いを仲間に募っているらしい。
「じゃ、パーシーも魔法省で似たようなことをしてるんだ」
ナマエが確認程度にパーシーの名前を出すと、突然、パリンと大きな音がしてウィーズリー一家が凍りついた。
──音の主はアーサーさんだった。アーサーさんの手にあるゴブレットは握りつぶしたかのように粉々になり、料理がびしょびしょになっていた。
ナマエが何事かと問う前に、今度は片付けをしていたモリーさんが台拭きを顔に当てて泣き始めた。ジニーがモリーさんを慰め、ルーピン先生が落ち着いてアーサーさんのゴブレットを直した。ナマエは訳がわからないままオロオロした。ロンはナマエの服を引っ張って意味ありげな目配せをした。ウィーズリー家の子供達は早々とごちそうさま、と口にして、ナマエを追い立てるように食卓を出た。後になって、パーシーとアーサーさんが大喧嘩したのだと知った。
ロンが暗い顔で言った。
「ここに来る直前、パーシーが家に帰ってきて、昇進したって言ったんだ」
「昇進?」
ナマエは信じられずにおうむ返しをした。お世辞にも、クラウチ氏の元でパーシーが有能さを発揮したとは思えなかった。
「パーシーは大得意で家に帰ってきた──それで、パパに言ったんだ。ファッジの大臣室勤務を命ぜられたって。ホグワーツを卒業して一年目にしちゃ、すごくいい役職さ。大臣付下級補佐官。パーシーはパパが感心すると期待してたんだろうな」
「ところが親父はそうじゃなかった」
フレッドが暗い声を出した。ナマエは黙って首を傾げた。
「うん。ファッジはどうやら、魔法省をひっ掻き回して、誰かダンブルドアと接触している者がいないかって調べてたらしい」
ジョージが言った。
「ダンブルドアの名前は、近ごろじゃ魔法省の鼻摘みなんだ」
フレッドが言った。
「ダンブルドアが『例のあの人』が戻ったと言いふらして問題を起こしてるだけだって、魔法省じゃそう思ってる」
「親父は、ファッジが、ダンブルドアと繋がっている者は机を片づけて出ていけって、はっきり宣言したって言うんだ」
双子は交互に言葉を引き取ってナマエに教えた。
「問題は、ファッジが親父を疑ってるってこと。親父がダンブルドアと親しいって、ファッジは知ってる。それに、親父はマグル好きだから少し変人だって、ファッジはずっとそう思ってた」
「ファッジがパーシーを大臣室に置きたいのは、家族を──それとダンブルドアを──スパイするためでしかないって、親父はそう考えてる」
ナマエは展開が読めて、あぁと意味のない声を吐いた。ナマエは特段パーシーと仲が良いわけではなかったのに、昇進を誇らしげに伝えたのだろうパーシーの挫かれた思いを想像して胃がズシンと重くなった。ロンが続きを引き取った。
「パーシーは完全に頭に来たよ。それでこう言ったんだ──うーん、ずいぶんひどいことをいろいろ言ったな。魔法省に入って以来、父さんの評判がぱっとしないから、それと戦うのに苦労したとか、父さんは何にも野心がないとか、それだからいつも──ほら──僕たちにはあんまりお金がないとか、つまり──」
ナマエは、今度はアーサーさんの心中を思って吐きそうになった。
ジニーは怒った猫のような声を出した。ロンが声を落とした。
「そして、ますますひどいことになってさ。パーシーが言うんだ。父さんがダンブルドアと連んでいるのは愚かだとか。そして、もし父さんと母さんが魔法省を裏切るなら、もう自分はこの家の者じゃないってことを、みんなにはっきりわからせてやるって。そしてパーシーはその晩、荷物をまとめて出て行ったんだ。いま、ここ、ロンドンに住んでるよ」
「おふくろが会いに行ったけど、門前払いさ」
フレッドが忌々しそうに言った。ナマエは自分の失言に言葉が出なかった。
「ということだ、パーシーの名前は二度と出さないように」
ジョージがナマエの顔の前で人差し指を立てて言った。
「先に言ってくれよ……」
ナマエはロンと二人で一部屋を与えられていた。それでも、まだ部屋の広さには余裕があった。ナマエがドクシーの噛み傷だらけになりながら屋敷中を徹底的に除染して、人が住める程度の清潔さは保たれていた。しかし、それがかえって、あちこちに仰々しく飾り付けられた闇の呪物たちが不気味に目立っていた。
「あの気色悪いドアノブ、普通のに変えられない?掴むと噛み付いてきそうで嫌なんだ」
ロンがドアを指差した。蛇があしらわれた把手は黒々と光って、不意に動いた。
ナマエとロンは思わずびくりとしたが、ドアが開いてジニーが入ってきただけだった。
「ノックをお忘れでしょうか?」
ロンがいらいらして言った。
「ハリーから手紙が来たわよ」
ジニーは無視してそう言うと、ナマエとロンに手紙をよこした。肩には真っ白のフクロウが留まっていた。
ジニーは、自分の手元に手紙が残らないのがなんとなく不満そうに見えた。
ナマエは手紙にさっと目を通した。ハリーからは、魔法界に何か動向があれば教えて欲しいということが、恨めしげに書かれてあった。例のあの人の復活を目撃した張本人が、マグルの世界に隔離され、何の情報も得られないことへの不平が連ねられていた。
しかし、ナマエたちは騎士団に関することをハリーに知らせることを許されていなかった。理由は教えてもらえなかったが、ダンブルドアの考えだそうだった。それに、ナマエたちとて伝える価値のあるほどの情報は与えられてはいなかった。
ヘドウィグがパタパタとナマエとロンの間に降りたった。
「……ハーマイオニーから手紙は無いのかな」
ナマエはヘドウィグを眺めながら、できるだけさり気なく聞こえるように呟いた。ロンは思い出したようにああ、と漏らした。
「ハーマイオニーなら、手紙どころかもうじきここに来るよ。今日くらいじゃないかな?」
ロンがこともなげに言い、ジニーも頷いた。
「えっ!……そうなのか」
ロン達が知っていて自分が知らないことに、腹立たしいような悲しいような気分になった。しかし、それを的確に表現する言葉も思いつかなかった。そんなナマエを見て、ジニーがくすっと笑って部屋を出て行った。ナマエはなんとなく話を変えた。
「でも、じゃあ。ハリーだけ来られないなんて、なおさら意味がわからないな」
「ああ、本当だよ……あー。ほら、ハリーに返事を書かなくちゃ……」
ロンはちらっとヘドウィグを見てうんざりして言った。ヘドウィグは手ぶらでは決して主人の元へは帰らないのだ。ハリーがそう言い聞かせたに違いないと、ロンはぶつくさぼやいた。ナマエはヘドウィグにちゃんと返事を書いているのが見えるよう、袖机に羊皮紙を広げて腕を組んだ。
「うーん……俺のことなら書いてもいいかな」
ロンはフンと笑った。
「『やあ、ハリー。実は、夏休み初日に僕ん家が吹っ飛んだけど、元気だよ』って?それで、今どこにいるかって聞かれたら?」
ナマエは呻いた。
だが、ナマエの経験上、ハリーに隠し事をして結果良かったと思えたことは一度もない。ナマエが答えずにいると、ロンが言った。
「あのさあ、ハリーが物分かりよく引き下がるわけないだろう?諦めるしかない。夏休み明けに会うのはどうあがいてもご機嫌斜めのハリーだよ」
ロンの言うとおり、ハリーは都合よく鈍感でもなければ、気が長いわけでもなかった。
結局、当たり障りのない返事を薄く引き延ばして文章にして、ヘドウィグに託した。ヘドウィグは不服そうに鳴いた。
「これ以上書けないんだ、ごめんな」
ナマエはヘドウィグにつつかれながら言った。ロンも同じようにヘドウィグに短い手紙を持たせた。ヘドウィグのために窓を開けてやると、渋々と言った様子で飛び立った。ヘドウィグを見送るとすぐに窓を閉めた。
ほぼ同時に、再びノックなしにドアが開いた。
「ジニー!」
ロンは怒って声を上げたが、ドアのところにいたのはジニーではなかった。ナマエは目を見開いてからにっこり笑った。
「ハーマイオニー!」
ナマエは思わず、勢いよくドアのところに駆け寄って、ぎゅっとハーマイオニーを抱きしめた。なんとなく、抱きしめ返して貰えることを期待していたが、ハーマイオニーは遠慮がちにナマエの背中をとんとんと叩いただけだった。
「ナマエ、大丈夫なの?心配してたのよ」
「ごめん、うん。俺は大丈夫──」
ナマエがハーマイオニーの顔を覗き込むと、ハーマイオニーは困ったように視線を泳がせた。その視線を辿って振り返ると、ロンが奇妙な表情で二人を見つめていた。
ナマエは気まずくぱっと両手を離して、ハーマイオニーから離れた。
その時だった。廊下の先からキーキー叫ぶ声が聞こえた。ハーマイオニーの肩越しに目をやると、ボサボサの赤毛の男が、屋敷しもべのクリーチャーを振り解いて荷物を運んでいるのがナマエの目に留まった。ナマエは呆れたように頭をガシガシと掻いて、男に向かって叫んだ。
「マンダンガス!その鉄斧をどこへやるんだ」
ナマエに呼ばれた小男は一瞬びくりと肩を跳ねさせてから、声の主がナマエだと気がついて油断したような表情を見せた。
「なぁんだ、ナマエ……シリウスはかまやしないんだ。家主がほったらかしてるんだ、いいじゃないか」
「だめだ、シリウスがあんたにプレゼントしたわけじゃないだろ」
マンダンガスは名残惜しそうに斧から手を離し、クリーチャーに悪態をついて出ていった。
「なんであんなやつが騎士団で俺たちは入れてもらえないんだ?」
「奥様の家を汚す、卑しい混血のコソ泥め!」
ナマエとクリーチャーが口を揃えて言うと、何がおかしいのかロンが背後でプッと笑った。
ナマエはロンをきっと睨んでから、クリーチャーとハーマイオニーを遮るように扉を閉めた。
「はあ。あいつ、俺が調合した魔法薬もくすねるところだったんだぜ。信じられるか?」
「誰なの?」
「マンダンガス・フレッチャー。なんだか知らないけど、ダンブルドアに恩があるらしくて──」
「女子の部屋はジニーのとこだぜ」
ロンがわざとらしく、ナマエとハーマイオニーの会話を遮るように言った。
「……ええ、そうでしょうね」
ハーマイオニーは一瞬驚いてからムッとしたように言った。
「親切に教えていただいてありがとう」
ハーマイオニーがぴしゃりと言い、トランクを持ち上げて部屋を出ていった。
ナマエは、わけがわからずドアとロンを交互に見て、途方に暮れた。
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