第五学年 不死鳥の騎士団
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「あれ、ナマエ。今日はずいぶん可愛らしいものを被ってるんだね」
レイブンクローの談話室に戻った途端、テリーがにやにやしながら言った。
ナマエは入口で足を止めた。椅子や机に散っていた数人の生徒が、いっせいにナマエの方を見た。
ナマエの頭は真っ白な毛糸の帽子にすっぽり収まっていた。
「……何だよ」
「いや、いいと思うよ」
テリーはますますにやにやした。
「黒髪に映えるね」
その一言に、暖炉のそばで本を読んでいたパドマ・パチルが顔を上げた。
「あら、本当。似合ってるわ」
「そう?」
ナマエは照れたのを隠すように帽子の縁を引き下げた。耳のあたりが少しちくちくする。てっぺんの小さな房が、動くたびに頼りなく揺れた。
ハーマイオニーが昼間、渡してきた帽子だった。
「グレンジャー作?」
ナマエがソファに近づくと、マイケルが言った。
「そうだけど」
「なるほどね」
ナマエは眉を上げた。
「何がなるほどなんだよ」
「いや、愛だなと思って」
「からかうな」
ナマエはソファに腰を下ろした。帽子を取ろうか迷ったが、取ったら取ったで、今より面倒なことになりそうだった。
パドマが笑いをこらえるように本へ目を落とした。
「いいじゃない。あなたのために編んでもらったんでしょう?」
「……まあ」
ナマエは不機嫌そうに答えたが、声は思ったほど強く出なかった。
宿題に取り組んでいたマイケルが、羽根ペンを置いて椅子の背にもたれた。
「でも、その帽子ってさ」
マイケルはまじまじと帽子を見た。
「何だよ」
「ジニーから聞いたんだけど──グレンジャー、グリフィンドールの談話室に帽子をあちこちに隠してるらしいよ。屋敷しもべ妖精が拾ったら自由になれるようにって」
ナマエの手が、帽子の縁で止まった。
「……は?」
「知らなかった?」
「知らない」
談話室が、一瞬だけ妙に静かになった。それから、テリーがぽつりと言った。
「──つまり君は今、恋人からの贈り物であると同時に、屋敷しもべ妖精解放運動の象徴を被っているわけだ」
パドマが本で隠れながらくすくす笑った。テリーもにやにやした。
「かなり複雑な帽子だね」
「余計なお世話だぞ」
ナマエが言うと、マイケルもとうとう吹き出した。
ハーマイオニーが自分のために編んだものだ。それはたぶん本当だ。
ナマエにはきれいなものが似合うと、彼女が言ってくれた。毛糸の色も、形も、彼女なりに考えてくれたのだろう。
だが、知らないうちに運動の一端を頭に乗せていたと思うと、どうにも落ち着かない。
ナマエは帽子を取ろうとして、また手を止めた。
自分が欲しいと言ったのだ。ハーマイオニーはそれを覚えていて、作ってくれた。なら、無碍に扱いたくはない。
たとえ知らないうちに、何かの運動の一部を頭に乗せていたとしても。
「取らないのね」
パドマが聞いた。ナマエは本を開きながら、低く答えた。
「……俺が欲しいって言ったんだ」
パドマが目を細めた。
「そういうところ、案外まっすぐね」
「うるさい……」
「褒めてるのよ」
「なら、もっと分かりやすく褒めてくれる?」
マイケルがまたにやりとした。
「まあ、まあ。よく似合ってるよ」
ナマエは顔をしかめたまま、本を開いた。
帽子が視界の端にかかっていた。少しちくちくして、少し暑い。ナマエは本に目を落としたまま、低く言った。
「……誰かハーマイオニーに余計なこと言ったら、呪うからな」
「それは恋人として?それとも解放運動の同志として?」
「テリー──」
「わかった、黙るよ」
暖炉の火がぱちりと鳴った。
ナマエは帽子を不必要にまた被り直した。
レイブンクローの談話室に戻った途端、テリーがにやにやしながら言った。
ナマエは入口で足を止めた。椅子や机に散っていた数人の生徒が、いっせいにナマエの方を見た。
ナマエの頭は真っ白な毛糸の帽子にすっぽり収まっていた。
「……何だよ」
「いや、いいと思うよ」
テリーはますますにやにやした。
「黒髪に映えるね」
その一言に、暖炉のそばで本を読んでいたパドマ・パチルが顔を上げた。
「あら、本当。似合ってるわ」
「そう?」
ナマエは照れたのを隠すように帽子の縁を引き下げた。耳のあたりが少しちくちくする。てっぺんの小さな房が、動くたびに頼りなく揺れた。
ハーマイオニーが昼間、渡してきた帽子だった。
「グレンジャー作?」
ナマエがソファに近づくと、マイケルが言った。
「そうだけど」
「なるほどね」
ナマエは眉を上げた。
「何がなるほどなんだよ」
「いや、愛だなと思って」
「からかうな」
ナマエはソファに腰を下ろした。帽子を取ろうか迷ったが、取ったら取ったで、今より面倒なことになりそうだった。
パドマが笑いをこらえるように本へ目を落とした。
「いいじゃない。あなたのために編んでもらったんでしょう?」
「……まあ」
ナマエは不機嫌そうに答えたが、声は思ったほど強く出なかった。
宿題に取り組んでいたマイケルが、羽根ペンを置いて椅子の背にもたれた。
「でも、その帽子ってさ」
マイケルはまじまじと帽子を見た。
「何だよ」
「ジニーから聞いたんだけど──グレンジャー、グリフィンドールの談話室に帽子をあちこちに隠してるらしいよ。屋敷しもべ妖精が拾ったら自由になれるようにって」
ナマエの手が、帽子の縁で止まった。
「……は?」
「知らなかった?」
「知らない」
談話室が、一瞬だけ妙に静かになった。それから、テリーがぽつりと言った。
「──つまり君は今、恋人からの贈り物であると同時に、屋敷しもべ妖精解放運動の象徴を被っているわけだ」
パドマが本で隠れながらくすくす笑った。テリーもにやにやした。
「かなり複雑な帽子だね」
「余計なお世話だぞ」
ナマエが言うと、マイケルもとうとう吹き出した。
ハーマイオニーが自分のために編んだものだ。それはたぶん本当だ。
ナマエにはきれいなものが似合うと、彼女が言ってくれた。毛糸の色も、形も、彼女なりに考えてくれたのだろう。
だが、知らないうちに運動の一端を頭に乗せていたと思うと、どうにも落ち着かない。
ナマエは帽子を取ろうとして、また手を止めた。
自分が欲しいと言ったのだ。ハーマイオニーはそれを覚えていて、作ってくれた。なら、無碍に扱いたくはない。
たとえ知らないうちに、何かの運動の一部を頭に乗せていたとしても。
「取らないのね」
パドマが聞いた。ナマエは本を開きながら、低く答えた。
「……俺が欲しいって言ったんだ」
パドマが目を細めた。
「そういうところ、案外まっすぐね」
「うるさい……」
「褒めてるのよ」
「なら、もっと分かりやすく褒めてくれる?」
マイケルがまたにやりとした。
「まあ、まあ。よく似合ってるよ」
ナマエは顔をしかめたまま、本を開いた。
帽子が視界の端にかかっていた。少しちくちくして、少し暑い。ナマエは本に目を落としたまま、低く言った。
「……誰かハーマイオニーに余計なこと言ったら、呪うからな」
「それは恋人として?それとも解放運動の同志として?」
「テリー──」
「わかった、黙るよ」
暖炉の火がぱちりと鳴った。
ナマエは帽子を不必要にまた被り直した。
